道路構造物ジャーナルNET

橋梁端部の劣化、車両通過時の振動・騒音を抑制、地震時の段差も抑制

橋梁プロテクト技術研究会 設計・施工要領を更新

橋梁プロテクト技術研究会
会長

國川 正勝

公開日:2016.05.18

 橋梁プロテクト技術研究会は、昨年12月に橋梁プロテクト技術の設計・施工要領を更新した。同技術は橋梁の長寿命化と耐震性能の向上を目的とした技術で、床版端部と橋台パラペットを超速硬コンクリートと、鉄筋代わりのCFRPグリッドで結合するとともに、同材料により橋台背面の盛土部までアプローチ板を伸ばすことも可能である。①伸縮装置を無くすことで、(伸縮装置の)止水機能劣化によって生じる漏水からの床版端部や橋台パラペット、支承への損傷を防ぐ、②アプローチ板を伸ばすことで地震などによって生じる段差を抑制できる、③伸縮装置の解消により振動・騒音を抑制する、などの効果が期待できる。同研究会の國川正勝会長に要領(案)作成の狙いを聞いた。(井手迫瑞樹)

3つのプロテクトを明確化
 伸縮装置部および背面盛土部を素早く復旧可能

 ――要領(案)作成の狙いと技術の特徴について
 國川会長 この技術の対象は小規模橋梁の伸縮装置、橋台背面の盛土、そして床版上面の3点に絞っています。この要領作成以前はこの3つが上手く整理されておらず混在した状態でした。ここ2年議論し、整理していくことによって何をプロテクト(保護)しているのかを明確に分かりやすく表現した成果がこの要領(案)であると言えます。また今年度末には今までその都度作成していた積算資料と構造計算について標準的なものを作成します。


橋梁プロテクト技術の構成と同技術の3要素

橋面プロテクトの実施例/伸縮プロテクトの施工例

 熊本の地震でもありましたが、伸縮装置部や背面盛土部は、橋梁の中で一番損傷し易い部位と言えます。今回作成した要領(案)をひな形にして、地場の施工業者が超速硬コンクリートや炭素繊維補強プラスチック格子筋(CFRPグリッド)を活用し、特殊な材料に慣れてほしいと考えています。CFRPグリッドは軽くて運びやすく、超速硬コンクリートは素早く施工できるため、施工に伴う規制の負担は少なく済みます。また、今回の地震のように損傷した個所でも素早く復旧することが可能です。

床版間あるいは床版端部と橋台間に大きな離隔は生じない
 アプローチ版設置個所は段差を抑制

 耐震性に関して申しますと、鉄筋の代わりに使用しているCFRPグリッドは、鉄の10倍程度の引張耐久性を有しているため、地震時の水平力に対しても有効に機能します。床版と橋台パラペット間の結合は無機系のずれ止めアンカー(クイックカプセル、セメフォースアンカー)を使用しており、これによりせん断力に対して抵抗します。なお床版や橋台パラペットとの界面においてはエポキシ系のプライマー(KSボンド)を塗布し、既存コンクリートと超速硬コンクリート間の接着力を強化しています。こうした性能を付与することによって落橋防止や桁の横ズレ防止に寄与できます。レベル2地震時にも壊れはしますが、ひび割れなどが生じるだけで、床版間あるいは床版端部と橋台間の大きな離隔は生じず、背面盛土が陥没してもアプローチ版がある箇所(1.5~2㍍)については段差が抑制されるため、走行に大きな支障をきたさない効果が見込まれます。(施工手順は左図)

対象スパンは25㍍以下
 漏水の浸入を抑制し、劣化を防ぐ

 ――それは大きい効果ですね。対象スパンはどのくらいを想定していますか
 國川 現行の道路橋示方書下部工編において40㍍以下の桁長であればジョイントレスも可能と読み取れます。ただ、40㍍もの橋梁を本技術の対象にするにはスパンが長すぎます。25㍍以下なら橋梁プロテクト技術で結合できる目途はついています。
 ――伸縮装置をなくすことで常時の劣化も抑制できますね
 國川 伸縮装置がなくなれば、止水性能の劣化による漏水の浸入とりわけ凍結防止剤を含んだ漏水の浸入を阻止でき、桁端部や床版端部、橋台上面、支承周りおよび支承本体などの損傷を抑制できます。橋梁を30年以上延命化させることが可能であると考えています。また床版間のジョイントについても結合させることで橋脚上面部の同様の損傷を抑制することができます。
 なお、床版補強については上面増厚と同様に超速硬コンクリートとCFRPグリッドを用いる(既設と増厚層の界面には接着材を塗布)ため、従来のコンクリートと鉄筋による増厚に比べて迅速に補強できます。また、補強後もCFRPを用いているため万一床版防水が損傷し、増厚層に生じたひび割れを通じて水が浸入しても鉄筋のような腐食膨張を引き起こしません。

超速硬コンクリートの良さを広めたい

 ――今後、橋梁プロテクト技術の設計施工要領(案)をどのように広めていきますか
 國川 発注者に対しては、現実的に当技術の情報が届いていないように感じています。そのためパンフレットを数多く配布していきたいと考えています。同様に建設コンサルタントに対しても要領を配布することで周知していきたいと考えています。


施工実績

 もう1つ、狙いがあります。地震などの災害時には生コン工場が出荷できないことがあります。その時には移動できるモービル車を使って供給できる超速硬コンクリートが非常に便利ですが、その技術について地方では知っている人が少ないと感じています。橋梁プロテクト技術を知ってもらうことで、超速硬コンクリートが震災時や交通規制を短くしたい時に検討できる材料であることも広めたいと考えています。
 ――ありがとうございました

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