道路関係予算約500億円のうち
約半分を保全事業に投入
――橋梁の長寿命化修繕計画の進捗状況は
宮下 21年度に長寿命化修繕計画を策定して、22~23年度を準備期間、24~33年度までの10年間を本計画期間としています。そのうち、第三者被害の恐れのある跨線橋や跨道橋や100m以上の長大橋を重要橋梁として338橋を優先的に取り組んでいます。28年度までに重要橋梁147橋の計画をしています29年度からは34年度までの5カ年で116橋の対策を行う予定です。
【参照】http://www.pref.hokkaido.lg.jp/kn/ddr/keikakuitiranhyou-H29-03.pdf
損傷状況としては、経年変化のみならず凍害などの影響による漏水をともなう床版のひび割れや躯体の損傷なども見られます。補修内容は橋面防水工を含めた床版の打替えやコンクリート表面含浸材を用いた躯体の補修などを実施しています。
札幌市を除く道内市町村では、22年度から26年度にかけて長寿命化修繕計画を策定して、177市町村が28年度までに計画に基づいて修繕事業に着手しています。
――経年劣化や疲労になどによる上部工補修・補強の実績を教えてください
宮下 26年度は301橋で発注額が約86億円、27年度は205橋(約86億円)、28年度が145橋(約73億円)となっています。
――かなりの金額を投入していますね
宮下 橋梁の数が5,000橋と多いので、このペースで実施しないと終わりません。今年度は106橋で約63億円を予定しています。このほかに点検費用が年間約20億円かかっています。
――道路関係予算はピーク時と比較してどのくらいになっていますか
宮下 半分くらいです。10年くらいがピークで約1,000億円、現在の予算が約500億円です。保全・補修費はピーク時には約100億円でしたが、年々増えてきて現在は総予算500億円のうち約半分の250億円となっています。
――保全費用は一定量確保しなければならず、減少することはありませんが、現在も増加していますか
宮下 ほぼ前年並みが続いています。橋梁点検を12、13年ごろから開始していますので、その時期から増えてきましたが、のり面点検などを開始してからは前年並みの予算で行っています。
――コンクリート桁・床版部における損傷状況は
宮下 主な損傷は、経年変化によるクラックの発生とそこへ浸水することによる鉄筋の腐食で生じるはく離となります。
――床版防水の施工状況は
宮下 床版防水は古い橋梁には施工されていない場合が多く、予防保全として橋梁補修の際に床版防水を実施しています。今後の方針ですが、橋面からの雨水が床版劣化に起因するため、橋面防水を標準施工としていきます。防水工法は、補修で施工するなど不陸が大きい場合は塗膜防水を採用するなど、現場、施工条件にあわせて工法を選定しています。
――支承やジョイントの取替え、ノージョント化についての状況は
宮下 28年度は支承およびジョイントの取替えは、合計で約20橋となります。今年度は約19橋を予定しています。ノージョイント化は埋設型の施工は行っていますが、実績の把握はできていません。
橋梁塗替えでは事前に
PCB含有量を確認
――塩害、アルカリ骨材反応などによる劣化はありますか
宮下 日本海側の海沿いの橋梁では塩害による劣化が確認されています。具体的には、橋梁全体的な鋼材の腐食、コンクリートのひび割れ、部分的なひび割れです。さらに鉄筋腐食によるひび割れ、断面欠損が地覆・下部工などの一部に出ています。
塩害対策の事例としては、主要道道別海厚岸線の海から程近い箇所に供用している「火散布(ひちりっぷ)橋」の下部工に断面修復、表面含浸工などの対策工を実施しています。
火散布橋補修工事(補修前/補修後)
――橋梁の塗替え実績と予定は
宮下 28年度は約80橋で約85,000㎡を実施しました。29年度も同程度を見込んでいます。
――PCBや鉛などの有害物を含有する既存塗膜の処理について、どのような方策をとっているのか教えてください
宮下 塗替えを行う橋梁については、事前に塗膜の溶出調査を実施してPCB含有量を確認しています。その調査により、50PPM(製造規程値)を超える値が出た塗膜については、処理施設で処分を行っていますが、50PPM未満の対応については、国や他県での対応状況などを踏まえて検討を行っていきます。
――鉛対策についてはいかがでしょうか
宮下 事前の調査は当然行っています。実際の工法は、国に準じて行っています。具体的には湿式のインバイロワン工法を採用した実績があります。
厚岸大橋でのインバイロワン工法の事例
道路がなければ
社会も農業も観光も成り立たない
――冬期における除雪能力の確保は、北海道の産業にとって重要だと考えますが、その維持をどのように考えていますか
宮下 オペレータが高齢化しており、後継者がいない状態ですので、除雪作業能力の確保に非常に苦慮しています。道庁だけでなく、国や市町村でも同じ状態です。限られた予算のなかで、いかに効率的に除雪作業を行うかを考え、計画的に実施しています。
除雪作業従事者の確保の取り組みとして、除雪機械技術講習会を開催したり、功労者表彰の実施などを行っています。また雇用安定化のために、除雪業務と舗装・路面清掃などの道路維持業務の通年での一体契約を旭川・稚内・帯広建設管理部管内で試行中です。業者さんにとっても都度契約よりはメリットがあると思います。
――今後の道路事業に関して道庁さんとしてやるべきことがありましたら教えてください
宮下 先にも述べましたが、北海道は広域分散型社会であり、“食と観光”の推進に取り組む中で、道路は重要な社会基盤になります。そのため、高速道路から道道、市町村道までしっかり機能を発揮できるような総合的な道路網の形成を考えていきたいと思っています。
保全に予算が割かれている状況があり、地域振興などの道路がなかなかつくれません。北海道は人口が少ないからなぜ道路がそんなにいるのか、とよく耳にしますが、道路がなければそこに人が住みつきません。人がいなければ、社会も農業も観光も成り立たない。だから、道路が必要なのです。
――ありがとうございました
【関連記事】
札幌市 渡辺 和俊維持担当部長インタビュー
NEXCO北海道支社 加納正志道路事業部長インタビュー
水の供給によるコンクリート構造物表面被覆材の剥がれ防止に向けて
台風10号 北海道水害現場を歩く