道路構造物ジャーナルNET

2016年我が社の経営戦略 大手ファブ トップインタビュー ①川田工業

年明けからの大型再開発物件に期待

川田工業株式会社
代表取締役社長

川田 忠裕

公開日:2016.09.20

 当NETの姉妹メディアである「週刊 鋼構造ジャーナル」では、毎年、橋梁を主事業の一つと位置付ける鋼構造ファブリケーター各社のトップに経営戦略を訪ねるインタビュー記事を掲載している。その内容について、数回に分けて転載していく。20日は、川田工業の川田忠裕社長と駒井ハルテックの田中進社長の記事を掲載する。

 ――まず、昨年度の状況についてお伺いします
 川田 鋼構造事業では、 総合的に受注は伸びたが、 完工高が伸びなかった。受注は、建築鉄骨ならびに橋梁も大型物件が多く、なかでも橋梁では首都高速道路 の羽田線の大規模改修、NEXCO関連の大型物件を 受注。特に、首都高羽田線の大規模改修事業は10年にも及ぶ長期にわたる施工案件のため、すぐに工場稼働や完工にはつながらなかっ た。鉄構も計画の見直しなどの影響により、完工予定のものが今年度に持ち越しとなったことなどが要因となり、完工が伸びなかった。
 収益面では鉄骨受注単価は適正に近づいてきて、原価低減と設計変更獲得に取り組んだことなどで鋼構造事業では利益が改善された。
 ――今年度の状況は
 川田 鉄構分野は、昨年度と同程度以上をめざす。
 建築鉄骨に関しては渋谷、 大手町、虎ノ門などを含め、 都心の大型再開発物件はある。昨年あたりから期待を していたが、思っていた程には出件されず、情報だけが先行するという『肩透か し』状態となっている。現在も出件数は伸びず、足元は、H・Mグレードも含め、 待ちの状態ともいえる。よ うやく、年末、年明け以降からは山が高くなり、1年以上は高水準の状態が続くとみている。本当のピークは来年夏から始まるとみて いる。
 ――この先の需要は
 川田 東京オリンピック ・パラリンピック競技施設の設計業務が今年12月の着工に向けて急ピッチで進められていると聞く。来年か ら建設工事が一斉に始まると思われる。五輪開催前に 完成させることが大前提となる。19年までは多忙を極めると予測してい る。
 ある程度の先まで見えている市場はありがたいと感 じているが、ただ、納期は決まっている。期間的な余裕を持って取り組みたかったというのが本音だ。
 ――橋梁分野は
 川田 昨年度の鋼橋の発注量は約23万5000㌧と、対前年度比0.6%増とな ったが、近年は25万㌧を割 る傾向にある中、昨年度も トップクラスの受注量を確保した。今年度の発注量も大幅増は見込めないが、引き続きトップクラスの受注量を目指していく。ただ、4月に発生した他社現場での橋桁落下事故の影響で、当社の現場もスト ップしたことにより、人員計画や機材運用の再考が必要となり、工程などへの影響が懸念される。 納期厳守は優先課題の1つだが、兎にも角にも安全第一で工事を進めたい。当社ではどの現場でも事故を起こさないように、より一層安全に配慮することを徹底 している。


新北上大橋災害復旧工事(その2)

横浜港臨港道路南本牧ふ頭本牧線(Ⅵ工区)橋梁上部工事

 ――設備投資については
 川田 栃木工場ではこれから2〜3年、大きな山に 対応するため、ボ ックスラインの強化を図る。あとは、富山工場などで経年劣化による設備の更新を実施する程度。
 ――その他の分野の取り組みは
 川田 システム建築 をメーン事業として取り組んでいる建築事業は好調。大型物流倉庫 などが大きく寄与した。 利益を確保できる事業まで成長した。リピーターが多く、過去にないレベルの事業規模と なっている。今年度も同様の状態が続くと見 込む。
 環境関連では、緑化シス テムが海外で注目されてお り、特に香港で実績を伸ば している。他の国も視野に入れて営業展開を図る。さ らに、ハイブリッド型の地中熱利用やリモートモニタ リング装置など、まだ実績は少ないが、地道に取り組 んでいる。
 昨年10月には川田工業の ロボット事業を、開発から製造まできるよう、カワダロボティクスに事業継承した。国内製造業の活性化で追い風が吹いているが、円高は懸念要素。少子高齢化対策に寄与できる、必要な事業と感じている。グループとして推し進めていく。


六本木三丁目東地区第一種市街地再開発事業

 また、NEDOの「インフ ラ維持管理・更新等の社会課題対応システム開発プロ ジェクト」の「インフラ維持管理用ロボット技術・非破壊検査装置開発」において川田テクノロジーズが 「マルチコプタを利用した橋梁点検システムの研究開発」に携わり、昨年11月に は国土交通省による現場検証に参加している。本格実用化までにはまだ、時間がかかるが、橋梁の点検・補修はこれからの市場拡大が見込まれるため、グループ内にソフトウェアメーカーがある強みを生かし、今後とも注力していく。 (聞き手・佐藤岳彦、文中 敬称略)

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