道路構造物ジャーナルNET

2017年新年インタビュー③

熊本市 落橋・通行止めに至った橋梁は19橋 一部でも損傷している橋梁は416橋に達する

熊本市都市建設局
土木部 道路整備課長

沼野 猛

公開日:2017.01.01

塩害は無し、ASRは1橋で発生
 ひび割れ注入、シラン系含浸材塗布で対策

 ――塩害やASRによる劣化は
 沼野 塩害による顕著な損傷がある橋梁はありません。ASRは過去に歩道設置のため既設橋に中空床版桁を拡幅した事例があり、その拡幅桁で橋軸方向にASRによるひび割れが顕著に出ています。江津湖公園付近の健軍川に架かる第三湖東橋です。


第三湖東橋のアル骨による劣化状況

 ――なぜ新設桁の方にASRによる損傷が生じてしまったのでしょうか
 沼野 使用した骨材が反応性であったということ。また橋面から漏水が供給されたためと判断しています。歩車道境界の立ち上がりが構造境になっていまして、そこから漏水が供給されていました・T桁橋は桁が細く、水は切れますが、中空床版橋は面で受けてしまう状況になっており、湿潤雰囲気が続いている状況でした。
 ――雨が降ると中空床版のボイドの中は水でジャブジャブの可能性がありますね。どんどん反応してしまう最悪のパターンかもしれません。現状は
 沼野 補修は完了しています。まず原因を抑制するための止水、ひび割れ注入、コンクリートの改質の3本立てで補修しました。まずは橋面舗装を全部剥がして防水層を設置して漏水を遮断しました。次にひび割れは、エポキシ樹脂を低圧注入して埋めました。最後にシラン系の含浸材を塗布して改質しました。


含浸材の塗布/水切り工の設置

 ――ASRによる損傷が出ているのは第三湖東橋だけですか
 沼野 そうです。
 ――骨材を供給した山は調べましたか
 沼野 調べました。残存膨張量までは調べていませんが、光学顕微鏡での成分試験まではやって、ゲルが非常に出てしまっている状況です。

薄場橋で3,000平方㍍塗り替え
 29年度に全鋼橋の既設塗膜成分確認へ

 ――鋼橋塗り替え実績と予定等は
 沼野 27年度は2橋で800平方㍍と、規模の小さい橋梁だけでした。28年度は白川を渡河する薄場橋(鋼3径間トラス橋)の半分3,000平方㍍を塗り替えます。同橋は2カ年に分けて塗り替える予定で、塗り替え以外にも各種補修を行います。
 ――塗り替え方法ですが、「鉛等有害物を含有する塗料の剥離やかき落としにおける労働者の健康障害防止について」文書が出て以来、大変みなさん苦労していますが、熊本市ではどうでしょうか
 沼野 Rc-Ⅰを基本としていますが、やはり、施工スペースなどの関係で、採用しているのはRc-Ⅲも多いという状況です。
 ――通常のRc-Ⅰ施工は、既設塗膜に鉛やPCBが入っていると塗膜剥離に特殊な手法が必要になりますが
 沼野 現在までのところ、塗替時に行った検査でPCBや鉛は検出されませんでした。
 ――橋梁台帳だけでなく実際に塗料を調査しましたか
 沼野 調査しました。平成29年度には、なるべく全ての鋼橋で既設塗膜の中の有害物の有無を調査したいと考えており、予算を要求しています。
 ――ありがとうございました

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