道路構造物ジャーナルNET

軟弱地盤に配慮、六角川大橋など橋梁も建設中

佐賀県 有明海沿岸道路、佐賀道路などを整備へ

佐賀県
県土整備部
副部長(前道路課長)

永石 誠

公開日:2016.04.17

佐賀福富道路 6.5キロを供用
 六角川大橋を整備中 慎重に高盛土対策

 ――地域高規格道路の県事業分の詳細をまず佐賀福富道路から
 永石 同事業は、嘉瀬南IC付近のJCT(計画)から福富ICまでの約10.5㌔間の自動車専用道路を建設する事業です。既に開通している嘉瀬南IC~芦刈ICまでの4.5㌔に加え、平成28年3月には芦刈IC~芦刈南ICまでの約2㌔が開通しました。全体でいえば6.5㌔(62%)が開通したことになります。

 ――残り4㌔の進捗状況は
 永石 残る区間も全面展開しており、現在は六角川を渡河する六角川大橋(右写真)を施工しています。同橋は全長982㍍の4径間連続鋼床版箱桁(488㍍、渡河部)+4径間連続鋼鈑桁×2(294㍍、左岸部陸橋)+鋼5径間連続鈑桁(200㍍、右岸部陸橋)です。現在は渡河部のP1およびP3橋脚を工事中です。また27年度は同様に渡河部のP2橋脚の施工に着手しました。平成28年度は陸橋部の下部工に全面着手します。渡河部の上部工は既に2.5スパン分発注しており桁製作中です。防食は通常の重防食塗装、汽水域にありますがコンクリートは被り厚を厚くすることで対応しており、エポキシ樹脂塗装鉄筋やコンクリート被覆、シラン系含浸材の使用などは行っていません。


六角川大橋完成イメージ

 ――有明海近くに面しており、非常に厳しい地盤が予想されますが
 永石 渡河部は鋼管矢板基礎を採用しており、基礎支持深さは約35㍍です。
 ――他、構造物は
 永石 小河川や町道を跨ぐ橋梁などを数橋予定しています。その他は基本的に5~8㍍の高盛土構造です。
 ――有明海沿岸で高盛土となると軟弱地盤のため沈下対策が課題になりますが、その対策は
 永石 仰る通り有明海沿岸地域は日本有数の軟弱粘性土が相当の厚さ堆積しているため、盛土の施工にあたり沈下対策は不可欠です。そのため、軟弱地盤対策検討委員会(委員長=三浦哲彦佐賀大学名誉教授)を組織して検討をすすめました。
 具体的には道路計画を経て地盤調査に基づき軟弱地盤に応じてエリア区分し、その後詳細な地盤調査を実施しました。次に解析に必要な地盤定数を設定し、モデル断面を設け、対象地区の地盤条件に応じた対策工法を検討し、変形量の照査のため二次元弾塑性FEM解析を実施しました。その際は解析変形量が許容値を超えないように最適諸元を決定し、試験盛土の標準断面を選定、その上で試験盛土を施工し、直下の地盤や周辺部などの動態観測を実施し、その挙動やデータに基づいて本施工に着手しています。
 具体的な工法としては、フロート式(非着底)深層混合処理工法を採用しています。同地の地盤は軟弱粘土層の下に透水層が存在しているため、改良部分の下端は透水層上面から1㍍程度取るように設計しています。施工後の許容沈下量は10~30㌢と設定しました。結果として現在は、想定内に収まった形で施工、供用できています。
 盛土については、橋台背面のみ主働土圧軽減のため、FCB(気泡混合軽量土)を採用し、他は通常の建設発生土などを用いています。

福富鹿島道路 約10㌔を整備へ
 廻里江川右岸取付~JR長崎本線跨線部は連続高架も

 ――先線となる有明海沿岸道路福富鹿島道路は
 永石 杵島郡白石町~鹿島市間に計画している約10㌔の地域高規格道路です。現在、環境アセスメントは完了しており、事業着手に向けた調査を行っています。地盤状況は佐賀福富道路と同様に軟弱地盤であり、同じような対応が必要になります。
 ――計画している構造物は
 永石 基本的には盛土です。只江川、廻里江川等の渡河部や、JR長崎本線を跨ぐ部分においては橋梁を予定しています。特に廻里江川~長崎本線は連続高架橋(編注:直線距離にして600~700㍍程度)になる可能性があります。
 ――橋梁の基礎地盤は
 永石 全線にわたり軟弱地盤ですが、長崎本線付近は昔の海岸線部であり、他の個所ほど軟弱ではないと考えています。いずれにしても詳細にボーリング調査などを行った上で基礎の施工に臨みます。

佐賀道路 4月に新規補助事業採択
 跨線、跨道部で高架・橋梁あり、基本は盛土

 ――佐賀唐津道路多久佐賀間は
 永石 先ほどお話ししました通り、直轄で北側の5.3㌔を施工されます。
 南の34号交差点部から有明海沿岸道路とのタッチ部4.2㌔はこの4月に新規補助事業採択され、今後事業を進めて行きます。中間部の約6㌔については事業主体未定という状況です。
 ――県施工の佐賀道路について構造物は
 永石 基本は盛土構造ですが、JR長崎本線や道路等を跨ぐ個所は橋梁となります。
 ――基礎地盤は
 永石 有明海沿岸道路ほど軟弱粘土層は深くはないと考えていますが、盛土については、有明海沿岸道路と同様に深層混合処理を想定しています。
 また、橋梁基礎については、既製杭や現場打ち杭を想定しています。

若木BP 工事を全面展開中
 橋梁4箇所、ボックスカルバート17基を設置

 ――国道498号若木BPは
 永石 現道の渋滞対策や交通安全対策を目的として、武雄市若木町内の延長3.4㌔区間で施工中のBP事業です。用地買収はほぼ完了しており、平成28年度中の暫定供用を目指し、工事を全面展開している状況です。
 ――構造物は
 永石 県道を跨ぐ部分や河川渡河部で橋梁が4箇所、ボックスカルバートが17箇所あり、一部を除いて完成しています。
 ――国道498号全体のバイパス事業は今後どのように進めていきますか
 永石 498号のBP事業は国道202号側(伊万里側)から進めてきており、若木BP事業以降については検討中です。

唐房BP 浦川橋は完成、唐房トンネル整備へ
 延長487㍍ 旧呼子線のトンネルを広げる

 ――国道204号唐房BP事業は
 永石 唐津市内の延長2㌔のBP事業です。構造物は橋梁が1橋(浦川橋)、トンネルが1個所(唐房トンネル)あります。
 浦川橋は旧国鉄呼子線(未成線)の橋梁跡地を利用して設置した橋長216㍍、幅員9.75㍍の鋼3径間連続非合成鈑桁+PC5径間連結プレテンT桁橋です。同橋は既に建設を完了しています。
 唐房トンネルも旧呼子線のトンネルを増し掘りして広げる予定で、延長は487㍍、幅員は10.25㍍です。現在は取り付け道路の整備を進めており、それができ次第トンネル本体の工事に入っていきます。

多久若木線 女山トンネルが貫通

 ――県道多久若木線は
 永石 多久市~武雄市間の延長約2㌔の事業で、両市境の女山峠付近の線形改良、冬場の積雪による通行障害を解消するために女山トンネル(1,259m)を新設する事業です。
 施工は26年度からNATM工法により行っており、昨年10月に貫通しました。現在は覆工コンクリートを施工中です。
 今後取り付け道路の工事を進めて、平成29年度中の供用を目指しています。


女山トンネル完成イメージ写真

 ――建設分野で用いている新材料・新工法はありますか
 永石 軟弱地盤対策の一つとして、路床改良材にFe石灰を使用しています。

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