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ミッシングリンク、都市の渋滞対策、災害時の冗長性確保

近畿地方整備局 道路整備は未だ不十分

国土交通省
近畿地方整備局
道路部長

東川 直正

公開日:2016.12.21

長寿命化修繕計画は見直し中
 淀川大橋で設計交渉・施工タイプによる調達方式を採用

 ――橋梁の長寿命化修繕計画にもとづいた対策の進捗状況についてお答えください。また、具体的な損傷状況と補修補強内容についても例を挙げていただけましたら幸いです。また、トンネルの点検状況、トンネルついて橋梁のような長寿命化修繕計画を企図した補修補強計画の進捗状況を教えてください
 東川 橋梁の長寿命化修繕計画については点検結果を踏まえて現在見直し中です。トンネルについては個別施設計画を本年に公表しています。


淀川大橋の鈑桁部とトラス部

 健全性の診断における判定区分Ⅲについては早期に補修設計及び補修工事を行うこととしており、例としては淀川大橋があります。同橋は大正15年(1926年)に架設された淀川渡河部に架かる橋長724.516㍍の鋼6径間単純上路式ワーレントラス桁+鋼12径間単純鈑桁(いずれもリベット接合)で、90年が経過しており、第二次世界大戦の被災や阪神淡路大震災なども経験しています。25年度の定期点検やそれ以前の診断の結果、床版の漏水、剥離・鉄筋露出、貫通ひび割れ、補修材の再劣化、鋼材腐食など様々な種類の著しい損傷が見られています。これまでの間に何回かの補修補強工事も実施されていますが、今回抜本的な対策として床版の取替工事を実施するに到りました。


主桁の損傷状況(左)/トラス部に残る太平洋戦争中の銃弾痕(右)

傷みの激しい淀川大橋の床版部

 同橋では、直轄事業で初めて設計交渉・施工タイプによる調達方式を採用しました。具体的には傷みの激しい既存床版(RC床版構造)を鋼床版に変更し、健全化するもので、合わせて桁の損傷部にも状況に応じて補修補強をかけます。そのため「施工設計」、「維持管理保全設計」を基本コンセプトに、専門性が高い鋼橋上部工業者を発注対象としています。  施工設計、維持管理保全設計を基本コンセプトにしたのは、施工者独自の最新技術や知見などを反映することで、施工時のリスクを低減しつつ、効率的な検討を行う必要があるためです。施工計画はもちろん、施工設計することで工事を安全かつ確実に実施することを目的にしています。また、補修補強後の維持管理も意識した設計を求めています。
 鋼床版を採用したのは、施工のし易さ・迅速さなどから交通規制を最小限にできることや、下部工の耐震性が低いため上部工の軽量化を図りたい――という理由です。ただし交通量は12時間で24,000台、24時間で35,000台弱、大型車混入率も12.7%/12時間あり、床版の疲労損傷対策が必要なためトラス部の鋼床版は版厚18㍉のUリブ、鈑桁部は14㍉のバルブリブ形式をそれぞれ採用し、かつSFRCによる基層を打設する基本方針です。
 一方で、既設の桁形式は非合成構造ですが、一部、主桁がRC床版に入っており、現状確認できない箇所もあります。そうした詳細や床版撤去後の桁部の損傷によっては大きな補修補強も考慮されることから直轄事業で初めて設計交渉・施工タイプによる調達方式を採用し、専門性の高い会社による確実な施工を求めています。

床版 127橋で損傷を確認
 剥離・鉄筋露出が過半、水の影響が多い傾向

 ――淀川大橋は早さなどを意識して、鋼床版+SFRCにしたわけですね。さて経年劣化や疲労などによる上部工補修・補強のここ3年の実績と2016年度の施工計画について、また鋼床版の疲労亀裂に関する詳細調査および要補強対策工について該当橋についてお答えください。また、コンクリート桁・床版部においてどのような損傷がでているか教えてください。加えて整備局が管理する橋梁における床版防水の施工状況(コンクリート床版を有する全橋梁に占める施工済み割合などが分かれば)、今後の施工方針、採用する工法などを教えていただけましたら幸いです
 東川 上部工補修・補強のここ3年の実績は平成25年度が139橋でうちコンクリート桁が45橋、RC床版が73橋(桁と床版は重複あり、以下同)、26年度は91橋で同55、45橋、27年度は66橋で同27、30橋となっています。今年度は106橋の上部工を補修ないし補強する予定で、うちコンクリート桁は47橋、RC床版は50橋施工する予定です。
 コンクリート床版の損傷状況についてですが、平成26、27年度に調査したうち損傷の見られた127橋では、コンクリートの剥離・鉄筋露出が68橋、漏水・遊離石灰が42橋、うきが38橋、床版ひび割れが27橋で見られています。主に防水や排水の不良が要因とみられる損傷が多い傾向となっています。さらに年次を調べたところ、昭和41~50年に建設された橋梁で損傷が比較的多くなっています(下表)。

 床版防水については、平成14年3月の道示改訂で床版防水が義務付けられて以降に完成された約720橋は新設時から床版防水が設置されています。また、道示改訂後は、既設橋についても設置を進めており、351橋で完了しています。今年度も23橋で設置する予定です。

岩屋高架橋(上り線)など3橋で鋼床版疲労亀裂を確認

 鋼床版の疲労については、国道43号の岩屋高架橋(上り線)で、鋼床版の縦リブと横リブの溶接部に亀裂が確認されました。点検中に削り取り除去を実施しましたが、亀裂消滅に至りませんでした。現状はストップホールを設けることができないため、MTで亀裂の進展を確認する必要があります。今年度設計業務を実施予定です。
 国道26号紀の国大橋では、鋼床版の縦リブと横リブの溶接部に亀裂が確認されました。速やかに補修対策(当て板等)を実施する必要があるため、一部今年度より工事対応を予定しています。
 国道1号古川高架橋(下り線)では、箱桁内の主桁垂直補剛材と鋼床版との溶接ビード部から生じたと思われる塗膜割れがあり、MT調査を実施したところ長さ60㍉の亀裂が確認されました。亀裂進展の有無を追跡調査しており、進展状況に応じて垂直補剛材の剛度を小さくする半円形除去加工による補修やあて板等の補修を行う必要があります。今年度に設計業務を実施予定です。
 ――鋼床版については、基本当て板かストップホールですね
 東川 そうです。
 ――場所によってはSFRCを打つというような現場が増えていますね。例えば名高速などはSFRCを今打っていますし、もしくは有機繊維のFRCなど、そういった上面の基礎部分をFRCにして、表層を普通の舗装にする補強の方法も首都高や阪高で行っていますが、そうした技術の導入は
 東川 2号淀川大橋など現場条件が合えばネティスのシステムを活用し、新しい技術について促進していきたいと考えます。
 ――支承取替やジョイント交換の今年度予定は
 東川 支承は4橋で鋼製支承をゴム支承に取り換えます。ジョイントは鋼製伸縮継手を36橋、埋設型伸縮継手を1橋で交換します。ノージョイント化も1橋で施工する予定です。
 ――塩害やASRによる劣化の発生状況は
 東川 塩害は51橋で発生しています。海岸沿いを走る国道42号が最も多く21橋となっています。また、ASRは72橋で発生しており、国道2号が最も多く40橋とこちらは5割を超えています。


塩害およびASRの路線別橋梁数

 ――対策実施例は
 東川 過年度に塩害対策した代表的な橋としては、国道42号の和歌山県東牟婁郡串本町の海岸部に位置する古座大橋があります。1968年竣工のPC桁部(ポストテンション方式単純T桁)で、塩害により、上部工のPC主桁の下フランジでひびわれ、PC鋼材の1本で、素線12本中2本の破断が確認されました。
 そのため、PC鋼材のはつり調査、外ケーブル張力調査、主桁のプレストレス量調査、塩化物イオン量調査などを実施した上で対策工を検討し、外ケーブル再緊張、電気防食、断面修復等を実施しました。


国道42号古座大橋

古座大橋の補修・補強内容

 同様にASR対策を施した代表的な橋は国道26号の堺高架橋(左写真)があります。大阪府堺市に位置する1975年竣工の2径間連結プレテンT桁橋(ゲルバータイプ)で、ASRにより、ゲルバー部目地(可動)部の橋軸直角方向のひびわれや橋脚梁と上部工の剛結(固定)部の横桁下縁の剥離と梁のひびわれが確認されました。
 そのため、伸縮装置部にシール材を充填し、乾燥クラックにエポキシ樹脂を注入するとともに、断面修復及びメッシュシートによる剥落防止を実施しました。


堺高架橋で行ったASR対策

 ――平成27年度の鋼橋塗り替え実績(橋数と面積)と、28年度の鋼橋塗り替え予定(同)は。また塗り替えの際の全体的・部分的な用途でも良いので溶射など新しい重防食の採用などについてもお答えください。また、PCBや昨年の厚生労働省・国土交通省から2014年5月30日にでた文書を受けて、鉛など有害物を含有する既存塗膜の処理についてどのような方策をとっているのか教えてください。加えて、耐候性鋼材を採用した橋梁で錆による劣化・損傷が報告されている事例が出てていますが、整備局では採用事例が何橋あり、現状どのような健全度を示しているのか教えてください 
 東川 平成27年度は鋼橋31橋に対して約2万4千平方㍍の塗替(うち、30平方㍍は溶射)を行いました。28年度は鋼橋28橋に対して約1万8千平方㍍の塗替(うち、30平方㍍は溶射)を予定しています。
 PCBや鉛を含む有害物を含む既設塗膜の剥離をする必要がある場合として過年度に塗替えを行った国道2号左門橋では塗膜剥離剤を採用しています。


左門橋では塗膜剥離剤にバイオハクリX(KT-140050-A)を使って塗り替えた

 耐候性鋼材について管内では67橋の橋梁に採用されています。 平成27年度までの点検結果によると、健全度がⅡまたは対策区分がC以上の橋梁は10橋あり対策を検討中です。
 ――もう少し具体的に聞きたいのですが、塗り替えは現在どれくらいの素地調整を基本としていますか。また1種ケレンの場合は基本的にブラストを必要としますが、そうした際はどのような塗膜処理+素地調整方法で施工しているのでしょうか
 東川 現時点では橋梁補修に伴って補修部材付近の部分的な塗装を行う工事が多く、長寿命化を目指した既設橋の重防食塗装工事はこれからになります。1種ケレンの施工方法についてはブラスト処理のみで行うのがいいのか、塗膜剥離処理と併せてブラスト処理を行うのがいいのか今後現場での事例が集まってくると思います。
 ――もう1つ耐候性鋼材は主にどのような部位が損傷しているのでしょうか。また補修方法はどのような手法で対策を施しているのでしょうか
 東川 耐候性鋼材は伸縮装置付近、排水管付近で漏水の影響を受ける部位(主桁、横桁等)の腐食などが挙げられます。補修は漏水の供給源を対処した上で、部材の腐食の状況に応じた対策を検討することになります。
 ――全国的に異常気象などによる土砂災害が相次いでいますが、整備局として道路に面する斜面や、古い法面などをどのように補強・補修して道路を守っていくのか具体的な事例や計画などがございましたら教えてください。また具体的な要対策箇所数と進捗状況などについてもお答えください
 東川 大雨や台風等による土砂崩れや落石等の恐れがある箇所については法面工など安全性を高める対策を実施しています。
 平成8年度に道路防災点検及び平成18年度にその再確認を行っており、それらの結果を踏まえて継続的に対策を実施してきたところです。


法面対策例

 ――新技術や、コスト縮減策または県独自の新技術・新材料などの活用について(具体的なNETIS活用技術の紹介などもお願いできましたら幸いです)
 東川 橋梁及びトンネル補修工事における新技術としては、河川や海等の水中に設けた橋脚の補修・補強等を行う際に、仮締切用のライナープレートを垂直方向(水中)に向いて送出し、設置するための技術である仮締切LPF工法(CB-110010-A)、既設鋼製支承に金属溶射することより長期間防食し、同時に潤滑性防錆剤を注入する支承の若返り工法(HR-100013-V)、橋梁伸縮装置遊間部からの漏水を橋の下側から集水し、迂回集排水するトータク簡易排水装置(KT-100033-VE)、鉄部に塗布し酸素還元処理することで酸化しない、錆転換機能(黒錆に転換)を付与した無溶剤型二液性エポキシ樹脂系防錆・防食塗料(KK-130045-A)、鋼構造物防錆システム。鋼構造物、全般。特にブラストの打てない狭隘部に用いるNKさび安定化防錆工法(SK-100009-V)、トンネル、ボックスカルバート、共同溝等の目地及びクラックからの漏水を下流に速やかに導くアーチ・ドレン工法(KK-120043-VE)などを採用しています。
 ――最後に長大橋の補修補強は。先ほどの堺高架橋や国道2号の姫路大橋などがあると聞きますが、その対応状況について
 東川 姫路大橋は橋長が252㍍、上部工形式は単純合成鈑桁(6連)、下部工形式は半重力式橋台・RC-T型橋脚、基礎形式はケーソン基礎です。損傷状況および原因として、主桁、縦桁の亀裂(疲労)、塗膜割れが発生しており、一部MTを実施し亀裂を確認、削り込みを実施しました。それらを踏まえて補修設計を完了している状況です。堺高架橋はピルツ・ゲルバー・ピルツという桁中間部にゲルバーを有する吊桁形式であり、対策が必要です。現在は補修設計中という状況です。


姫路大橋(左)/削り込み実施個所(右)

 ――ありがとうございました

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