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本命登板 3つの点に注意して運営

土研新理事長に西川和廣氏が就任

国立研究開発法人
土木研究所
理事長

西川 和廣

公開日:2017.04.27

 国立研究開発法人土木研究所の新理事長に前土木研究センター理事長の西川和廣氏が就任した。任期は5年。同氏は旧土木研究所の橋梁研究室長を長く勤め、その後、国土交通省国土技術政策総合研究所(国総研)の所長などを歴任した。いわば土木研究所を最も深く知る本命の登板である。新理事長に就任にあたっての抱負を聞いた。(井手迫瑞樹)

 ――国総研の所長退任後、久しぶりのつくば勤務ですね
 西川新理事長 そうですね。国総研の所長退任後は、橋梁調査会、土木研究センターなどに勤めましたので久しぶりです。土木研究所としては企画部長を務めていた時以来ですので、約12年ぶりの復帰です。
 ――新理事長就任にあたって、どのようなことに注意して、土木研究所を運営していきたいのか、抱負を聞かせてください
 西川 一気に全てを変えていくことは難しいですし考えていません、まずはみんなの働きぶりを見ながら必要なところをアジャストしていくことを考えています。
 ――どのようにアジャストしていくのですか
 西川 職員への就任挨拶で、土木研究所で研究を行う上で3つの点に注意していこうと呼びかけました。それは①研究の目的をはっきりと認識し手段と取り違えないようにしよう、②現場ニーズを知ることが強みであることを意識した研究を行おう、③研究成果をタイムリーに出そう――というものです。
 ①は研究者が陥りがちな研究そのものの目的化を戒めるために発しました。我々は主務大臣である国土交通大臣と農林水産大臣の認可を受けた中長期計画に沿って研究を行います。したがって計画に掲げられた課題について、技術的な解決策を提示していくことが仕事であり、研究はあくまでその方法の1手段であるという認識が重要です。
 ②はシーズに基づいた研究ではなく、ニーズに基づいた研究を行うことを強調したくて発言しました。我々は国立研究開発法人ですが、理化学研究所のように「特定」が頭につきません。すなわちだれもやっていない最先端の研究を行う――のではなく、現場のニーズに寄り添った研究を行わなければならないと考えています。土木研究所の職員は研究だけが仕事ではなく、現場において技術指導や災害復旧の際の応援にも勤しんでいます。恒常的に現場に近いところにいる研究機関なのです。そうした機関は先端技術や材料の研究が最優先では必ずしもありません。それよりは、現場のニーズに応じて、新技術のみならず開発済みの技術や材料を選択し、現場に合った形に再構築して、現場と繋げてあげる、そうした研究を行うことが必要です。
 ③は、「成果を早く出す」ことです。土木研究センターでは「土木技術資料」という土研、国総研の研究成果を中心とした書籍を定期的に発刊していましたが、それは土木学会に出すような完璧な論文ではなく、多少粗があっても、成果を発表することに重きを置いた書籍です。土木研究所の研究では、論文の完成度を意識することは、必ずしも最優先ではありません。それよりもその時に必要な技術成果を、タイムリーに提供することの方が重要です。「今後の課題」は残るでしょうが、それは現場に適用すればむしろ明確になります。最初から完璧な技術など存在しないのですから。もちろん現場の技術者は、(新技術の信頼性について)心配するでしょうから、土研の各研究者は、うまくいくまで現場に足を運び、面倒を見るという気概が必要です。各事務所では、最終的な判断は所長が行っていますから、彼らが心配なく判断できる指導の仕方ができるような研究成果やデータの積み方を心がけて、研究することが大事だと思っています。
 ――ありがとうございました

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