独自の道を真っすぐ行こう、誰もついて来られないほどの独自の道を
オリエンタル白石 新社長インタビュー
オリエンタル白石株式会社
代表取締役社長
大野 達也 氏
補修補強の伸びが突出
大規模更新事業に積極的にチャレンジ
――補修補強分野の伸びが突出しています
大野 独自技術を有していた両社のシナジーが出てきたことや、それらのさらなる開発が進み、その成果が出てきたことが大きいと思います。下部工補強としては水中既設構造物の仮締切工法「STEP工法」、パイルベント橋脚の圧入鋼板巻立てによる耐震補強工法「Kui Taishin-SSP工法」、RC橋脚の圧入鋼板巻立てによる耐震補強工法「ピア―リフレ工法」など、上部工ではRC床版のプレキャストPC床版への取替工法「SLJスラブ工法」、RC中空床版橋などの桁架け替え工法「SCBR工法」、塩害などを対象とした「TCユニット方式電気防食工法」、施工後点検も可能な透明剥落防止工「NAV-G工法」、他にも「グラウト再注入工法」、縁端拡幅などに用いる「NAPPアンカー工法」などを有しています。他社でも施工できる仕事よりも、当社しかできない仕事、当社の独自性を発揮できる仕事を優先して受注していきます。
Kui Taishin-SSP工法の施工事例/STEP工法施工事例(オリエンタル白石提供、以下注釈なきは同)
NAPPアンカー工法施工事例/NAV-G工法施工事例
TCユニット方式電気防食工法施工事例
下部工補強についてはピア-リフレ工法の適用事例が増えています。現在は適用範囲をさらに広げるべく既設フーチングにアンカーを打ち込むことで曲げ補強も行えるようにしたタイプも開発しており、兵庫県西宮土木事務所が所管する「名月陸橋」で初めての適用工事を施工しています。
ピア-リフレ施工事例
SLJスラブの架設状況/特徴のあるエンドバンド継手(当NET掲載写真を転用)
上部工では、高速道路各社が進める大規模更新事業で難工事にチャレンジしています。中央道の上長房橋では、集中工事としては初となる片車線規制による半断面床版取替を施工しています。同じく中央道の沢底川橋では国内で初めてPC連続合成桁を対象とした床版取替・床版増厚・PC外ケーブル補強の併用工法を実施しました。中国道の菅野川橋では斜角45°という厳しい条件下で、ほとんど現場打ちをすることなく高い品質を確保できるプレキャストパネルを設置することで床版を取り替えるといったミッションも達成しています。今後大規模更新事業は大ロット化が図られていく状況にありますが、中央道伊北IC付近の橋梁4本、トンネル2か所の大規模更新案件を熊谷組とのJVで受注することに成功しています。
ニューマチックケーソンは東京五輪後も数年にわたり150億円程度の受注量を確保できる見込みです。分野も橋梁だけでなく、ポンプ場や調整池、シールドの立坑などに拡大しています。将来的には桟橋基礎など港湾関係やリニアの大深度ケーソンなどにも工法を改良することで適用範囲を拡大していきたいと考えています。
加えて、沖縄で試行している技術ですが、ケーソン基礎を従来の島尻泥岩を基礎とするのではなく、琉球石灰岩層で支持できる技術を開発しています。同技術が確立すれば、琉球石灰岩層は熱帯・亜熱帯の沿岸域に広がっていることから、受注エリアも大きく広がることが見込めます。
新設橋梁 PCで100億、鋼橋で60億確保目指す
技術力向上・維持に不可欠な分野
――一方で新設橋梁はどのように受注規模を維持していきますか
大野 PCで100億円、鋼橋で60億円規模を確保していきたいと考えています。売り上げの確保だけでなく、技術力維持のため、ある程度の新設需要は必要だと思うからです。新設橋梁の施工で培う施工能力・設計能力は、補修補強事業の競争力も高めていくことができます。
技師長を中心にマニュアル化
将来的には巡回指導員制度も
――技術力の向上について、まず人材面はどのように手当てしていきますか
大野 まず新入社員は毎年20人程度採用していく方針です。さらに中途採用も数名ずつ確保しています。加えて定年後も65歳までの再雇用を行っています。
入社後の育成については、職位が上昇する都度のキャリアアップ研修や、コンクリート構造、土質などの材料、設計などについての研修や安全に関する研修を行っています。また、当社が施工してきた現場の約500本の動画や資料などもeラーニングとして用意しており、誰でも学べるようにしています。
加えて、コンクリート構造、基礎の両分野の技師長2人を中心に、コンクリート、PC、ニューマチックケーソン、土質関係のマニュアル化を進めており、、中堅以下の技術者にその知見を伝えていくことを行っています。また構想段階ではありますが、65歳以上の優れた人材と再契約して、各現場やセクションを巡回指導していくことも考えています。
――協力業者に対する取り組みは
大野 社会保険への加入はしっかりと行ってもらうよう指導するとともに、当社としては協力会社に法定福利費分を支払うことはもとより、契約時の単価見直しも各現場に指導しています。
また、今後は五輪に向けて首都圏の工事が本格化してくることから、労務者用の宿舎を新たに設けて、協力会社に使用してもらう方針です。
最近の新しい動きとしてはオリエンタル白石の協力(労務および資材の下請業者の)会を作りました。同会には各社の社長だけはなく、次期経営者にも出席してもらうように働きかけており、比較的オープンに様々な議論を行えるように図っています。
当社では協力会社の職長を表彰する制度を設けており、年間20社の職長を表彰し、技術や安全への意識を高められるようにもしています。
設備投資 ニューマチックケーソンの設備更新が主
鋼橋塗膜除去分野の独自技術としてRPR工法を導入
――設備投資面は
大野 年間12~13億円程度の投資額を維持していきたいと思っています。その多くがニューマチックケーソンの機材の設備で、大型治水施設や大型立坑需要へ対応するため、大深度、大口径に向けた新規機材の設備投資や更新を行っています。
また、鋼橋の塗装において、PCBや鉛を含有している塗膜の除去に対応するため、電磁誘導加熱を使用して既存塗膜と鋼材間の界面を破壊することにより剥離除去を行う「RPR工法」用の設備を5台購入し、実際に塗り替え工事に使用しています。
RPR工法(当NET掲載写真を転用)
――ありがとうございました