道路構造物ジャーナルNET

50年以上経過橋梁は45%、健全度Ⅲは447橋

京都市 2860橋、19トンネルを管理

京都市建設局
土木管理部 担当部長(道路防災)

秋山 智則

公開日:2016.12.16

支承取替 賀茂大橋で全数取替
 鋼橋塗替えは8橋11,023平方㍍ 基本3種ケレン

 ――支承取替やジョイント交換およびノージョイント化について今年度はどのくらい施工しますか、工法・材料の種類も副えて教えてください
 秋山 支承取替は賀茂大橋で72基行います。同橋の鋼製ピンローラー支承は古く、水が周って著しく腐食している箇所が多く、ゴム支承(タイプB)に交換します。
 ジョイントの交換は山端跨線橋で車道部12箇所、歩道部2箇所を施工します。いずれもゴム製の非排水タイプ(2次止水を有する)に取り替えるもので、荷重支持型を車道部、突き合わせ型を歩道部でそれぞれ採用しています。


山端跨線橋の伸縮装置取替

 また、三栖高架橋では、近隣住宅の振動対策として、鋼製ジョイントから埋設ジョイント(ヘキサロック)への取替えを実施しています。


三栖高架橋では鋼製ジョイントから埋設ジョイント(ヘキサロック)に取り替えた

ヘキサロックの施工状況

 ノージョイント化は、27年度から賀茂大橋で単純桁の連続化を2箇所行っています。主桁を連結し、3連の単純桁を連続化するものです。また、ゲルバーを有する二条大橋、九条跨線橋でそれぞれ連結化し、ゲルバー部を解消します。九条跨線橋は先述のように施工中で、二条大橋については昨年11月にデザイン検討会を開催しており、今年度、補修・補強工事に入っています。
 ――塩害やASRによる劣化の有無は
 秋山 凍結防止剤を含む漏水による損傷は北部の山間部を中心に少なくない数で見つかっています。ASRによる損傷はありません。
 ――平成27年度の鋼橋塗り替え実績および28年度の計画は
 秋山 27年度実績は4橋2,134平方㍍です。今年度は8橋11,023平方㍍で実施する予定です。基本は3種ケレンで施工しています。
 ――溶射など新しい重防食の採用は
 秋山 現在のところありません。
 ――PCBや鉛などの有害物質を含有する既存塗膜の処理についてどのように対応していますか
 秋山 既存塗膜に有害物質を含有する場合は、塗膜剥離剤を用いた湿式工法の施工を検討します。塗膜処理方法は、平成26年5月30日付の厚生労働省からの通知「鉛等有害物を含有する塗膜の剥離やかき落とし作業における労働者の健康障害防止について」に従い対応しています。

耐候性鋼材 出口橋で損傷を確認
 凍結防止剤散布地域は注意深く点検

 ――耐候性鋼材を採用した橋梁の劣化・損傷事例は
 秋山 耐候性鋼材は久我橋、高野橋、祥久橋、出口橋、紘葉橋、美杉橋、高瀬橋、今峠橋、猿渡橋、金鈴橋の10橋で採用されています。平成10年代に新技術として採用した例が多い状況です。
 出口橋は京都府が架設した橋で、京北町との合併の際に新たに当市が管理することになった橋梁ですが、排水桝からの漏水により、主桁などが損傷していました。同橋については排水桝の取替えや主桁のあて板により補修しました。山間部の凍結防止剤散布地域に架けている耐候性鋼材橋については点検時に漏水箇所や錆の状態を注意深く見ていく必要があると考えています。

法面・自然斜面の災害防除 国道162・367号沿いを優先
 27年度に防災カルテの電子化完了

 ――全国的に異常気象などによる土砂災害が相次いでいますが、京都市として、道路に面する斜面や、古い法面などをどのように補強・補修して道路を守っていくのか、具体的な事例や計画などがありましたら教えてください
 秋山 自然斜面・法面の災害件数は近年増加傾向にあり、台風18号が襲った25年度は701件、26年度は435件を数えています。
 災害防除については要対策箇所560箇所のうち、対策済みは148箇所と26%に留まっています。確かに最近モルタル吹付けで補強した古い法面が、ひび割れて剥落するという損傷がありました。これらについては、通常の道路パトロールで良く点検して、発見し、補修していく、ということになろうかと思います。
 また、緊急輸送道路上の要対策箇所で災害防除ができている法面や斜面は90箇所中29箇所と32%に留まっています。国道162号、国道367号については優先的に整備を進めていく方針です。
 なお、平成24、25年度に防災カルテを更新しており、27年度にはその電子化を完了しています。
 ――具体的な対策工法は
 秋山 切土補強土工法(PANNWALL工法)や補強土植生法枠工法(GTフレーム)を採用しています。PANNWALL工法は平成27年度に左京土木事務所管内の一般府道上黒田貴船線の災害防除事業(272平方㍍、高さ最大6㍍)で活用したものです。補強土工法の表面工としてプレキャストコンクリート板を採用しており、急勾配(垂直~5分、標準3分)化による長大法面の低減と掘削残土量低減、板意匠パターンの多様化による景観対応が可能です。また構造物を上から下へ仕上げる逆巻き施工により、施工時の地山の緩みと崩壊事故を防止できます。従来のブロック積み+グラウンドアンカーと比較して約3%の工費を縮減できました。


PANWALL工法(左)/GTフレーム工法(右)

 GTフレームも同年度に一般府道柚原向日線で用いています。従来の法枠工・植生基材吹付工法に替えて景観性・経済性・施工性に優れる工法として採用したもので、コストは従来工法比37%の改善を実現しています。また、従来工法より軽量で日当たり施工量が向上するため、従来工法で50日の工期を見込んでいたのを24日と半分以下にすることができました。景観性も初期段階から法枠工が目立たない仕上がりとなっています。
 また、京都日吉美山線では、自然石にストッパーパネル付アンカー材を取り付けた急勾配護岸工法「ラップストーン工法」を採用しています。


ラップストーン工法

鴨川渡河橋にPP工法を採用
 剥落防止工にタフガードQ-R工法

 ――他、保全に関して新技術は
 秋山 まず国道367号の鴨川渡河部に架かる北大路橋では、橋脚耐震補強にマグネラインPP工法を採用しています。鴨川を中心に河積阻害率が5%を超える箇所に関しては、河川への影響をなるだけ減らすために補強断面の小さいPP工法を採用しています。こうした個所では保護塗装も行います。

北大路橋で採用されたPP工法

 剥落防止工については、御池大橋、九条跨線橋でタフガードQ-R工法を採用しています。
 ――ありがとうございました

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