道路構造物ジャーナルNET

継手部を工夫することで床版を合理的な厚さに

PC床版継手工法研究会設立の狙いを聞く

PC床版継手工法研究会
副会長
(オリエンタル白石 取締役専務執行役員土木本部長)

大野 達也

公開日:2016.05.19

 PC橋梁専業社6社を含む9社(オリエンタル白石、三井住友建設、ピーエス三菱、日本ピーエス、富士ピー・エス、ドーピー建設工業、熊谷組、横河ブリッジ、ショーボンド建設)は、2月17日、PC床版継手工法研究会(会長=阪田憲次・岡山大学名誉教授)を設立した。NEXCO3社をはじめとした大規模更新に伴う床版取替需要や、国・自治体などの橋梁老朽化に伴う需要に対応するもの。とりわけ床版取替に際しては、その厚さが継手部の構造厚さによって決まってしまう課題があったが、現在専業社各社が開発している継手構造は所定の耐久性能を有しつつも、版厚を薄くでき、ひいてはプレキャストPC床版全体の版厚を薄くできることから、コスト縮減にも寄与できる。研究会設立の狙いについて、副会長の大野達也氏(オリエンタル白石取締役専務執行役員土木本部長)に聞いた。(井手迫瑞樹)

 ――まず協会設立の背景と目的から
 大野副会長 床版の取替需要は以前からありましたが、2015年度からのNEXCO3社による大規模更新需要は15年で224㌔、事業費にして床版取替だけで1.6兆円にのぼる規模を有します。また、高速道路だけでなく、国や自治体の橋梁も今後更新が必要になってくることは否めません。我々はこうした膨大な構造物の維持管理に関して大きな責任を有しています。それを果たすべく取替用プレキャスト床版および、継手構造について発注機関や、設計会社に情報発信し易い場を作ろうと考え、研究会を設立した次第です。
 ――なぜPC建協内の委員会ではなく、外部の研究会として立ち上げたのでしょうか
 大野 仰る通り、PC建協内には「NEXCO大規模更新床版特別委員会」があり、そこで大規模更新事業におけるプレキャストPC床版について、設計、版の製作、施工など様々な技術的課題について議論しています。
 研究会は、こうした議論をなす場ではなく、各社の個別工法を集めて情報発信する場としています。また、会員としてはPCの専業社だけでなく、横河ブリッジ、熊谷組、ショーボンド建設なども入っています。これは実際の工期やボリューム現場を考慮すると、PC専業にとらわれず色々なメンバーを想定しなければ事業執行が困難になると思ったからです。このメンバー構成からしてもPC建協内での委員会活動としては構成できません。これも外部の研究会とした理由です。
 研究会設立にあたっては事前に「NEXCO床版特別委員会」内で説明もしており、その中でも今回の9社以外に入会を希望される会社がありました。これについては後述しますが規定に従って対応していく方針です。
 ――具体的に研究会ではどのようなことを行っていくのですか。継手構造の最低限擁すべき性能を会で提示すると聞いていますが
 大野 研究会では継手構造の登録基準を明確化し、その基準を満たした工法を研究会として登録し、外部に発信しようと考えています。
 その基準は当該継手構造が①工事実績が1件以上あること、②平成8年道路橋示方書に従って設計された「RC床版」の疲労耐久性を満足していることを、輪荷重走行試験で確認されていること、③設計上の終局耐力を満足していることを静的試験により確認されていること、④学識者または発注者などの第三者で性能を確認されていること――の4点です。


採用事例(エンドバンド継手)

 ――そうしたしっかりした登録基準により、個別工法を発信するというのは他の工法にない大きなアドバンテージとなりますね
 大野 そうですね。登録工法を決定する際には、きちんと研究会内でプレゼンも行ってもらい、工法の長所、留意点などを明らかにした上で登録します。また外部に発信する際にも、現場の(交通規制法量、腐食環境など)様々な状況を示した工事実績なども発信するので発注機関や設計会社も採用し易くなるものと考えます。
 ――施工管理工法のある程度の共通化ということは行いますか
 大野 基本的にそれは個別マターと考えています。
 ――交通量や気候的寒暖差、腐食環境など床版の置かれる状況はまちまちです。オリエンタル白石のSLJスラブにおけるエンドバンド継手は交通量の激しい向佐野橋(九州道)、塩害の激しい沖縄道の高架橋や凍結防止剤を多量に散布する上長房橋(中央道)など様々な個所で施工しており、知見も相当積まれておいでかと思います。そうした難易度も考慮した研究会としてのマニュアル作りは行いますか
 大野 これも基本的には個別マターと考えています。ただし、研究会内では実績等の情報は共有化する方針で、現場で得た知見や留意点、失敗例なども共有化します。そうすることで会員各社の保有する継手工法について、より、耐久性の高い製品がユーザーに提供、提案できるものになる、と考えています。



九州道・向佐野橋

 ――加盟各社のプレキャスト床版工法、および継手工法はどのようなものがありますか
 大野 技術委員会の審査が完了している工法ではオリエンタル白石㈱の「SLJスラブ工法」があげられます。エンドバンド継手、架設時に横方向鉄筋を仮置きすることで施工性を高めることを特徴とする工法で、工期短縮、床版厚低減を実現し、施工実績も20例を超えるものです。
 正式登録は来月以降の予定となります。今後も各会員会社から開発工法の登録申請がなされてくるものと思われます。
 ――今後加盟を希望する会社はどのように遇していきますか
 大野 理事会社3社の推薦により入会希望を受理し、理事会により協議の上入会の是非を決めます。研究会の主旨に沿うことが出来る会社であれば、基本的には入会を受け付ける方針です。
 ――ありがとうございました

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