――一般道道名寄遠別線は
宮下 一般道道名寄遠別線は、名寄市から遠別町へ至る路線です。通行不能区間を解消し新たな交通ネットワークの構築、高次医療機関へのアクセス向上、物流効率化の支援、災害による孤立化の解消等を目的とした事業です。事業区間は北海道天塩郡遠別町字正修の延長7.8kmです。平成22年度から着手しています。区間内には14の橋梁、2つのトンネルがあり、遠別町側の橋梁5箇所、トンネル1箇所、名寄町側の橋梁1箇所は本体工を完了しています。今年度は名寄町側の1号橋の上部工架設、2号橋の下部工施工、上部工製作、その他地すべり観測などを推進する予定です。
名寄遠別線概要図(平成29年4月末現在)
――一般道道泊共和線は
宮下 北電泊発電所周辺地区の地震・津波災害などの自然災害と原子力災害の複合災害による道路の寸断を考慮して、多数の住民が迅速かつ確実に避難が可能であり、救助・救援活動や救援物資の輸送が早期に確保可能となるよう、避難道路の複線化を図るため、新たな道路を整備し、地域住民の安全・安心の確保を図るべく進めている事業です。
事業区間は北海道泊村大字茅沼村~共和町国富間の延長16.02kmです。平成25年度から事業に着手しています。主な構造物としては(仮)国富2号トンネル(1,544m)があります。同トンネルは上半先進ショートベンチカット工法を用いて掘進しています。
28年度までに用地補償、橋梁工及びトンネル工を実施しており、29年度は、用地補償、橋梁工及びトンネル工を実施する予定です。
泊共和線概要図(平成29年4月末現在)
――都市計画道路永山東光線は
宮下 同路線は旭川市内中心部と当麻町を経由し愛別ICにアクセスする旭川都市圏の放射幹線街路です。周辺には小学校や高校が立地しており、本路線は永山南小学校の通学路に指定されています。しかし、JR石北本線踏切があることに加え、幅員狭小な片側歩道により車道を横断する回数が多くなっているほか、道北の有力企業である日本製紙旭川工場や、集約型大規模商業施設への物流ルートとなっていることから自動車交通量も多く、児童の安全性・利便性が確保されていない状況となっており、対策が急務となっています。
当区間は、旭川市通学路交通安全プログラムにおいて平成28年3月に要対策箇所に位置付けられ公表されており、通学路の交通安全対策として単独立体交差化(オーバー)及び自歩道を整備することで、安全・安心な自転車・歩行者空間の確保を図るものです。
事業区間は旭川市永山10条1丁目~同4丁目間1.1kmが対象です。平成27年に事業着手し、33年度の供用を目指し工事を進めています。跨線橋は32.09mのPCプレテン中空床版橋を予定しています。
永山東光線概要図
――新設構造物の施工において北海道独自の新しい技術の導入や部材使用はありますか
宮下 道庁独自といえるかわかりませんが、吹雪対策で高性能防雪柵(誘導板付忍び返し柵)を採用して道路脇に設置をしています。通常の防雪柵では乱気流が発生して、柵の風下側にも雪が溜まりますが、高性能防雪柵では斜風に対応して、風の力で雪を上部に大きく飛ばすことによって分散させることができます。
――凍害や凍結融解でのコンクリート保護対策で行っていることがありますでしょうか。現在、北海道大学総長になっている名和豊春先生が以前、珪酸塩系の含浸材を開発して、コンクリートの緻密化のためにさまざまなところに塗っていました。また、北海道開発局さんでは頂部は珪酸塩系含浸材を塗って、垂直部分や上部にはシラン系を塗るという仕様が決まっています。道庁さんではいかがでしょうか
宮下 新設での含浸材の使用はありませんが、補修の際には使用しています。開発局さんの基準も参考にしながら進めています。
国が耐震補強対象とした548橋 すべて耐震性能3まで実施済み
――保全について、まず管内の橋梁とトンネルの内訳から示してください
宮下 北海道が管理している橋梁は、5,270橋で、鋼橋2,058、PC2,037、RC1,135、混合橋26、木橋などその他14となっています。橋長15m未満が2,109橋、100m以上が433橋で、建設後50年以上経過したものが2,206橋(1970年までの合計)です。
トンネルは120箇所で、NATM78、在来28、開削1、その他13です。1,000m以上が18箇所で、建設後50年以上経過したものが20箇所(1970年までの合計)となっています。
市町村では道庁が把握している橋梁が約19,000、トンネルが43となります。
――点検を進めてみての劣化状況は
宮下 26年度に83橋、27年度1,324橋、28年度約1,600橋の点検を行いました。全体の状況としては、直接的耐荷力に大きな影響のある変状は少ない、伸縮装置の止水機能低下による漏水や凍結作用による局部的な橋台の損傷(凍害)や、支承の腐食進行が見られるが、早急に補修が必要な変状は少ない、塩害地域にある路線の橋梁は橋梁全体的に鋼材の腐食が確認され、コンクリートのひび割れなどの変状が多くある傾向、となっています(詳細は別表)。
やはり、凍害、塩害の事象は多く、凍害で端部が欠けてボロボロになっている事例が多いです。鉄筋が露出している箇所に対しては補修をしています。とくに日本海側は陸地に向けて強い風が吹くこともあり、塩害が多く、20kmの範囲について対策が必要となっています。
岩見沢三笠線 奔幌内橋補修状況(補修前/補修後)
夕張新得線 赤岩トンネル補修状況(補修前/補修後)
――橋梁種別および部位別の健全度状況については
宮下 平成27年度の調査結果では、健全度Ⅰが824、Ⅱが339橋、Ⅲが161橋という結果となっています。健全度Ⅲは、橋種別では鋼が最も多く85橋、次いでPC橋(46橋)、RC橋(30橋)という順になっています。部位別では下部工、支承、横桁の順に多く損傷が見られています。(詳細は下表)
全道健全性診断状況
部位別健全性診断状況
――道内の橋梁を取材すると、床版厚が薄いところがあります。凍害で断面が危なくなると耐荷力で大きな変状が出てくるものもありますが、その対策はしていますでしょうか
宮下 ケースバイケースで対策を考えて、鋼板を貼るなどの対応をしています。橋梁全体として法律で定められている5年に一度の近接目視を行っていますので、その都度、対策が必要な箇所は補修を行っています。
――耐震補強の進捗状況は
宮下 国が耐震補強の対象としている橋梁はすべて完了しており、跨線橋・跨道橋160橋、緊急輸送道路388橋となります。これらはすべて耐震性能3まで実施済みです。北海道独自の災害時の孤立集落対策として284橋を対象に取り組みを進め、27年度末で145橋が整備済みとなっています。残りの139橋を重点的に行う予定でしたが、熊本地震があり、耐震性能2(地震による損傷が限定的で、機能の回復が速やかに行い得る性能)が出てきたので、そちらも優先しなければならず、両方同時にやる方向で考えています。それにより、孤立集落対策は当初より、若干遅れ気味になるかもしれません。
――過去に補強を実施した橋を耐震性能2にグレードアップしようと考えているのですか
宮下 まずは緊急輸送道路限定ですが、耐震性能2が必要なものがどれだけあるかを調査しています。28年度にボーリング調査を実施し、それを解析して補強をするか否かを29年度に検討する予定です。
――落橋防止装置については
宮下 落橋防止装置の設置状況は、28年4月時点で615橋です。28年度は21橋で設置しました。29年度は13橋で設置する予定です。
――落橋防止装置の鋼製治具の不正・不良問題についての対策状況は
宮下 対象橋梁1橋について再調査中であり対策は結果を踏まえ検討します。
――熊本地震を受けてのロッキング橋脚対策はいかがでしょうか
宮下 ロッキング橋脚対策については、国土交通省さんから3年程度で耐震補強実施すると方針が出ています。道内には跨道橋と跨線橋の2橋ありますので、今年度から調査をして補強を行っていくという考えです。
緊急輸送道路に関しては、落橋・倒壊の防止対策(3プロレベル)に加えて、路面に大きな段差が生じないように支承の補強や交換などを行う対策(フルスペック化)を加速していく方針が国土交通省さんから出されており、北海道としてもその方針にあわせて対策を実施する予定です。現段階では、フルスペック化が必要かどうかの現地調査を行っており、今後、対象橋梁の選定を行っていきます。