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架設後50年以上の橋梁は1100橋、トンネルも5割

福岡県 5017の橋梁、31本のトンネルを管理

福岡県
県土整備部
道路維持課長

小路 智

公開日:2016.09.07

 福岡県は現在5,017の橋梁と31本のトンネルを管理している。架設後50年を経過した橋梁は全体の3割を占めており、損傷状況も経年劣化から、塩害、ASRによるものと様々だ。またPC桁でもひび割れが生じている橋梁もあり管理状況は年々シビアになっている状況にある。また、平成24年にはうきは市や朝倉市を豪雨水害が襲うなど、法面や自然斜面の管理についても深く意を砕かなくてはいけない状況にある。その詳細について小路智道路維持課長に聞いた。(井手迫瑞樹)

 ――現在の管内橋梁の内訳は?
 小路課長 本県では、5,017橋の橋梁を管理しています。内訳はRC橋が一番多く約60%、PC橋が約28%、鋼橋が約3%、その他が約9%となっています。
 架設年次では1960年代から1980年代に架設された橋梁が全体の約6割を占めており、架設後50年以上の橋梁は約1100橋と全体の約3割になり、何らかの対策も予想されます。
 橋長別にいうと、15㍍以上が1,268橋、15㍍未満(ボックスカルバート含む)が3,749橋となっています。100㍍以上の長大橋は、193橋あります。
 路線別では、県管理国道が約16%、主要地方道が約39%、一般県道が約45%となっています。


橋梁の各種別割合

 ――同様にトンネルは
 小路 31本のトンネルを管理しており、工法別では、矢板工法が68%、NATM工法が22%、その他が10%です。
 建設本数の推移では、完成後50年以上が経過したトンネルが最も多く約5割を占めております。
 延長別では50㍍未満が6本、50㍍以上200㍍未満が最も多く15本、200㍍以上500㍍未満が5本、500㍍以上が5本となっています。路線別では、県管理国道が42%、主要地方道が35%、一般県道が23%となっています。


トンネルの各種別割合

損傷割合 鋼橋が3割を占める 劣化部位は主桁が最多
 要因は鋼橋が主桁の腐食 PCで主桁のひび割れも

 ――点検を進めてみての各管内路線の劣化状況について、また橋種(鋼、PC、RC)、部位(桁、床版、橋脚、地覆、高欄など)ごとの損傷傾向と理由について
 小路 橋梁については、平成20年度より近接目視と遠望目視を併用して行っておりました。平成26年度からは、全て近接目視で行い現在2~3巡目となっております。昨年度までに、判定区分がⅣと診断された橋梁はありません。
 橋損傷の傾向としては、橋種別に見ると鋼橋の損傷割合が最も高く(約30%)、次いでPC橋(約23%)、RC橋(約15%)となっています。
 部材毎の劣化傾向(全橋梁の部材の総個所数比)では、主桁が最も損傷の割合が高く(1.7%)、次いで下部工(0.6%)、床版(0.5%)、支承(0.1%)となっています。
 各橋種別の損傷の傾向としては、鋼橋では主桁の腐食(64%)が最も多く、次いで床版の剥離・鉄筋露出(16%)が多く生じており、RC橋では、主桁・床版の剥離・鉄筋露出(約80%)が比較的多く生じています。
 また、PC橋では、主桁のひび割れ・漏水・遊離石灰(約50%)が多く生じています。


プレテンPC橋に生じた主桁のひび割れ

プレテンPC橋に生じた主桁のひび割れ②

ポステンPC橋に生じた主桁のひび割れ

ポステンPC橋に生じた主桁のひび割れ②

 ――PC橋の主桁でひび割れと言うのは厄介ですね
 小路 はい。詳細は確認している所です。

トンネル NATMでも損傷箇所あり

 ――同様にトンネルについては
 小路 過年度の点検により矢板工法では、剥離・ひび割れ・うきが多く生じており、NATM工法でもひび割れ・うき・施工目地からの漏水が、比較的多く生じています。
 ――素掘り工法で建設したトンネルはありますか
 小路 大入隧道(京築土木事務所管内(大分との県境付近)、延長42㍍、幅員2.5㍍、1921年建設)があります。素掘りの吹き付けコンクリートで供用しています。

最優先対策橋180橋 3プロレベルで今年度全橋完了
 新田大橋など長大橋の耐震補強も進捗

 ――耐震補強の進捗状況について
 小路 本県では、災害時に円滑な救急・救護活動や緊急物資の輸送、復旧活動の支援等において、重要な役割を果たす緊急輸送道路に架かる橋梁(2,007橋)のうち、昭和55年よりも古い基準で架設された15㍍以上の耐震対策が必要と判断している橋梁について、まずは3プロレベルでの耐震対策を重点的に進めております。
 対象橋梁180橋のうち、これまでに178橋の対策が完了しており、残る2橋についても今年度に対策を完了させる予定です。
 また、緊急輸送道路以外で耐震対策が必要と判断している橋梁(54橋)についても、順次対策を実施しています。今年度は、橋脚の補強を新田大橋(炭素繊維シート巻き立て)、矢野竹橋(RC巻き立て)、土穴跨線橋(RC巻き立て)、またい大橋(RC巻き立て)、鐘ヶ江大橋(炭素繊維シート巻き立て)の5橋で行うほか、勘六橋(橋長214㍍、PC5径間連続場所打ち箱桁橋)、鷺田橋(橋長35.6㍍、ポストテンション方式PC単純中空床版橋)を架け替えにより対応します。


新田大橋

 ――落橋防止装置の溶接不正・不良問題について
 小路 昨年報告がなされた国の有識者委員会を鑑みて、本県では過去10年以内に「完全溶け込み溶接製品」を使用した橋梁を対象に調査を進めてきました。
 久富産業(株)をはじめとする不正行為をおこなった溶接会社の製品を使用した橋梁はありませんでした。しかし、技術不足や溶接記号の確認不足による溶接の不具合が確認されている113社の製品を使用した橋梁があることは把握しています。
 この不具合の疑いのある製品については元請会社に対して確認調査を行い、品質が確認出来ないものについては、自主検査を依頼しており、既に検査を実施中のものもあります。
 また、過去10年より前に施工した橋梁については、定期点検時に非破壊検査を実施することとしております。現在、緊急の対策が必要と思われる橋梁は見つかっていません。但し10年間は自主点検を行ってもらうことや、対策が必要な箇所が見つかった場合に、対処していただくことは検討すべきかも知れません。
 今年度の落橋防止装置の設置予定はありません。
 ――瑕疵担保を2年と考えるのか重大瑕疵と考えて10年と見るのか
 小路 契約でいえば重大瑕疵に当たる10年と考えるべきであると思います。ただ幸いなことに本県では重大な損傷は見つかっていません。

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