道路構造物ジャーナルNET

道路・橋梁の被害額は約150億円

北海道 台風10号からの復興

北海道 建設部土木局
道路課長

宮下 忠昭

公開日:2017.06.01

遅れている道路網の整備
農業と観光の面からも重要に

 ――農地もその場所が何であったのかわからないほど被害を受けています。北海道の特性のひとつとして、農業と観光があると思いますが、そのふたつから見た既存道路構造物のあり方をどのように考えているでしょうか
 宮下 北海道は最大の食料供給地です。カロリーベースでの自給率は全国では約40%ですが、道内だけでは約200%あります。道産食品の輸出は27年度で約800億円ですが、30年度には1,000億にする目標を掲げて、さまざまな取組みをしています。また、インバウンドについても重点的に取り組んでいます。外国人観光客は27年度約200万人で、32年度までに500万人にする目標にむけて、こちらもさまざまな取り組みを行っています。
 “食と観光”をより伸ばしていくためには道路網の整備が必要です。高規格幹線道路の開通率は全国の約84%に対して、北海道は約6割と立ち遅れています。また、道路施設の老朽化の課題があり、27年6月にインフラ長寿命化計画を策定しました。橋梁についてはそれ以前の21年度に策定をして、随時計画の見直しを行っており、トンネルは30年度までに計画を策定する予定です。のり面の点検については18年度の道路防災総点検で行い、広島をはじめ全国でのり面の事故があったため、28年度から点検対象を広げています。
 ――道内の地勢的特長と道路網の現状は
 宮下 北海道は国土の5分の1を占める広大な面積に、179の市町村が点在する広域分散型社会です。人の移動、物資の輸送の大半を自動車交通に依存していることから、道路は非常に重要な社会基盤になっています。また、冬期における安全な道路交通の確保が必要不可欠です。
 道路網の現状としては、舗装率は、27年4月1日時点で国道が100%、道道94%、市町村道59%となっています。高規格幹線道路に関しては、先ほどの数字のとおり全国と比較するとまだ遅れています。各地方からは高規格幹線道路をはじめとする道路整備要望が多く出されており、道庁としても地元市町村や関係団体と一緒になって国に要望を出しているほか、高規格幹線道路へのアクセス強化に資する道路整備等を推進しているところです。


新設橋梁/上幌内早来停車場線 幌内神楽大橋(L=367m)

 ――管内での主な事業を教えてください
 宮下 札幌と千歳空港を結ぶ国道36号が慢性的に渋滞することから、そのバイパス道路として整備したのが仁別大曲線で、3月30日に開通しました。事業延長は2.74kmで、国道36号との接合部はランプ式となっています。ランプ部の橋梁延長合計は158.1mとなります。
 また、八雲今金線の今金橋は、橋梁長寿命化修繕計画に基づき、橋梁架替を行っています。事業延長は360mで、橋梁延長は273.3m、幅員10mで、5径間連続非合成鋼箱桁橋となります。特徴としては、河川内の橋脚がニューマチックケーソン工法となっています。現在は下部工施工中で、上部工の発注はこれからとなります。
 ――江別市の南大通は
 宮下 江別市の中心市街地と千歳川を挟んだ西側地区を連絡する新設道路となります。地域間交流の活性化や国道12号の渋滞対策などのために都市計画道路と位置づけて事業を行っています。事業延長は1,170mで、新設橋梁は橋長157.5m、幅員25mの2径間連続非合成鋼箱桁となります。LCC縮減策として、標準で塗装塗替えが必要ない耐候性鋼材を使用しています。耐候性鋼材は、海岸線で使用できない箇所などを除き、条件によって可能な箇所はすべて使用していて、道庁管理橋全体では、現在約100橋となっています。耐候性鋼材は基本的に裸仕様です。
 ――川西芽室音更線は
 宮下 同線では中島橋の建設を進めています。橋長494.4m、全幅11mの5径間連続PC箱桁橋です。基礎工は場所打ち杭およびケーソン基礎、下部工は箱式橋台・壁式橋脚を採用しています。平成28年度までに橋梁下部工、用地補償を実施しており、29年度は引き続き橋梁下部工を実施する予定です。


川西芽室音更線概要図(平成29年4月末現在)

 ――主要地方道増毛稲田線は
 宮下 主要道道増毛稲田線は、増毛町の国道231号と深川市音江町稲田の国道12号を結ぶ幹線道路であり、流通経路・生活道路として重要な路線です。
 特に石狩川に架かる妹背牛(もせうし)橋は架設から55年が経過し老朽化しており、河床の低下により橋梁の安定性が課題となっています。交通量の増加により、部材の損傷が進行しているほか、幅員狭小のため、大型車のすれ違いが困難で、自転車等の通行が危険な状況です。これらの課題を解消し、安全・安心な通行を確保するため、北海道橋梁長寿命化修繕計画に基づき架替を実施するものです。
 事業区間は、北海道雨竜郡妹背牛町妹背牛~深川市音江町稲田間の1.84kmで、平成26年度から着工しています。


増毛稲田線概要図(平成29年4月末現在)

 ――架替橋の形式は
 宮下 橋長580mの7径間連続PC箱桁橋です。基礎工は場所打ち杭およびケーソン基礎、下部工は箱式橋台・壁式橋脚を採用しています28年度までに用地補償、道路土工を実施しており、H29年度は、橋梁下部工、道路土工を実施予定です。
 ――主要地方道洞爺公園洞爺線は
 宮下 主要地方道洞爺公園洞爺線は、支笏洞爺国立公園内に位置し、洞爺湖を周回し、洞爺湖町と壮瞥町を結ぶ道路です。平成12年の有珠山噴火では、国道37号などの長期通行止めにより大幅な迂回を強いられ、住民生活や北海道全体の社会・経済活動に大きな影響があったことから、当路線の整備により、有珠山噴火時の影響範囲外に迂回路を整備し、安全安心な交通ネットワークを確保するものです。
 事業区間は北海道有珠郡壮瞥町東湖畔の1.55kmです。平成22年度から事業に着手しております。主な構造物は(仮)東湖畔トンネル、延長463mがあります。同トンネルは掘削工法上半先進ベンチカット工法で施工する予定です。28年度までに、トンネル工、用地補償を実施しており、29年度は引き続き、トンネル工、路盤舗装工を実施する予定です。


洞爺公園洞爺線概要図(平成29年4月末現在)

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