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「収益拡大で社員にやりがいと夢を」

IIS新社長インタビュー ICT化や受注拡大で橋梁国内トップを目指す

株式会社IHIインフラシステム
代表取締役社長

川上 剛司

公開日:2017.05.25

ITC化などで業務を効率化

 ――国内事業の事業展望についてお聞かせください
 川上 国内の鋼製橋梁建設事業では新設・補修工事で受注・売上高340億円を目指していますが、新設工事はそのうち、240億円。しかし、いずれ橋梁事業の市場規模が20万トンを割ることも考えられます。そのなかで、現在の売上高を確保しつつ、コスト削減を進めたいと思います。同時に人手不足に対応するためにICT化を進めることが必要です。高い技能・技量を持った技能者だけでなくエンジニアも人数が限られていく状況で、製造や架設業務で仕事の効率化を図ることで現在と同じ売上高を確保しつつコスト削減を図っていきます。
 具体的には、国土交通省が進めているI-Constructionの取組みに対応して、生産情報システムの再構築を軸に3D図面の現場活用などのシステムを構築中です。こういったCIMの導入も含めてシステムの早期完成に向けて投資を進めているところです。
 保全事業では、約100億円を見込んでいます。昨年度、近畿地方整備局から淀川大橋の床版取替えを受注しました。同工事に関連して、床版の継ぎ手の開発やPC床版の取替え検討や床版の非破壊検査技術の開発を進めています。現在、当社で進めている開発の多くは橋梁・水門の補修に関わる技術開発です。
 水門事業では、当社は大規模工事が得意ですが、補修の工事が多くなってきているなかでIIKでの受注の割合が高くなっています。今後は、お客様と一緒に維持管理を進め、点検や維持補修工事をしていけるような仕組みを作っていきたいです。具体的には遠隔監視システムの開発や受注活動を進めています。例えば、ダムなどの維持管理事務所にいなくでもモニタリングができるような維持管理業務のシステム化が進んでおり、更なる開発に取り組んでいます。このように水門に関しては、大規模工事が減少するなかで、売上高を維持する成長戦略を考えています。
 ――開発や新製品、デバイスについては
 川上 制振装置については、30年ほど前から橋梁用を扱っていましたが、現在はほとんどがビル用で売上げは5~10億円で推移しています。この部門については、地震用の制振装置の開発を促進し、海外への市場拡大により20億円を目指して営業を促進したいと考えています。
 橋梁の床版取替えについては、IIKとコンクリート建材を取り扱うIHI建材工業(以下:IKK)の3社で開発と施工技術などについてワーキンググループを作り、PC床版取替工事の受注活動を推進していきます。一方、鋼床版への張替工事の検討も進めていくほか、首都高速道路で橋梁の下に取り付け、定期的な点検に使用できる恒久足場の設置工事を受注していますが、更なる開発を進めています。そのほか、施工法についても防錆防食やケレン、現場溶接の手法など新技術の開発にも取り組んでいます。

受注拡大と効率化の推進で国内トップを目指す

 先にも述べましたが、昨今、国内の橋梁・水門建設工事の需要が伸び悩んでいます。2013年~2015年(年度売上高表参照)のように、イズミット湾横断橋のような大きな海外プロジェクトがある期間は売上高があがりますが、そうでないときは400億円規模まで下がります。当社の売上げとして、常に600億円をキープし、業績を安定させるためにも今後は国内橋梁でも受注に注力していきます。統合・設立直後は原価管理やプロジェクト遂行体制に統一性がなかったため、原価管理の一元化、プロジェクト遂行体制の強化に力を入れていましたが、現在、体制はほとんど整っています。受注方針に関しては、ここ数年間、選択と集中を重視するあまり、採算性の良い工事を選んだこともあって国内の売上高は伸び悩んでいました。今後は、採算性を重視しつつも中小規模の工事にも取り組み、収益性を向上させることが必要です。
 収益性向上のために実施していることの1つがICTの活用推進です。また、生産、施工の効率化を進め、人的リソースの適正配置を進め、エンジニアリング力、現場力を強化することで各部門をスリム化し、筋肉質な組織にしていきます。  
 さらには、業務の見える化を進めることで1日の生産性などを把握できるようにし、業務の効率化、改善を図りながら、受注量の増加に取り組んでいきます。
 今後、政府の働き方改革の方針のもと、国土交通省も週休二日制を進める予定です。当社でも今年度は2つの建設現場で週休二日制を実施していきます。
 収益力の強化には、社員一人ひとりが自分の仕事の効率化を意識し職場の風土を変えていくことが重要です。そのためにもできるだけ従業員とも対話して意思の共有化を図っていきます。
 昨年度、国内の橋梁メーカーの受注高では国内3位、水門も一昨年度の1位から3位に陥落しました。今後は橋梁、水門ともに不動の首位を目指すため改革を進めます。
 ――人材育成についてはどのような方針や施策がありますか
 川上 国内では橋梁・水門の保全部門を、そして海外橋梁事業に人的投資をしていきます。国内外ともエンジニアリング力とマネジメント力の強化が急務の課題です。
 イズミット湾横断橋などの海外のEPC工事をモデルとしてその経験を反省も含めて活かし、多くの社員に当時の状況などを説明しながら各階層別にマネジメント教育をしていきます。
 人事については、もう少し製造・加工と架設、メンテナンス部門の業務間で人員をローテーションさせ柔軟性を持たせることで、組織の活性化を図るとともに社員個人の業務の幅を拡大させ、スキルアップを図っていきます。
 ――現在の大型案件を紹介してください
 川上 現在、関わっている国内の大型橋梁案件としては、東京都の中防内の橋梁工事が異工種JVで進行中です。同工事で当社が担当しているのは、上部工の一部ですが、設計まで含めた一括施工の実績を知識や経験につなげていきたいです。
 当社がイズミット湾横断橋で得た知識や経験は、個人としても会社としても大きいものがありました。例えば、コンクリートのケーソンやアンカレッジなどの大型土木構造物を自社で施工管理を実施したことは土木工事を含んだ工事を取り組むうえで重要で、このように上下部工一括で工事を施工することが、海外でのEPCプロジェクトを遂行するうえで大いに役立ちます。
 他には、NEXCO中日本の亀山西JCT上部工工事や国土交通省近畿地整発注の淀川大橋のRC床版を鋼床版化する大規模修繕工事があります。淀川大橋は国土交通省としては大規模床版取替えのパイロット工事です。

若手にやりがいを感じさせ事業拡大を推進

 ――今後に向けて
 川上 企業で働くものとして大事にしたいことは、自分が働いている会社、職場が成長性のある事業を担っているかを意識することです。どんなに厳しい状況でも常に成長戦略を考え、ポートフォリオを広げることを考え、これを実行しなければなりません。同時に社員には会社の成長やビジョンを見せることが大切です。
 特に若手社員にはお客様と密接に関わってビジネスを進め、自身が携わるプロジェクトを成功させること、事業の収益を向上させることで、やりがいを感じてほしいですね。海外での業務を志願する若手には、海外プロジェクトの経験を積ませたいです。海外では、言葉も文化も異なる地で、エンジニアリングだけでなく、契約を重視したプロジェクトマネジメントを経験すること、また、スケールの大きい工事に携わることは、何よりも貴重な経験となります。
 自分が携わった工事に誇りを持ち、仕事で希望や夢をかなえことでモチベーションをアップし、同時にスキルをアップすることが、社員の成長、プロジェクトチームの成長に繋がり、それが企業の成長につながると考えています。次世代の人たちには会社を成長させるマインドを持ってほしいです。


朝明川橋(土木学会田中賞を受賞)

 将来の橋梁事業のビジョンとしては、コンストラクションを重視し、橋梁だけでなく道路建設を請け負える会社となり、点ではなくて線のビジネス展開を海外で推進していきたいと思います。そして、海外のプロジェクトで得たノウハウを国内の建設事業にも活かしていきたいです。
 水門の事業についても水門の設備工事だけではなく治水・利水施設の維持管理・整備事業としてビジネスを拡大させたいです。
 海外のインフラ整備のコンセッション事業に参画するには、概ね2000億円の規模の企業であることが必要条件となります。そのためにもこれから「ネバーギブアップ」を信条に事業基盤を強化し、拡大させていきます。
 ――ありがとうございました

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