横浜北トンネル シールドトンネル延長は5.5km
大熊川トラス橋で土木学会田中賞を受賞
――横浜北トンネルについては
寺山 新横浜大橋と新横浜出入口の間に発進用立坑を設けて、新横浜側から生麦に向けて2個のトンネルを片押しで掘進しました。シールドトンネルの延長は5.5kmになります。地層は上総層群という軟岩層で条件的には良く、それにあったビットを選定して掘進しました。
シールドマシンの全景および使用したシールドカッター(首都高速道路提供)
地下深度は11~57mです。中間部に馬場出入口があり、一番深くなるのは起点と馬場出入口の中間地点および馬場出入口と終点の中間地点です。縦断形状的にはW字となっています。排水勾配を取って、深い所に水を集めて、そこから換気所に持っていってポンプアップするという排水計画です。権利としては区分地上権の設定を行いました。施工で一番苦労したのは上に住まわれている方の生活に影響を与えないよう沈下を起こさないことです。そのため地上面に機器を設置して定期的に計測し、沈下が起こらないよう確認しながら無事に掘進することができました。
新横浜付近において、トンネルでパラレル構造であった道路が二層構造に移行していきます。
――大熊川渡河部に架かるトラス橋は土木学会田中賞も受賞しましたね
寺山 平成27年度田中賞を受賞いたしました。傍らに日産スタジアム(横浜国際総合競技場)など新横浜公園が隣接しています。見ていただく視点もたくさんあると感じまして、これも構造計画の段階から景観の先生方とも相談して、一緒に歩き、どのような構造がいいか考えながら今の形式に辿りつきました。
大熊川トラス橋/同橋桁架設時写真(首都高速道路提供)
トラス橋の降下作業(首都高速道路提供)
大熊川トラス橋のうち、西側の橋脚はポンプ所と河川に挟まれており、狭いという状況がありましたので、ニューマチックケーソンを使いました。ピアはRC構造を採用しています。東側の橋脚は杭基礎としています。新横浜出入口付近はU型擁壁が主構造です。
新横浜出入口通過後から横浜港北JCT間は、大型遮音壁などを設置していないため、日産スタジアムなど周辺の景色が車中から見える環境となっています。
鶴見川並行部の下部工事中写真および上部工事中写真(首都高速道路提供)
新横浜出入口~横浜港北JCT(供用開始直前、井手迫瑞樹撮影)
――横浜港北JCTは
寺山 第三京浜と繋がるJCT機能に加え、既存の第三京浜出入口機能を有しています。これに加えて将来の北西線との連結路構造や、北西線ができた時に北線・北西線専用出入口機能も建設するため、複雑な構造を有することになります。従って今回の北線開通後も北西線の桁架設や、連結路の工事などを行っていきます。
第三京浜の上は、北線と第三京浜との連結路桁の架設を1,250tクレーンでの夜間架設で施工しました。ダブルデッキ構造ですので、上下1夜間ずつ第三京浜を通行止めして架設しました。
第三京浜上に1,250tクレーンで連結路桁を夜間架設(井手迫瑞樹撮影)
鉄道交差部 約3時間のき電停止時間内で施工
最初の2本は送り出し、以降は本線桁に縦取りし、所定位置に横取り
――生麦JCT付近の京急やJRなどとの交差部における桁架設については苦労されたことと思います。その一端をお聞かせ下さい
寺山 鉄道交差部にはJR横須賀線、東海道線、京浜東北線、京浜急行電鉄、国道15号、および貨物線が通っています。これらを跨ぐ個所の架設については、JR東日本に委託しています。工事が始まったのは平成24年8月で、桁架設が完了したのは28年8月と4年の歳月を要しました。一番大変だったのが横浜と東京を結ぶ大動脈の桁架設で、桁を動かす作業については、き電停止時間帯(午前1時~4時頃)しか施工できませんでした。
――3時間では出来る作業は非常に限られますね
寺山 施工については、最初の2本(北線の本線桁)は送り出しにより架設しました。その後の出入口の桁(3本)や岸谷生麦線の桁(2本)は線路外で地組立てし、送り出した本線桁の上に縦取りしたのち所定の位置に横取り架設する等の要領で施工しました。
最初の2本は鉄道交差部を送り出しにより架設した(首都高速道路提供)
鉄道上を跨いでいる桁架設時の状況写真(首都高速道路提供)
――こうした技術を今後の大規模更新・大規模修繕事業に生かすことはできますか
寺山 大規模更新・大規模修繕で対象としている箇所はいずれも都市内に位置します。こうした個所では、できるだけご利用される皆様にご迷惑をかけない施工方法を取らなければなりません。そうした時に本現場で行った一夜間での大ブロック架設やな縦取り、横取りの組み合わせなどの知見を十分活用して、その場に応じてやっていかなくてはいけないと思います。
――本線の送り出しは一夜間で施工したのですか
寺山 送り出し長は最大70m程度を一夜間で施工しました。
――3時間でこれをやったのはすごいですね
寺山 準備段階から非常に苦労しました。
――一方で鉄道・道路交差部の保全的な工夫は
寺山 跨線橋・跨道橋は首都高でも少なからず存在します。こうした個所に架かる桁は足場が架け難いことから供用後の点検・維持管理が非常に難しくなっています。そのため今回は、桁下に裏面吸音板を設置し、それを足場兼用にして、桁の点検を容易にできるようにしました。また、RC壁高欄の外型枠にはアルミ素材を採用して、剥落を未然に防止しています。塗り替えも基本的に不要です。兼用足場の中のクリアランスは最小で70cm、最大で3m超となっています。