橋梁 2,470橋を管理
50年以上経過橋梁は16%
――次に保全について、橋梁の内訳から
永石 県全体としては2,470橋を管理しています。
まず橋長別では15㍍以上の橋梁が650橋、未満が1,820橋です。
橋種別ではコンクリート橋が64%、鋼橋が7%、ボックスカルバートが28%、複合橋などが1%となっています。
供用年次別は50年以上経過している橋梁が16%、41~50年未満が23%、31~40年が20%となっています。20年経過後は橋齢50年を経過した橋梁が全体の6割に達します。
また国県道別では、県管理国道が33%、主要地方道が34%、一般県道が33%となっています。
供用年次別橋梁割合
――点検を進めてみて、劣化の傾向は
永石 状況としては、コンクリート橋では上部工の主構のひび割れや、コンクリートの剥離、鉄筋露出などが生じています。鋼橋では塗装劣化や腐食などが生じています。絶対数としてはコンクリート橋の損傷の方が多いですが、各橋種別の損傷割合としては鋼橋が比較的高くなっています。
――もう少し詳しく
永石 当県では、独自の点検マニュアルを作成しており、Ⅰ健全(監視や対策を行う必要のない状態)、Ⅱ予防保全段階(状況に応じて、監視や対策を行うことが望ましい状態)、Ⅲ早期措置段階(早期に監視や対策を行う必要がある状態)、Ⅳ緊急措置段階(緊急に対策を行う必要がある状態)の4段階で橋梁の健全性を診断するようしております。
平成27年度までに点検を実施した橋梁のうち、Ⅲは約8%を占め、緊急補修や通行止が必要なⅣはありませんでした。
長寿命化修繕計画 206橋が要補修
平成30年度までに100%対策達成へ
――橋梁長寿命化修繕計画の進捗状況は
永石 要補修橋は全体で206橋(15m以上は平成20年度に策定、15m未満は平成24年度に策定)あり、そのうち平成27年度末までに67%が完了しています。主にコンクリートひび割れ補修、断面修復を行っています。29年度までに100%完了することを目指し対策を進めています。
考え方としては健全度を100点満点で評価し、60点以上あれば合格点と見做し、全橋梁をその数値まで引き上げ、それを下回らないように予防的な修繕を実施していきます。
コンクリート桁補修実施例(断面修復工)
耐震補強は着々と進む
――耐震補強の実施状況は
永石 緊急輸送道路上にある対象橋梁(48橋)について、跨線橋、跨道橋はフルスペックで、その他については3プロレベルで、ほぼ(45橋)対策を完了しています。
現在は、緊急輸送道路以外の対象橋梁(30橋)も耐震補強を進めており、平成27年度末までに25橋を完了し、現在5橋の対策工事を実施しています。
落橋防止装置 鋼製治具取り付けは約40橋
対策は検討中
――落橋防止装置の設置については
永石 27年度は1橋で設置しました。28年度については2橋で設置する予定です。
――落橋防止装置の鋼製治具における溶接不良問題への対応は
永石 過去10年以内に、対象となる鋼製治具を用いて落橋防止装置を取り付けた橋梁の数は、約40橋あることを把握しています。その後、国の情報をもとに不正行為が認められた製作会社が製作した鋼製治具については今のところありません。不具合が認められた製作会社が製作した鋼製治具およびそれ以外の会社が製作した鋼製治具については、確認する必要はあると認識していますが、どういう風に点検を行うかなども含め検討中です。
――経年劣化や疲労などによる上部工補強はありますか。また、各地の自治体で問題になっている補強した床版の再補修事例があればお答えください。それに付随しますが、県全体で各橋梁の床版防水の有無と実数は
永石 床版の損傷はありますが、大規模なものではなく、断面修復やひび割れ注入がほとんどです。
27年度は上徳須恵橋など21橋で床版防水を行っています。28年度は平尾橋など23橋で床版防水を行う予定です。
床版防水については設置、未設置の完全な把握はできていませんが、「佐賀県橋梁補修補強マニュアル(案)」では、未設置の場合は、必ず防水工を行うこととしています。
――支承や、ジョイントの取り替えおよびノージョイント化について今年度施工予定個所数と取替える際の工法・種類は
永石 ノージョイント化の事例は最近ありません。支承交換は平成27年度は4橋、28年度は予定がありません。27年度においてはゴム支承および鋼製支承をゴム支承(タイプB)に交換しました。
支承の交換例
――塩害、アルカリ骨材反応などによる劣化の有無。劣化があればどのような形ですか
永石 塩害は玄海灘に面している30橋、アルカリ骨材反応による劣化は県内全域で53橋でそれぞれ認められ、詳細調査が必要な橋梁があります。対策方法としては亜硝酸リチウムを注入する(ASRリチウム)工法やASRのこれ以上の進展を防ぐため、水の浸入抑制を目的に表面含浸材の塗布などを実施しています。
ASRによる損傷(左)橋脚梁部、(右)柱部
ASRの補修フロー
塗り替えは予定なし
ケレンはⅠ種Ⅲ種を使い分け
――今年度の鋼橋塗り替え予定は
永石 27年度は4橋5,500平方㍍で塗り替えを行いました。28年度の塗り替え予定はありません。ケレン種別は現場状況によって1種または3種を使い分けています。
鋼橋の腐食損傷
――PCB(ポリ塩化ビフェニール)含有塗膜橋および鉛の有無と塗り替えの際に用いている塗膜剥離方法は
永石 PCB(ポリ塩化ビフェニール)含有塗膜橋および鉛の有無については、詳細調査・設計の時にこれまでの塗装履歴の確認を行ったり、塗膜調査としてPCB含有量分析を行ったりして確認しております。塗装塗り替えの際には、素地調整においてブラスト工法を採用した事例はあります。
――耐候性鋼材の採用実績と健全度状況について教えてください
永石 橋長15㍍以上に限ってしか把握できていませんが、40橋程度で採用しています。健全度については各橋梁でばらつきがありますが、概ね良好な状況です。しかし、一部の橋梁では漏水が原因と考えられる腐食が見られており、今後詳細な調査を実施する必要があります。