海外ではJ&Mで2万㌧の鋼橋生産も
JFEエンジ 安定的に400億円の受注を目指す
JFEエンジニアリング株式会社
常務執行役員
鋼構造本部長
川畑 篤敬 氏
保全 大規模改築事業を中心に取り組む
路線的にグルーピングした上で大ロット化を要望
――保全について聞きます。新設は減少が予想されている中、保全分野は緩やかな増加が予想されます。この分野をどのように拡充していきますか。また、鋼橋補修だけでなく、コンクリート橋等の異工種の補修補強にも踏み込んでいきますか
川畑 基本的には大規模改築事業を中心に取り組んでいきます。NEXCOの床版取替は規模も大きく、魅力もあります。但しPC床版の要素が大きいため、当社としての体制をどうしていくかが課題の一つであり、スピード感を持って技術開発などをコンクリート業者との共同で取り組んでいきたいと考えています。
――PC床版の要素が大きいというのは仰る通りかと思います。JFEエンジニアリングはどのように関わっていくのでしょうか
川畑 RC床版のPC床版への取替といっても桁との接合部の調整、荷重増加による桁や橋脚の補強など、場合によっては床版だけでは済まないケースも多々出てくると考えています。そうした際に施工の現場を担っていきたいと考えています。
――大規模更新や修繕、改築以外については
川畑 単発工事は売上額が最大でも2~3億円程度と小さく、当社のようなファブでは技術者を貼り付けるには売上的に厳しい現場がほとんどです。できたら路線的にグルーピングした上で大ロット発注していただくことで、当社のような規模の会社でも取り組んでいけるような環境を作っていただければ参入したいと考えています。
――最近は兵庫県や京都府などで照査点検・詳細設計付き補修補強工事発注という案件も試行的に出ていますがこうした案件はどのように考えていますか
川畑 デザインビルド的な補修補強工事発注ですね。額にもよりますが、工事が前提のものであれば手を上げることになろうかと思います。ただ、知見に対して、適切に対応していただけるかどうかです。例えば照査点検した段階で補修よりもむしろ架け替えた方が良いという判断になった時どのように対応していただけるのか――。
――「橋」という性格上、補修補強工事を想定している場合、架け替えの判断はなかなか難しいと思います。特に小規模自治体では財政的も難しい
川畑 しかし合理的には架け替えた方がいいわけです。それを架け替えせずに補修補強しても結局、早期に損傷が起きればそれだけ保全費用は余計にかかります。そうした判断を誰がジャッジするのか。それを見極めなくてはならないと感じています。私見ですが、特に小さな基礎自治体では独力で橋梁を保全するのは困難ではないかと思います。業務の広域連合化を図り、当社や建設コンサルタントなどの民間JVに点検から保全までの業務を委託していただけるような業務を開放していただければ安心していただけるのではないかと考えております。
海外 ミャンマーを中心に拡大
体制の現地化をさらに進める
――海外事業の拡充については
川畑 海外事業はODA案件、ミャンマーを中心に拡大しています。
今年度はティラワ桟橋(ミャンマー、)バングラデシュ橋梁とODA2件を受注するなど順調に推移しています。南アジアを中心に今後も出件が続くと想定しており、着実に受注できるような体制作りを行っています。
――具体的には
川畑 ミャンマーについては、政府系資本と共同出資したJ&Mの拡張工事がほぼ完成し、鋼橋を年間2万㌧生産できる体制が整いました。今後もミャンマー国内のインフラ需要は伸びると予測しており、さらなる工場拡張も視野に入れながら、要員教育をはじめ急拡大する工場の生産体制整備についても取り組んでいます。東南アジアのODA案件の生産工場としての位置づけもあり、品質面でISO認証取得を推進する予定です。
――ミャンマーの設計標準はやはりAASHTOですか
川畑 そうです。設計思想はもちろん商習慣も日本とは異なりますので、ファブの中でもやはり体力のある当社のような規模の会社が有利ではないか、と考えています。
――J&Mは日本人を何人ほど派遣されているのでしょうか
川畑 現在、従業員は369人(2016年4月1日現在)ですが、日本人は社長と工場長および事務職1人の3人および短期の現場研修のため派遣するスタッフ数人以外は全てミャンマー人が担っています。従業員は津工場で3年間研修を行った上で製作に携わっていただいており、高い品質を実現しています。将来は社長も含めミャンマー人で全てを担えるようにしていきたいと考えています。
――最後に土木業界では担い手の継承ということが叫ばれています。JFEエンジニアリングは日本鋼管、川崎製鉄もしくは日本鋼管工事時代から鋼橋の設計・製作・架設はもちろん、防食など業際的なもの含め優秀な技術を多く輩出しています。その技術的伝統をどのように繋げていきますか
川畑 入社してから3年間は現場を中心に派遣し、その後は設計、あるいは工場製作を担い、また現場に行くというローテーションを繰り返すことによって基本となる技術力を育てていきたいと考えています。また、他社同様シニアの再雇用ということは行っていますが、技術は教えられて育つものではないではないとも考えています。先輩方、それに私自身も本四架橋など現場で育てられてきました。これからを担う若手もチャンスがあれば海外、あるいは大規模更新・大規模修繕事業などの現場を経験させることで、トライ&エラーを繰り返しながら、先輩がそれをサポートしつつ技術を引き継いでいきたいと考えています。
津製作所桁製作中の大島架橋(宮城県)
――ありがとうございました