拡販を図るべくESCON協会を設立
第三世代の超高強度コンクリート「ESCON」
ESCON協会
会長
森元 峯夫 氏
水・セメント比は15%
専用の混和剤で練り混ぜ可能に
――ESCONの長所をより具体的に教えてください
森元 強度、流動性が高い点です。ESCONの水セメント比は一般的なコンクリートが45~50%であるのに対し、15%と非常に小さいです。通常、ここまで水セメント比が小さいと練り混ぜが難しくなりますが、ESCONは専用の混和剤を用いることで、練り混ぜを可能とし、高強度と高流動性を実現しました。加えて超微粒子のシリカフュームを添加しており、セメント粒子間の間隙を埋めて小さな組織を形成するマイクロフィラー効果によって超高強度の発現を可能にしました。また、補強繊維にはPVAを使用しているため、ひび割れが生じてもPVA繊維が架橋効果を発揮し、高引張力、高靭性も実現しています。
こうした性能を有しているため、同じコンクリート製品を作る際、従来のコンクリートに比べて薄さも重さも約半分にすることができます。プレキャスト製品の課題である運賃や施工に要する人員の節減にもつながります。
――短繊維を混入した超高強度コンクリートは他にもありますが
森元 確かに、スチールファイバーを使った超高強度PCは、20年以上前から、開発されて実用化されています。しかし、RC構造としては使いにくいため世界的に伸び悩んでいます。
従って、誰でも製造でき、使用する環境や場所の制約がない超高強度コンクリートとしてESCONを開発しました。
用途例:カバープレートや河川の保護パネル
売り上げ規模は数年後に約100億円を目指す
橋だけでなくボックスやトンネルにも適用可能
――エスイーとしての狙いは
森元 当社は昭和42年にSEEE工法をフランスから導入して発展してきました。PCとはいえ鋼材を主力製品としてきました。一方でコンクリートとは親しみの深い分野で育ってきたといえます。ESCONをRC構造はもちろん、高強度・高耐久かつ部材を薄くできるという長所を生かして長大スパンのPC桁や既存桁に負担をかけない取替用床版、切土補強土工法などの反力体、トンネルのプレキャストセグメントなど様々な分野に展開していきたいと考えています。土木に拘っておらず、建築物のSRC用プレキャスト部材としても提案していければと考えています。但し、我々が工事そのものは手掛けていませんので、エンジニアリングと材料供給に徹して会員の皆様の手助けをしてまいりたいと思います。
売り上げ規模は数年後に約100億円を目標にしています。
のり面の受圧板(左)/ESCONによるプレキャスト床版パネルのイメージ(右)
300㍍スパンのPC桁も製作可能
ESCON床版に防水は不要
――適用分野は多岐にわたりますね
森元 プレキャスト製品としては、ボックスカルバート等にも適用していきたいと考えています。
また橋梁については、例えばPC構造であれば、300㍍スパンのものを施工するのは事実上不可能ですが、ESCONを使えば実現可能です。
また建築分野では、柱、梁のほかスラブを各々プレキャストセグメント化し、現場で組み合わせればより速く施工でき、緻密で軽いものができます。またESCONは耐火性にも強くその意味でも良い材料といえます。これはコンクリート中の合成繊維が先行融解するためです。
――NEXCO3社や首都高速、阪神高速では大規模更新事業の大きな分野として既設床版の取替を挙げています。同分野への適性はどのように考えていますか
森元 ESCONは厚さを半分程度にできます。性能を確認するに当たっては、ESCON協会技術顧問の松井繁之先生(大阪大学名誉教授)のご指導のもと、輪荷重走行試験を行いました。その結果、ESCONでは12㌢の厚さでも必要な疲労耐久性を得られることが確認されました。
輪荷重走行試験も行っている
――阪神高速道路などでは疲労損傷した鋼床版の取替に超高強度コンクリート床版を採用することを検討していますが、こうした分野への適用性は
森元 可能です。重さはトータル的に鋼床版と同等程度に抑えることができます。
――防水層の必要性は
森元 ESCONは水を通さないため基本的に防水層は不要であると考えています。
――販売戦略は
森元 基本的にエスイーの工場でプレキャスト部材を製造していきます。現在は法面の受圧板やスラブ、桁や床版などの橋梁部材を製造していこうと考えていますが、同時にゼネコン各社によるトンネルのセグメントや建築部材も製造していきます。自社製造に拘るのは、製造・施工時の課題を把握するためです。
ESCONは会員各社からの注文により、必要なプレミックスセメントや混和剤など水以外のあらゆる材料を直ぐに搬送できる体制を整えていきます。また、要請があれば必要機材をご提供します。
事業環境は刻々と変化しています。その変化を的確に捉えて新しい事業を作り出すのが、企業の成長する道です。当社はESCONにより更なる成長を遂げたいと考えています。
――ありがとうございました