筑紫野古賀線4車化 渋滞対策
新大間池橋は来年3月完成へ 大隈高架橋も進捗
――事業の概要は
野瀬 県道筑紫野古賀線は、県を南北に縦断する九州縦貫道路や国道3号と並走し、交通量が多い幹線道路ですが、渋滞や混雑が著しいため、これらの解消・緩和を目的に、南は筑紫野市から北は古賀市に至る延長約14㌔の4車化に取り組んでいます。
そのうち、粕屋町に位置する、主要渋滞ポイント「門松交差点」の渋滞対策として施工中の須恵・粕屋工区は、延長1.6㌔のバイパスで、ため池を跨ぎ、交差道路を立体化するため、延長の半分以上にあたる851㍍が橋梁となっています。
――構造物は
野瀬 新大間池橋(仮称)は、農業用ため池を渡る、橋長175㍍、幅員15.25㍍の3径間連続PC箱桁橋です。架設工法は、上空に高圧線が架空されていること、ため池の貯水阻害を最小限にする必要があることから押出架設工法を採用しています。下部工は、締め切りが不要なPCウエル工法を用いています。現在、上部工の架設が進んでおり、橋梁本体は平成29年3月の完成を目標に工事を進めています。
新大間池橋の現況写真
また、大隈高架橋(仮称)は、橋長676㍍、幅員15.25㍍の橋梁で、下部工は26基中21基が完成、上部工は連結プレテンT桁が基本ですが、河川及び道路を跨ぐ箇所は連結ポステンT桁で構成しており、676㍍のうち319㍍が完成しています。残る箇所につきましても引き続き発注及び工事を進めていきます。
――道路やJR篠栗線を跨ぐ立体交差箇所について剥落防止などの対策は
野瀬 設計では特に考慮していませんでしたが、効果や実績を見ながら今後検討します。
国道442号日向神改良Ⅱ期 延長300㍍の線形改良
――事業の概要は
野瀬 一般国道442号は、大分県、熊本県、福岡県の3県にまたがる広域的な道路ですが、そのうち、八女市矢部村日向神ダム周辺は、山とダム湖に挟まれており、急カーブが連続し、視距が確保できていないため通行に支障をきたしています。このため、延長300㍍の線形改良を施工中です。
――構造物は
野瀬 構造物では、橋長149.5㍍、幅員7.5㍍の日向神4号橋(仮称)があります。上部工は3径間連続PCラーメン箱桁橋で、架設工法は片持架設工法です。
現在、下部工を施工中ですが、下部工基礎は、ダム湖内に設置する上、支持層付近に岩層があり、クラムシェル掘削ができず、発破対応になるため、無人化掘削によるニューマチックケーソン基礎を採用しています。
上部工の線形は縦横断とも条件が厳しく、そうした条件に配慮した施工が必要になってくると思います。
日向神4号橋の完成時イメージパース
現況写真
新北九州空港線 空港・ICアクセス強化
今年度事業に着手 測量や設計を進める
――事業の概要は
野瀬 24時間運航可能な海上空港である北九州空港と今年4月に県内において全線開通した東九州自動車道とを連絡する県道新北九州空港線は、6車線の県道門司行橋線との平面交差点において、渋滞が発生するなど、円滑な走行に支障をきたす唯一の区間となっています。このため、近接した2つの交差点を立体交差化し、空港アクセスや利便性向上を図ります。
――これは新北九州空港連絡橋の接続部から高架化するということですか
野瀬 今回は交差点およびそのアプローチ部分の立体化です。2つの交差点を1つの高架橋で跨ぐため、橋長は相応の長さになります。
――進捗状況は
野瀬 今年の4月に地域高規格道路の補助採択を受け事業に着手しました。今年度は測量や設計を行います。
八女香春(かわら)線合瀬耳納(おうぜみのう)トンネル(仮称)を掘削中
県道トンネルとしては最長の2,616㍍
――事業の概要は
野瀬 県南、筑後地方の奥八女と呼ばれる地域は、周囲を山々に囲まれているがゆえに豊かな自然に恵まれ、それを生かした観光資源も豊富ですが、その代わりとして峠越えの交通の難所が多くアクセス性が非常に悪いところです。
事業を行っている八女市星野村とうきは市の境にある耳納連山の合瀬耳納峠も、地形、自然条件が厳しいところで、急カーブが多く、雨季には土砂の崩落、また、冬季には、積雪・凍結による通行規制が度々生じています。
それを解消し、災害に強い道路を構築するため、トンネルを含む、全体延長4,600㍍のバイパス建設を行っています。
また、この事業により、合瀬耳納峠が障害となっている八女市星野村とうきは市の地域間交流が容易になるとともに、奥八女地方から最も近い高速ICである大分自動車道・杷木ICからのアクセス性が格段に向上し、福岡都市圏をはじめとした都市部からの観光周遊ルート(朝倉~うきは~奥八女)が確立するなど、地域の振興発展に資する道路整備として地元から非常に期待されています。
――トンネルの概要、進捗状況は
野瀬 県が管理する県道トンネルとしては最長の延長2,616㍍で、NATM工法にて掘り進めています。
工事は2工区に分割し、八女市、うきは市両側から行っており、平成26年7月に掘削に着手、本年6月までに八女市側約1,100㍍、うきは市側約1,200㍍を掘進したところです。
来年8月にトンネル工事が完了予定で、その後、舗装工事、トンネル照明施設工事、非常用施設工事等を行い、できるかぎり早期の供用を目指しています。
合瀬耳納(おうぜみのう)トンネル(仮称)の進捗状況
土質や湧水などの対策に苦慮
AGFや水抜きボーリングで対応
――掘削にあたって土質や湧水等の課題は
野瀬 峠より八女市側の上層部に凝灰角礫岩が分布する以外は、砂質片岩と泥質片岩の互層が広く分布しています。当初の想定よりも非常に土質が悪く、事前調査で捕捉できなかった断層破砕帯が数多く出現し、その影響により亀裂が発達した地層が広く分布しています。全体的に湧水量も多く、特に泥質片岩層で風化が進み、粘土のように脆く土砂化した地層も度々出現しており、AGF工法を多用しながら掘り進めています。
また、湧水に対しては、切羽の安定性の確保及び作業環境の改善を図るために水抜きボーリングを適宜実施していますが、湧水の絶対量の多さに対し、現場は非常に苦慮しながら施工を行っています。
――これまでご紹介いただいた構造物以外に計画中、設計中の橋梁はありませんか
野瀬 筑後川に架かる橋梁は、老朽化が進んでおり順次架け替えていく必要があります。両筑橋(昭和31年3月架設、橋長382.4㍍、幅員6㍍、鋼連続ゲルバー鈑桁)などがそうです。架け替え時期までは確定していません。
――建設分野で用いている県独自の技術・材料について
野瀬 県内の企業等が開発した新技術・新工法を積極的に活用する制度、「福岡県新技術・新工法ライブラリー」があります。技術や工法が実験等の方法で確認されていること、従来技術と比較して経済性、工期、品質など総合的に優位であることなどの要件を満たす新技術・新工法はデータベースに登録され、基準適合情報として登録された工法は、設計段階において比較検討の対象としています。補強土壁工などで採用実績があります。
また、アスファルト混合物、路盤材、改良土など17品目について「福岡県認定リサイクル製品」を定め、リサイクル製品の積極的な利用促進を図っています。
――ありがとうございました