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50年以上経過橋梁は45%、健全度Ⅲは447橋

京都市 2860橋、19トンネルを管理

京都市建設局
土木管理部 担当部長(道路防災)

秋山 智則

公開日:2016.12.16

老朽化修繕は5年間で29橋実施
 来年度に向け計画見直しへ

 ――橋梁の長寿命化修繕計画の実施状況は
 秋山 長寿命化修繕計画は平成23年12月に策定しています。長寿命化修繕計画と耐震補強の実施計画として、同時に「いのちを守る 橋りょう健全化プログラム(第1期:H24~28)」を策定しており、28年度までの5年間に当初予定していた老朽化修繕34橋のうち29橋で対策が完了する予定です。29年度末にはさらに残る老朽化修繕5橋の対策を完了させる予定です。
 老朽化修繕の進捗状況は(緊急輸送道路上の15㍍未満の橋梁及び15㍍以上の橋梁など)対象680橋のうち完了したのは29橋です。29橋の内訳は老朽化修繕が27橋、耐震補強の対象と併せて老朽化修繕を行った橋梁が2橋(御池大橋、伏見街道跨線橋)となっています。
 現行の橋梁長寿命化修繕計画は今年度をもって5年間の計画年数を完了するため、1巡目の点検を反映し、かつ対象を全橋梁に拡大して計画を見直します。

賀茂大橋、九条跨線橋でゲルバーを解消
 羽束師人道橋の高欄で電食が発生、大規模に対策

 ――特徴的な補修補強を行っている橋梁について例を挙げてください
 秋山 1つは賀茂大橋です。同橋は昭和6年に架設された橋長141㍍の単純鋼鈑桁×4連+4径間鋼ゲルバー桁橋です。定期点検の結果、床版下面の被りコンクリート剥離・鉄筋露出、桁端部の発錆・腐食、鋼製支承の腐食などが見つかっており、健全度Ⅲに判定されており、補修が必要となっています。但し、鴨川に架かる京都市を代表する橋梁であり景観の面でも検討が必要なことから、平成26年度に「賀茂大橋デザイン検討会議」を開催し、27年度から補修工事に入っています。景観を考慮して、単純桁部の線支承については、橋座から桁下面までの高さが低いため、コンパクト支承に取替えを行い、ゲルバー中央支点部の鋼製支承については、景観を構成する要素となっており、現在のイメージを損なわないように同様の形状のタイプB支承に取替を行っています。


賀茂大橋の上部工損傷状況(左)桁端部、(右)床版部

 また弱点となっているゲルバー構造については鋼板で繋ぎ連続化します。現在の印象を毀さないように鋼I桁部のゲルバー部の損傷部を撤去し、連結板(上下フランジ、ウエブ)にて連結しています。
 2つ目は九条跨線橋の鴨川右岸部です。同橋は中央径間の瀟洒な鋼アーチ橋に接続する単純鋼I桁+RCT立体ラーメン桁+単純鋼I桁で、橋長75㍍部分の上下部補修補強を進めています。最大の特徴はRC桁部分の2か所に吊桁構造を有する(すなわち4か所にゲルバーを有する)ことです。
 同橋は昭和12年に架設され、桁中央部は昭和50年代前半まで京都市電として供用されており、古い旧鉄道橋の常として軌道部の床版厚は280㍉(桁高は600㍉)と厚くなっています。深刻な損傷はありませんが、排水設備の不備や床版防水の未設置(供用開始以来未設置)により、所々で水たまりがあり、局部的に床版の砂利化が生じています。特にゲルバー部および近接部の損傷は比較的酷いものとなっていました。
 今回の補修補強工事では、そうした損傷や弱点を解消するため、吊桁部をクレーンで吊り上げ撤去し、撤去部分を現場打ちして連続化しました。構造的にはRCのままで連結しています。同橋は4車線を有し、歩道も両側に設置していますが、今回はその幅員を3つに分けて桁の連続化、損傷部位の補修、床版防水の設置及び舗装打換を施工します。具体的な施工ステップは①西行きの歩道と車道の一部、②中央の車道部、③東行きの歩道と車道の一部を順番に規制して施工します。規制に際しては東西方向とも必ず1車線、歩道も両側いずれかは確保しています。施工は8月のお盆明けから始めており、第1ステップは10月上旬に完了する予定。全ステップとも工期は1か月半程度を想定しており、年末には橋面上の工事をすべて終える予定です。


ゲルバー解消工事を行った九条跨線橋

 下部工も耐震性能が現行基準に達していないことからRC巻き立ておよび鋼板巻き立て、横梁部については炭素繊維シートにより補強しています。下部工補強についても年度内に完了する予定です。
 最後に、羽束師人道橋の高欄補修があります。同橋は、平成14年度に歩道部を拡幅しましたが、高欄支柱部において全ての箇所の地覆コンクリートでひび割れが発生していました。


羽束師橋の高欄支柱部地覆のひび割れ状況(左)、地覆型枠の組立(右)

羽束師橋高欄支柱地覆部補修後の状況

 これは、高欄支柱にアルミ製の部材、ベースポストに鋼製部材を用いていたことにより電食が生じたことでアルミ製支柱が腐食膨張し、地覆コンクリートのひび割れを招いたということが分かりました。そのため、ひび割れ発生個所をはつりとり、アルミ製の高欄支柱の腐食部分を切断除去することによって、地覆コンクリート内部での電食を無くす工事を昨年度から今年度にかけて実施しています。

床版防水 昭和62年度から基本的に敷設
 総数は未把握

 ――経年劣化や疲労などによる上部工補修・補強のここ3年の実績と2016年度の施工計画についてお答えください。加えて市が管理する橋梁における床版防水の施工状況、今後の施工方針、採用している工法などを教えていただけましたら幸いです
 秋山 床版防水については「道路橋鉄筋コンクリート床版防水層設計・施工資料(日本道路協会、 昭和62年1月発行)」発刊以降の新設橋については、基本的に敷設します。但し、それ以前に架設した橋梁については防水工を施工していないケースもあり、床版防水設置橋梁の総数は不明です。今後は老朽化修繕に併せて床版防水工を施工していきます。採用工法は専らアスファルト塗膜系防水です。
 ――舗装修繕を行う際、繰り返される切削により、既設RC床版の上面コンクリート被り厚が薄くなり、床版を傷めてしまうケースも出ていますが、京都市はどうですか
 秋山 橋面舗装を補修する場合の切削は約80㍉の舗装厚のうち、表層部の40~50㍉を切削し、オーバーレイを行っています。
 なお、床版防水を行う場合は、床版部までアスファルトを切削していますが、(削りすぎて)被りコンクリートを傷つけた事例はありません。

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