京都府は南北方向に繋がる高速道路ネットワークの整備を悲願としていたが、その実現がいよいよ近づいてきている。その話題を中心に、ほか高速道路アクセス道路や架け替え橋、橋梁耐震補強の進捗、橋梁やトンネル、法面の長寿命化修繕計画などの話題を中心に京都府建設交通部の斉藤修道路建設課長と千阪貞昭道路管理課長に詳細を聞いた(井手迫瑞樹)。
道路改良率は全国41位の63.1%
中北部を中心に改良の遅れ目立つ
――京都府内の地勢的特徴と道路網の現状から教えてください
斉藤理事(道路建設課長事務取扱) 京都府は南北両端の長さは120㌔、東西も107㌔におよび、面積は4,612平方㌔に達します。北部の日本海側(最北は丹後半島(京丹後市))は変化に富むリアス式海岸が続き、天然の良港や景勝地を形成、中部の大部分は丹波高原と呼ばれる山地で、その中を流れる桂川・由良川の流域に亀岡や福知山の盆地をはじめとした小盆地が点在しています。
南部は桂川・宇治川・木津川の合流点を要にして山城盆地が広がります(最南は三重、奈良、滋賀3県と境を接する南山城村)。府内には標高1,000㍍を超える高山はなく、最高峰は滋賀県境にある標高972㍍の皆子山です。河川は中央の丹波山地を分水嶺として北流して日本海に注ぐ由良川水系と、南流して南部の3河川を集め大阪湾に注ぐ淀川水系などに分けられます。人口は約260万人で全国13番目に位置します。人口の半分以上を政令指定都市である京都市が占めています。
京都府では257路線、2,154.4㌔の道路を管理しています。道路改良率は63.1%と全国平均を下回っています(都道府県別で41番目)。京都市街および周辺を見ると相当に進んでいると見られがちですが、実際は中北部で遅れています。
また、南北を繋ぐ高速道路の全通は京都府民の悲願です。そのため久御山JCTから宮津市内までを京都縦貫自動車道として34年の歳月をかけ整備を進めてきましたが、昨年度丹波IC~京丹波わちICまでの間がつながり宮津天橋立IC~丹波IC間約100㌔が全線開通しました。漸く京都市内から北部に至る高速道路が実現したと言えます。
宮津から北につきましては山陰近畿自動車道ということで、京都府、兵庫県、鳥取県が一体となって日本海側の高速道路整備を進めています。宮津IC~与謝天橋立ICまでは供用済みで、与謝天橋立ICから京丹後大宮ICまでの間も10月30日に供用しました。これにより京丹後市内に初めて高速道路が導入されたことになります。
山陰近畿自動車道概要図
城陽から南側は京奈和自動車道として既に供用されております。同ICにリンクする野田川大宮道路および新名神(城陽~八幡間)が今年度開通する予定で、これが開通すれば南の木津川市から京丹後市までが140㌔の高速道路で繋がるということになります。
――高速道路の開通による効果は
斉藤 昨年度は京丹波わちIC~丹波IC間が開通しましたが、その効果により府北部への観光客が約3割増加しています。また、京丹波わちIC以北の既供用区間の交通量が約7割増加するという劇的な効果が生じています。また、高速道路の整備を前提とした工場立地も進んでいます。
野田川大宮道路は10月30日に供用
山手幹線は山田池橋を上部工架設中
――今年度の主要事業をまず、国道312号野田川大宮道路事業からお願いします
斉藤 同事業は山陰近畿自動車道の一部を成す事業で、宮津市須津~京丹後市大宮町森本間延長4.3㌔を10月30日に供用しました。同道路は京都府の最北部に位置する京丹後市と南部地域を結ぶ重要な道路であるとともに、現国道312号で冬季の交通困難箇所になっている水戸谷峠などをバイパスすることができ、交通安全にも寄与します。
野田川高架橋
構造物は土工が1,616㍍、橋梁が720㍍、トンネルが1,964㍍です。構造物としては、野田川高架橋(橋長589㍍、有効幅員9.75㍍、鋼6径間連続少数鈑桁+鋼5径間連続開断面箱桁)、水戸谷トンネル(1,964㍍)があります。特に野田川高架橋は野田川、国道176号、(主)宮津養父線、京都丹後鉄道を跨ぐ高架橋で架設は慎重に行いました。防食方法は塗装を採用しています。水戸谷トンネルの掘削方法はNATMです。府の委託により、京都府道路公社が建設し、その後の管理も行います。
――府道八幡インター線および都市計画道内里高野道線は
斉藤 京田辺市の松井地内の第二京阪道路から八幡市美濃山地内で山手幹線と交差し、主要地方道八幡木津線、第二京阪道路と国道1号をネットワークする極めて重要な道路です。新名神高速道路の八幡ICに接続するアクセス道路でもあり、新名神高速道路(城陽~八幡)と併せて整備することで、府南部の東西軸の強化と高速道路アクセスの確保を図ります。
構造物は橋梁が2本のみであとは土工区間となっています。
一部区間を3月3日に部分供用し、残る区間についても平成28年度内の供用を目標に、現在は新名神を跨ぐ(仮)美濃山跨道橋の上部工、舗装工などを施工中です。
(仮)美濃山跨道橋
――主要地方道八幡木津線(都市計画道山手幹線)は
斉藤 同線は、京都府南部に位置する八幡市と木津川市を結ぶ南北幹線道路です。本事業はそのうち都市計画道路山手幹線の未供用区間である京田辺市宮津から精華町下狛地内に至る延長2.5㌔について八幡木津線のバイパス道路整備を図るものであり、京奈和自動車道精華下狛ICへのアクセス道路となり、木津川左岸地域の活性化に大きく寄与することが期待される道路です。また、関西文化学術研究都市内を横断する路線であります。
(仮)山田池橋は上部工へ
平成18年度に事業着手後、平成25年8月に1.1㌔部分供用し、残る1.4㌔区間について工事を進めており、今年度は農業用のため池である山田池を渡る(仮)山田池橋(147㍍、鋼4径間連続少数鈑桁橋・合成床版)の桁製作などを進めています。今年度中には架設を始める予定です。また、隣接する(仮)煤谷川橋(プレビーム合成桁)の上部工も進めます。
奥山田BPは1号橋の下部工を施工中
法貴BPは6橋梁500㍍を想定
――国道307号奥山田バイパスは
斉藤 同バイパスは宇治田原町の奥山田付近に建設を進めているバイパス事業です。平成16年度に完了した裏白バイパスに次いで着手した事業で、現道の幅員狭小、線形不良区間に対応するものです。平成17年度から事業着手し、大杉トンネル(137㍍)、奥山田2号橋(163㍍)は既に建設を完了しています。現在は奥山田1号橋(PC2径間連続ラーメン中空床版橋)の下部工を施工中です。
事業全体の進捗率は約8割に達しており、できるだけ早く供用したいと考えています。
――国道423号法貴(ほうき)バイパスは
斉藤 国道423号の亀岡市西別院町から曽我部町に至る区間は、勾配がきついため連続するヘアピンカーブで距離を稼いでいる非常に悪い道路線形です。加えて、第1次緊急輸送道路に指定されているにもかかわらず異常気象時の事前通行規制区間であるため、車両の安全で円滑な通行に支障をきたしています。そのため延長を稼いで勾配を緩くし、幅員も広くした3.6㌔のバイパス道路を建設するものです。平成25年度から事業着手しており、今年度は用地測量を実施中です。構造物は5つの橋梁で延長は総計400㍍程度になる予定です。
――国道482号丹後弥栄(やさか)道路は
斉藤 国道482号のうち京丹後市弥栄町国久から同町和田野までの現道は、線形不良かつ幅員狭小で歩道も設置されておらず、二級河川竹野川増水時は路面冠水が発生する箇所があるなど、諸交通の円滑で安全・安心な通行に支障を来す状況です。そのため2車線のバイパスを整備するもので、10月23日に供用しました。