1,725橋、39トンネルを管理
15m未満が2分の1強 100m以上も107橋
――次に保全の話題について管内橋梁・トンネルの内訳から
中島 横浜市道路局では1,725橋、39トンネルを管理しています。
工種別内訳を橋梁から申し上げますと、鋼橋が643橋、コンクリート橋が1,043橋(PC橋559橋とRC橋469橋、PC及びRC橋15橋)、鋼・コンクリート複合橋が34橋、木橋が4橋、石橋が1橋となっています。橋長は15m未満が880橋と51%を占める一方、100m以上の長大橋も107橋に達しています。
供用年次別は50年以上経過した橋が366橋と20%程度あり、これが25年後には80%に達することは先ほど申し上げた通りです。
トンネルは39個所のうち、在来工法が17、NATMが7、開削が15となっています。戦前に製作した箇所が6つある一方で、平成に入ってから建設したトンネルも16箇所に達しています。延長は50m未満が8箇所ある一方で500m以上のトンネルも2本(港南ひまわりトンネル内・外廻り)あります。
横浜市分類別橋梁一覧
――健全度状況をまず橋梁から
中島 鋼橋については、ジョイント部からの雨水流入等による桁端部や支承の腐食が多く、橋全体としては竣工年数に比例して損傷が大きくなる傾向にあります。これは経年劣化によるものと推定されます。
平成26,27年度の橋梁点検結果
床版や橋脚、橋台のうち、コンクリート部材については、竣工後15~24年程度の橋梁で漏水や剥離、ひび割れが多く発生しており損傷度も高くなっています。
PC橋については、竣工後55~64年程度の橋梁で全体的に損傷が大きい傾向にあります。これも経年劣化が理由と考えられます。床版については竣工後15~24年程度の橋梁でも損傷が高くなっています。
RC橋では、全体として竣工年数に比例して損傷が大きくなる傾向にあります。経年劣化によるものと推定されます。鋼橋やPC橋のように経年劣化以外の要因で損傷が多く観察される年代はありません。
押し並べて鉄筋被りコンクリートの不足により、コンクリート地覆下部に浮きや剥落を生じているケースが散見され、桁下を道路等で利用されている橋梁では、点検時に叩き落としや剥落対策を実施しています。
環状2号線の地覆下コンクリートで損傷が顕著
――15~24年程度の比較的若い橋梁で損傷が生じているとされていますが、要因や特徴的な路線などはありますか
中島 横浜市の道路建設時のトレンドとして高度成長期のほかに、昭和・平成のはじめにかけて道路整備が進み、橋梁が多く整備されており、母数の多さが数を底上げしていることが1つあります。その中で、環状2号線では鋼・PC問わず、地覆下のコンクリートでかぶり不足による損傷が生じている箇所がいくつかあり、第三者被害防止の観点から剥落対策を進めています。
――建設時の施工不良による被り不足は考えられませんか
中島 一部で明らかにそれが疑われる個所があることも事実です。
――次にトンネルについて
中島 トンネル内面については覆工コンクリート目地などからの漏水や遊離石灰が見受けられます。コンクリートの材料劣化と背面地山からの滞水が微小なひび割れなどから染み出しているためと推定されます。
トンネル外面については、坑口部で材料劣化を原因としたうきや剥落などが見られます。
防水パネルや導水工などの付属物も設置から長い供用期間を経たものは、材料劣化のためにボルトのゆるみや破れ、破損が見られます。また、防音パネルなどは車の衝突などにより破損しているものもあります。
耐震補強 重要橋梁は完了
耐震性能3未対策は135橋 17年度は14橋で耐震化に着手
――耐震補強の進捗状況は
中島 横浜市では緊急輸送路、およびその跨道橋や、跨線橋などのいわゆる重要橋梁について、概ね対策を完了しています。現在はそれ以外の一般橋梁についても耐震対策を進めている所です。
道路局管理の橋梁1,725橋のうち、耐震性能3を満たしていない橋梁の数は135橋あります。2016年度は2橋の耐震補強を完了する予定です。17年度は14橋の耐震補強を進める(工事・設計併せて)予定です。
――落橋防止装置の不正・不良問題への対策状況を教えてください
中島 横浜市が管理する橋梁で、不正に関与していた会社が耐震補強工事を施工した橋梁および歩道橋は4橋あり、調査の結果全橋に不良があることを確認しました。3橋については強度的に問題なく、1橋は問題を生じていたため、今後の対応について、請負業者と協議中です。問題がないとした3橋については、最終的には国や他の自治体の対応も考慮して判断していきたいと考えています。
――昨年の熊本地震を受けて市で対応することはありませんか
中島 落橋した府領第一橋と同様の橋脚構造(ロッキング橋脚)を有する橋梁は市内に3橋あります。いずれも上部工の落橋防止装置の設置は完了しています。3橋中2橋は東名高速道路上に架かる橋であることから、高速道路を管理する中日本高速道路とロッキング橋脚の補強対策等について調整を進めていきます。残り1橋についても何かしらの対策を検討する予定です。
――熊本地震では僅かな段差の発生により一般車や緊急車両が通れず、震災時の対応に遅滞を起こしたであろうことも見て取れます。耐震性能3から2へのグレードアップは国土交通省の道路技術小委員会でも指摘されていますが、横浜市ではどのように考えますか
中島 現状では、耐震補強が完了していない個所の対策をまずは進めて行きます。現在進めている一般橋梁の耐震補強では、平成24年以降の道路橋示方書に基づく設計を行い、補強工事を進めています。
c判定以上は橋脚・橋台が最も多く次いで床版
d判定は多い順から桁、支承、床版
――長寿命化修繕計画に基づいた対策の進捗状況は
中島 橋梁の長寿命化修繕計画は2008年に策定し、以後、進捗状況などを勘案して更新してきました。14年度からはすべての橋梁について、近接目視による点検を進めています。早急に補修が必要な箇所については、適宜適切な補修を行うと同時に、点検結果に基づき、計画の修正などの見直しを進めています。
(道路法改正後の)14,15年度2年間の点検結果を申しますと、補修が必要な損傷度c以上は橋台・橋脚が最も多く370橋、次いで床版が258橋、伸縮装置が252橋、支承が219橋、桁が212橋という順になっています。但し、損傷がより大きいd判定は桁が28、支承が26、床版が18と上部工が多くなっています
――経年劣化や疲労などによる上部工補修・補強の実績と17年度の施工計画についてお答えください
中島 横浜市では、上部工の補修に限りませんが、年間概ね90~100橋程度の橋梁の補修を実施しています。疲労による損傷は確かにございますが、やはり被り不足や施工不良が原因と思われるコンクリートの剥落、それに伴う鉄筋腐食が多く発生しています。
――床版防水の設置状況は把握していますか。また、横浜市ではいつ頃から床版防水の施工を始めましたか
中島 設置状況は集計していませんが、昭和47年の道示以降に設置され始めており、現在は床版の劣化対策等を目的に新設時、舗装修繕時とあわせ防水工を設置するようにしています。工法については橋梁毎にそのつど検討しています。