長寿命化 137橋を完了
今後2㍍以上15㍍未満の橋梁も計画に入れて見直し
――長寿命化修繕計画に基づいた対策の進捗状況について。また、具体的な損傷状況と補修内容についても、例を挙げて下さい
斉藤 平成21年度に橋長15㍍以上の橋梁を対象として、10カ年の長寿命化修繕計画を策定しました。224橋が対象であり、現在までに137橋を実施しています。平成27年度には道路法改正に合わせて、橋長2㍍以上の全橋を対象に長寿命化修繕計画を見直しています。大幅に対象が増えますので、今後は新しい基準による点検結果を反映し、優先順位をつけながら計画的な修繕を実施していきます。
――橋梁修繕の毎年の投資額は
斉藤 点検業務を含めて約20億円です。
――点検ですが、渓谷部など通常の手法では点検がしにくい分野で特殊高所技術や広 幅員対応の点検作業車を採用するケースが増えています。京都府ではそうした手法を採用したこと、今後する予定はありませんか
斉藤 橋梁点検等への活用を図るべく、今年度ドローンを導入する予定です。
上部工補修補強は今年度約30橋
床版防水は実施時期など未把握
――経年劣化や疲労などによる上部工補修・補強のここ3年の実績と2015年度施工済み及び施工予定数量、16年度の施工計画について
斉藤 上部工の補修・補強の実績としましては、13年度が約40橋、14年度が約20橋、15年度が約25橋を実施しております。16年度は約30橋を予定しています。主に橋面防水やジョイント交換など、水周りに起因する劣化やコンクリート橋のひび割れ、鋼橋の塗装塗替への対策を講じています。
――床版防水の施工状況(コンクリート床版を有する全橋梁に占める施工済み割合が分かれば)今後の施工方針、採用する工法などを教えていただけましたら幸いです
斉藤 床版防水が未設置の橋梁については、橋梁補修や舗装補修時に防水層を設けております。本府で床版防水をいつから施工しているかについては把握できていません。またコンクリート床版を有する全橋梁の床版防水の有無も把握しておりません。2015年度は5,000平方㍍で床版防水を行っています。
――舗装の打ち替えや床版防水の施工を行う際に気をつけなくてはいけないこととして、既設舗装を剥がす際の過切削の課題があります。特に古い年代に作られた厚さの薄い床版は、それが余寿命にダイレクトに効いてきますが。府としてはどのように考えていますか
斉藤 床版防水が必要となる前提には、点検等で床版そのものが損傷していることがほとんどです。よって、単に切削し、防水層を設置するという橋面だけを見た対策ではなく、既存の床版自体の健全性や、補強による橋全体への影響も踏まえた検討をしていく必要があると考えています。
――支承取り替えやジョイントの取り替えおよびノージョイント化について、今年度の施工予定箇所数と取り替える際の工法・種類を教えて下さい
斉藤 今年度のジョイント取り替えは5箇所を予定しており、内訳は埋設型3箇所、荷重支持型2箇所となっています。支承の取り替えについては、今年度予定している箇所はありません。
――塩害、ASRなどによる劣化の有無。劣化があればどのような形で出ているか(劣化部位やその劣化程度、面積)、その対策工法などを具体的な橋梁を挙げて答えて下さい
斉藤 京都府が管理するコンクリート橋で塩害やASRにより対策が必要な橋梁は特にありません。
綾部陸橋で塗替え
基本的にはブラスト 有害物検出されれば塗膜剥離剤と併用
――2015年度の鋼橋塗り替え実績(橋数と面積)と、2016年度の鋼橋塗り替え予定は。また塗り替えの際の全体的・部分的な用途でもいいので溶射など新しい重防食の採用についても答えて下さい
斉藤 昨年度は4橋12,500平方㍍で塗り替えを実施しました。全て3種ケレンで施工しています。実際に1種ケレンの必要がある場合は、塗膜剥離剤で有害塗膜を剥がした上でブラストを行うといった手法を検討していくことになります。ただし、ブラストについては湿式環境で無いことから、できるだけ避けており、事実上1種ケレンによる鋼橋の塗替えが止まっている状況です。
今年度は綾部陸橋の西側5径間部分について約1,400平方㍍を塗り替え予定です。
また、塗装の塗り替えは、その都度、足場等の設置が必要になるなど、大規模な橋梁ではその費用も非常に大きいことから、新設時に溶射を採用することでライフサイクルコストを下げる方法も検討しています。
綾部陸橋
――耐候性鋼材を採用した橋梁で錆による劣化・劣化損傷が報告されている事例が出てきていますが、京都府では採用事例が何例あり、現状どのような健全度を示しているのか教えて下さい
斉藤 本府では、35橋について耐候性鋼材を採用しております。この中ですぐに修繕しなくてはいけない、という橋梁はありません。
耐候性鋼材については、通常の点検に加えて、耐候性鋼材を点検する際のポイントを取りまとめた耐候性鋼材点検マニュアル(案)を策定し、通常の橋よりも厳しめの健全度判定をして、早期に対策を実施する方針としています。また、全体的には健全でも、水が溜まりやすい桁端部には塗装をすることで、防食対策を施している事例もあります。
法面・自然斜面対策は1次緊急輸送道路を完了
2次緊急輸送道路は残り50箇所
――全国的に異常気象などによる土砂災害が相次いでいますが、県として道路面の斜面や古い法面などをどのように補強・補修して道路を守っていくのか具体的な事例や計画がございましたら教えて下さい
千阪 京都府で平成8、9年に実施した防災総点検の法面・自然斜面の結果は、要対策箇所が691箇所、経過観測が829箇所、対策不要箇所が860箇所でした。
要対策箇所のうち、1次、2次緊急輸送道路や孤立集落を招きかねない道路に面している自然斜面や法面について優先的に対策を実施しています。平成27年度末の対策状況は1次緊急輸送道路上については全数を完了しており、2次緊急輸送道路については152箇所中102箇所の対策を完了しています。(異常気象時の通行規制区間内の防災対策と行き止まり道路の防災対策という考え方で行っている)孤立集落を解消するための対策については142箇所中69箇所が対策済みで、その他は357箇所中116箇所を対策済みです。
また、平成18年3月に策定した「京都府道路施設維持管理基本計画(案)」に基づいて、平成7、8年の総点検をベースにし、総点検でカルテ化した箇所や、要対策でありながら未だ対策できていない個所は3年に1回、その他の箇所は5年に1回、日常の道路パトロールや定期的な職員点検により法面の状態を把握し、異状が見つかった場合は、コンサルタントに委託してさらに詳細な調査を行い、優先度とは別に早急な対策を行っています。
特に以前モルタル吹付けした箇所についてはひび割れなどが生じているケースも少なからずあるため、注意して点検しています。
――法面についても橋梁やトンネルと同様に長寿命化修繕計画を作る考えはありませんか
千阪 必要性があると感じています。現状について改めて把握した上で、点検サイクル、補修計画も含めて対応していく必要があろうかと思います。法面については洪水など自然災害に大きく左右されることから中々むずかしいですが、道路だけでなく農林関係とも協力して、具体的には各広域振興局の中で情報を共有して対策をしていくことができれば、と考えています。
京都技術サポートセンターを設立
市町村の技術支援や点検業務の一括発注を担う
――新技術や、コスト縮減策または県独自の新技術・新材料などの活用について
斉藤 (一財)京都技術サポートセンターを28年5月に設立しました。同センターは府内市町村の技術支援や、点検業務の一括発注によるコスト縮減を目的に設立されたものです。
――ありがとうございました