京都市は、2,860の橋梁と19のトンネルを管理している。橋梁の内50年以上経過している橋梁は全体の45%に達しているが、20年後にはこれが82%に跳ね上がる状況であり、計画的な橋梁修繕は待ったなしの状況だ。トンネルについても長寿命化修繕計画を策定し、計画的な維持管理に努めている。一方で自然斜面・法面の災害防除の進捗は要対策箇所数が多く、今後一層の取り組みが迫られている状況だ。道路維持管理上のそうした課題を中心に新技術の採用状況も含め、同市建設局の秋山智則土木管理部担当部長に詳細を聞いた。(井手迫瑞樹)
橋種はRC橋が1,817橋と約3分の2を占める
健全度Ⅲは鋼橋が最も多く271橋、PC橋も9橋
――京都市が所管する管内橋梁・トンネルの内訳は
秋山土木管理部担当部長 京都市は全体で2,860橋を所管しています。そのうち橋種別では鋼橋が593橋(21%)、PC橋が423橋(15%)、RC橋が1,817橋(64%)、その他が27橋(1%)となっています。供用年次別では50年以上経過している橋梁が1,283橋(45%)、40~49年が555橋(19%)、30~39年が507橋(18%)、20~29年が300橋(11%)、10~19年が174橋(6%)、9年以下が41橋(1%)となっています。20年後には2,345橋、実に82%の橋梁が供用後50年以上を経過します。延長別は橋長15㍍未満が2,345橋、15㍍以上100㍍未満が477橋、100㍍以上が38橋となっています。路線別では国道が136橋、地方道(府道)が527橋、地方道(市道)が2,197橋です。ちなみに緊急輸送道路上にある橋梁は179橋です。
京都市の所管する工種別橋梁数および橋長別橋梁数
――点検を進めて見て橋梁の劣化状況を教えてください。京都府では劣化損傷のほとんどが桁端部または伸縮装置からの漏水によるものでしたが
秋山 道路法改正前の点検(平成20~26年度)2,860橋の結果は、健全度Ⅰが1,468橋(51%)、健全度Ⅱ(予防保全段階)が945橋(33%)、健全度Ⅲ(早期措置段階)が447橋(16%)となっています。緊急措置が必要な健全度Ⅳに達している橋梁はありませんでした。
健全度Ⅲの橋種別内訳は鋼橋が271橋(61%)と最も多く、次いでRC橋160橋(36%)、PC橋9橋(2%)、その他7橋(2%)となっています。鋼橋部材はRC床版からの漏水、それによる主桁、特に端部の腐食、伸縮装置からの漏水による支承の腐食などが生じています。当市内でも市街地を離れた北部の山間地域は降雪がかなりの量に達するため塩化カルシウムを多量散布します。その影響が少なからずあるように考えています。また、RC床版やRC主桁はひび割れや鉄筋露出、漏水、遊離石灰などが生じています。
橋梁経過年数および健全度別橋梁数
――PC橋でも健全度Ⅲの判定がありますが、どのような損傷が生じているのですか
秋山 PC部材に橋軸方向のひび割れ(0.4~1.0㍉程度)や支承腐食、下部工の損傷などが見られましたが、PC部鋼材および定着部の腐食は見られませんでした。
トンネルは100年経過したものが4箇所
H27年3月に長寿命化修繕計画を策定
――同様にトンネルについては
秋山 市では19のトンネルを管理しています。平成25年12月に開通した京北トンネルおよび27年3月に開通した二ノ瀬トンネルを除く17トンネルが建設後5年を経過しており、中には建設後100年以上を経過しているものも4箇所(厨子奥トンネル、御陵トンネル、粟田口トンネル、花山トンネル)あります。
日常パトロールにて異常の早期発見に努めており、良好な維持管理に努力するとともに、老朽化したトンネルにおいては、必要に応じて補修工事を行っています。25年度には当時の管理総数である17トンネルの本体点検の実施(打音検査及び触診検査を含む近接目視)を行い、13箇所のトンネルで漏水や浮き・剥離等の損傷を確認しました。とりわけ在来工法(矢板工法)で施工し、覆工背面に空洞の可能性がある3トンネル(栗尾、宝が池、黒田)に対しては、電磁波レーダー探査などを用いた空洞調査を実施し、その点検調査結果を基に27年3月にトンネル長寿命化修繕計画を策定しました。
京都市が所管するトンネル一覧
同計画では、トンネルごとに、把握された変状等の程度に基づき判定した健全度や、路線の重要度などを踏まえて、対策の必要な13のトンネルの修繕計画を示すとともに、今後は道路法施行規則改正に基づき、5年に1回の近接目視を伴う定期的な点検を実施していくこととしています。これまで、27年度には覆工背面に空洞がある3トンネルのうち、2トンネル(栗尾、宝が池)の補修に着手するとともに、京北、二ノ瀬両トンネルの初回定期点検を実施しました。28年度は、黒田トンネル、笠トンネルの補修に着手します。同時に29年度以降の補修に向け9トンネルの設計を実施する予定です。
――トンネルの修繕は規制が橋梁以上に困難です。特に車線数が少なく、幅員も狭いトンネルの修繕はありますか
秋山 清滝トンネルがあります。延長は500㍍ありますが1車線しかなく、常時でも上下線を交互に通行させています。というのは、同トンネルは元々単線の鉄道トンネル(太平洋戦争前まで運行していた愛宕山鉄道)として作られたものを道路に転用したものだからです。同トンネルは観光地である清滝に近く、昼間は往来も多いため、補修は夜間に行う必要があります。
耐震補強 対象92橋中54橋が完了予定
落橋防止装置設置は今年度4橋で実施
――橋梁の耐震補強の進捗状況は
秋山 都市防災上重要な橋梁(緊急輸送道路上の15㍍以上の橋梁および跨線・跨道橋(BOX、人道橋除く))のうち、平成8年以前の道路橋示方書で設計された橋梁を対象に行っています。対象92橋のうち平成23年度までに40橋、さらにここ5年間(平成28年度末)で14橋の耐震補強を完了させ、合計54橋の耐震補強が完了する予定です。平成28年度は4橋126基で落橋防止装置を施工する予定です。
具体的には、山端跨線橋(左京区)60基(PCケーブル)、九条跨線橋(東山区・南区)16基(PCケーブル)、西国街道高架橋(南区)8基(PCケーブル)、松尾橋(右京区・西京区)42基(PCケーブル)です。
山端跨線橋の橋脚補強/九条跨線橋
29年度末にはさらに2橋で耐震補強を完了させる見込みです。予定していた東海道新幹線を跨ぐ大石道跨線橋(人道橋)については廃橋する方針に転換しました。
――落橋防止装置の設置状況と、落橋防止装置用鋼製治具の溶接不良対策は
秋山 27年度までに27橋で設置を完了しており、今年度は松尾橋、西国街道高架橋、山端跨線橋、九条跨線橋で実施する予定です。
溶接不良は8橋で確認されています。(鋼製治具製作会社は)全て久富産業でした。各橋とも不良率が高く、概ね8~9割に達していました。全橋において施工業者に補修依頼済みで、1橋(京川橋)が完了しています。残り7橋(出口橋、筒江橋、御池大橋、四ノ宮高架橋、九条跨線橋、桃山高架橋、草原橋)は補修方法・時期について協議中です。全橋で受注者側負担による補修でまとまっています。
――熊本地震を受けて市で対応することはありますか。熊本県内では、橋台部付近での段差発生などにより車両走行ができなくなった橋梁が出たことも踏まえて、踏掛版の設置を行う事業者も出ていますが
秋山 耐震補強未対策の橋梁が38橋残っています。まず、それらの橋梁を中心に落橋防止装置の設置や橋脚補強等の耐震補強を進めていきます。