海岸線は長く厳しい塩害環境
雲見大橋(ポステンT桁)でPC鋼材が破断
――塩害やアルカリ骨材反応による劣化の有無は
平野 静岡県の海岸線は長く、厳しい塩害環境にあるため、塩害による損傷も多く見られます。伊豆半島の賀茂郡松崎町にある国道136号(通称「富士見彫刻ライン」)の雲見大橋は、日本道路公団(現NEXCO)によって昭和47年に太田川を渡河する箇所に架設された橋長121.21㍍のPC4径間連続ポステンT桁橋です。平成25年度にPC鋼材の破断が確認されたため、桁の塩化物イオン含有量を調査したところ、海側張出床版、G1桁海側、G2桁からG4桁のウエブ下段において、鉄筋位置で発錆限界値以上の塩化物イオン量(4.5㌔/立方㍍)が確認されました。本橋では、一般社団法人日本建設機械施工協会 施工技術総合研究所の指導により、この範囲に電気防食工(線状陽極方式「PI-Slit工法」)を計画し、外部電源から常時通電することで鋼部材の腐食の進行を防止します。電気防食の採用は本県では初めてです。昨年度から施工を進めており、28年度には対策を完了する予定です。なお、本県管理橋梁では、アルカリ骨材反応による損傷は確認されていません。
雲見大橋全景。海岸線に近接していることが分かる
PC鋼材の破断/電気防食工の施工範囲
測定された塩化物イオン量
鋼橋塗替は1種ケレンが基本
塗膜剥離剤を使用した後にブラスト工を施工
――2015年度の鋼橋塗替実績(橋数と面積)と、2016年度の鋼橋塗替予定(同)は。また塗替の際の全体的・部分的な用途でもいいので溶射など新しい重防食の採用などについてもお答えください。また、PCBや昨年の厚生労働省・国土交通省から2014年5月30日にでた文書を受けて、鉛など有害物を含有する既存塗膜の処理についてどのような方策をとっているのか教えてください。加えて、耐候性鋼材を採用した橋梁で錆による劣化・損傷が報告されている事例が出てきていますが、静岡県では採用事例が何橋あり、現状どのような健全度を示しているのか教えてください
平野 静岡県では現在、旧塗装系から重防食塗装系への変更に当たっては、ブラスト工法による1種ケレンを基本としています。(溶射など)新しい重防食工法の採用実績はありません。鉛等有害物質を含有する既存塗膜の処理については、補修設計時に橋梁台帳と現場の塗装履歴を確認し、分からない場合は分析調査を行って鉛等の含有の有無を確認しています。鉛等を含有している既設塗膜を有している鋼橋の塗替においては、塗膜剥離剤を使用した後にブラスト工法を行った事例があります。
塗膜剥離剤の採用/ブラスト工の施工
耐候性鋼材については、当県内には同材を使用した橋梁は56橋あり、概ね健全と考えています。但し、国道136号日守大橋などで損傷事例が確認されています(右写真)。
伸縮装置や床版からの漏水が原因で、桁端部の鋼材部が腐食しています。これらに対しては当て板や塗装により補修を行っています。
道路防災対策 要対策は1,145箇所
事前通行規制区間内187箇所を優先、34年度までに156箇所対策へ
――道路防災対策の実施状況は
平野 当県が管理する道路は、複雑で脆弱な地質と急峻な地形条件の箇所が多く、落石等の災害を未然に防ぎ、道路交通の安全を確保するため、昭和43年度より危険箇所の点検を行い、結果をもとに計画的な防災対策を講じています。現在は平成8年度の道路防災総点検結果により対策を実施しています。同結果のうち、要対策は1,145箇所、経過観察箇所が874箇所という結果になっています。
要対策箇所のうち、緊急輸送道路上でかつ事前通行規制期間内にある187箇所の防災対策を優先しており、34年度末までに156箇所(83.4%)を完了させる予定です。26年度末に対策を完了したのは117箇所となっています。
左のような要対策箇所を右のように補修(国道135号御石ヶ沢)
――過去に行った、法面吹付工やネット工についても状況を把握し、何らの対策を行うことを考えていますか
平野 平成24~27年度に道路防災点検をやり直しており、法面でも今年度長寿命化修繕計画を策定しました。その中に今次点検で把握した箇所を組み込んでいきます。但し、30㍍以上の長大法面に関しては毎年点検を行い、異状があればすぐに補修に入れるようにしていきます。
――民地からのもらい災害について
平野 道路防災点検は、民地でも斜面の安定性については確認をある程度しています。ただ、災害のある箇所は関連施設があって施設債であげるところと、何も無くて沢の押し出しなどで崩れてくるところがあって、通常崩れるところは沢の押し出し、特に民地からの崩れが多いことは確かです。これは山林の荒廃によるところが大きいと考えています。
特殊高所被術や専用点検車による路面下空洞を点検
――新技術・新工法の採用について
平野 河川内の橋脚の補強に際して、橋脚の周りを仮締め切りする時、空頭制限がある箇所において上部障害クリア工法を採用しています。また巻き立てそのものもPCMを用いた補強工法を採用しています。他には既存塗膜除去の際の塗膜剥離剤、橋梁点検の際の特殊高所技術、専用点検車による路面下の空洞点検を挙げることができます。
左から上部障害クリア工法、塗膜剥離剤(同写真はバイオハクリ工法)、特殊高所技術
――ありがとうございました