建設後50年以上経過した橋梁の割合は4%
20年後には46%に増加
――札幌市は川が多く、橋梁も多いと思います。概況は
渡辺 管理している橋梁は1,280橋で、そのうち鋼橋348、PC橋640、RC橋272となります。また、橋長15m以上が572橋、15m未満が708橋です。
――鋼橋が約4分の1と、けっこう多いですね
渡辺 橋長が長いものは鋼橋になっています。架設年別ですと、28年時点で50年以上経過しているものはまだ約4%ぐらいです。10年後の38年には22%になり、さらに10年経つと約半分の46%となります。ほかの都市と比べると、建設年次はそれほど古くありません。
橋種別延長別内訳
架設年代別橋梁数
――ほかの都市では、高度成長期に建設された橋梁が非常に多い傾向です。札幌市の場合、1980年代から90年代のバブル期とその前が多いですが、理由は
渡辺 札幌五輪を契機に札幌に人が集まってきて急激に人口が増えたため、市街地が急激に広がりました。人口増には、道内の炭鉱閉鎖などの産業構造の変化も関係あると思います。市街地が広がったことで、橋梁建設も増加しました。
――橋梁の点検結果を教えてください
渡辺 部位別でみると、路面と伸縮装置、高欄・防護柵に損傷が多い状況になっています。路面については伸縮装置の段差と重複している場合もありますが、路面の凹凸が主で、除雪作業や凍結融解による損傷が考えられます。伸縮装置は、橋台背面側に段差が生じている事例や伸縮装置からの漏水がほとんどです。防護柵・高欄は車両などの接触による損傷、経年劣化による錆が多い状況です。
橋梁点検結果
地覆施工前 地覆コンクリート打設完了
含浸剤塗布 含浸剤塗布完了
凍結融解を繰り返すことで傷む舗装
橋台部の小規模な沈下も見られる
――取材時に自動車で走行していると、普通の道路が凸凹していました。地元のゼネコンさんに聞くと、凍結防止剤の散布もあり、ひと冬でかなり傷む、とのことでした。改善策は考えていますか
渡辺 凍結融解を繰り返すことで、舗装表面はかなり損傷します。しっかりと補修できればいいのですが、予算がなかなか取れないものですから、点検をしながら損傷の激しい箇所から補修しています。人口195万の都市で、これだけ多くの雪が降るのは世界でも稀です。そして意外と日中の温度は上がります。その寒暖差で舗装道路が痛み、わずかなひび割れからさらに損傷が広がっていくことは避けられません。特に人口が集中している地域の道路にそれは顕著です。
――橋台背面側に段差が生じている理由は
渡辺 踏掛版がある箇所とない箇所がありますが、転圧しづらい部分があるためと考えています。
――熊本地震のときに、踏掛版を設置していなかった橋梁では30cmぐらいの段差が生じたところがありました。緊急輸送車両を含めた普通車が通行できず、その段差が課題となりました。橋台背面側の段差は、地震時に生じることがありますが、今回は通常の維持管理上で生じているものですか
渡辺 小さな段差ですが、そのとおりです。
――舗装の損傷によって生じる段差ですか
渡辺 それもあると思いますが、圧密沈下の可能性が高いと考えています。ただ、30cmといった大きなものではなく、3cm程度の状態なので、舗装で擦り付けて補修を行っています。
――基礎地盤の圧密沈下なのか、盛土のものでしょうか
渡辺 両方考えられます。橋梁はすべて堤防渡りとなっているので、人工盛土になっていることも影響していると思います。
――主桁、床版に意外と「速やかに補修」となっている点検結果が多いですね。具体的な損傷は
渡辺 コンクリートの主桁については、やはり中性化や塩害です。鋼橋は経年劣化による腐食が多い傾向です。床版は、はく離や鉄筋の露出が比較的多い状況になっています。
――はく離鉄筋露出は床版下部でしょうか、それとも凍結融解や凍結防止剤散布によって上部に生じているのでしょうか
渡辺 かぶり厚さの不足などの施工不良によるものが多くなっています。凍結防止剤の影響はないと考えています。
橋梁長寿命化修繕計画は対象450橋 22年度より工事開始
28年度末で84橋完了
――橋梁の耐震補強の状況は
渡辺 札幌市では14年度に、重要橋梁の耐震補強を事業化しています。札幌市で管理している橋梁1,280のうち、緊急輸送道路に指定されている橋梁、JRの跨線橋、高速道路を跨ぐ橋梁等の重要橋梁259橋の中で、耐震性能を満たしていない123橋の耐震施工を実施しています。28年度末で84橋の耐震化が完了して、進捗率では68%です。29年度は7橋を完了させて、74%とする予定です。
橋梁補修進捗状況
――落橋防止装置鋼製治具の溶接での不正、不良が27年の暮れにありました。国土交通省さんからは対策が出ていますが、地方自治体では点検結果に対する対策が各地方整備局の指示待ちでほとんど進んでいないという話を聞きます。札幌市でも、不正、不良がありましたでしょうか。またあったとしたら、その対策は
渡辺 不正を行っていた製作・施工会社によって設けられた、落橋防止装置用鋼製治具は3橋ありました。国土交通省さんからいただいた情報に基づくものです。その3橋の現地調査などを行ったところ、実際には不正がなかったことを確認しました。不良もなかったので、対策は取っていません。
――熊本地震があり、橋梁は落ちないだけでなく、速やかに復旧ができる対策が望ましいと、国土交通省さんの道路技術小委員会などで話が出ています。しかし、既設橋で対策を行うのは財政的に不可能という自治体がほとんどだと思います。先ほど、札幌市の耐震補強の進捗状況を聞きましたが、JRや高速道などを跨ぐロッキングピアを有する橋梁は3年以内、それ以外のJRや高速道などを跨ぐ橋梁は5年以内に落橋・倒壊防止の対策を行う方針が国土交通省さんから出ています。札幌市では、対象となる橋梁はいくつありますでしょうか、またどのような対策を考えていますか
渡辺 ロッキングピアの橋梁は、道央自動車道に1橋(里塚1号橋)あり、NEXCO東日本さんに委託して耐震補強を行う方針です。また、跨道橋にあと2つあります。跨線橋については、ロッキングピアの橋梁はありませんが、JRさんと協議をして長寿命化の補修計画に則って対策を行っています。実際の耐震補強対策はJRさんが行います。
――札幌市はしっかりとした橋梁長寿命化修繕計画を策定しているとお聞きしました
渡辺 現在の計画では、450橋を長寿命化する目標で、22年度から開始しています。450橋の選定基準は、橋梁の重要度と、遠方目視での点検結果に基づいたものです。28年度までに125橋が完了し、進捗率は27.8%となっています。26年に近接目視での点検結果が出て、判定区分Ⅲ以上は速やかな補修対象となりましたので、450橋以外の対象橋梁をどのようにするかを検討しています。
――今年度は40橋を予定されています。これは上部工の補修がほとんどでしょうか
渡辺 上部工だけでなく、下部工も行います。さらに鋼橋であれば塗装も含めたものとなります。
――450橋をいつまでに完了させる予定でしょうか
渡辺 32年までの10年間の予定です。計画ではなるべく早く完了させることになっていますが、予算の問題等もあり、なかなか厳しい状況です。