鉄筋やPC鋼線を切断する危険無くコンクリートを削孔
WJ施工5社がウォータージェット削孔研究会を設立
ウォータージェット削孔研究会
会長
久野 浩二 氏
久野製作所、第一カッター興業、テクノジェット、日進機工、長栄工業の5社は、昨年(2015年)末にコンクリート構造物の躯体について鉄筋などを傷つけることなく削孔できるウォータージェット削孔技術の研究会「ウォータージェット削孔研究会」を設立した。その詳細について代表理事を務める久野浩二氏(久野製作所社長)に聞いた。(井手迫瑞樹)
第一号案件は12年前
以降、さまざまな個所に施工
――ウォータージェット(以下WJ)の削孔というと、平成15年末に現場取材した久野製作所が静岡国道管内の橋梁(国道1号巴川橋)の橋台に落橋防止装置をセットするためのアンカーボルト設置用の削孔をした第一号案件を思い出します。用途としてはやはり、そうした方面ですか
久野 そうですね。あの現場は耐震補強用の削孔で、当時から従来の削孔では鉄筋を傷つける可能性があったことや、当時は現在のように鉄筋探査用非破壊検査技術も確立されていなかったことから用いられるに到った経緯を覚えています。
国道1号巴川橋の耐震補強用アンカーボルト設置の際に初めてWJによる削孔を施工した
その後も橋台、橋脚などの下部工に耐震補強設備を取り付ける際や、コンクリート橋のゲルバー部の一体化(に伴うPCケーブルを通す)のため(NEXCO東日本 第三京浜道野川高架橋、首都高速道路 勝島高架橋など)、PC橋の横桁設置(NEXCO西日本中国道宇佐川橋)の際、または外ケーブル補強用の耳桁設置、支承部の沓座下面のはつり(平成24年1月北海道土木技術会鋼道路橋研究委員会発行「北海道における鋼道路橋の設計および施工指針」第2編維持管理編 12章付属物 12-9、12-10、12-11を参照)などに用いられています(左表は主な施工実績表)。
また、PC桁端部のはつりにおいては、非常に狭い遊間幅の中を通して、脆弱部をはつらなくてはいけませんが、圧が強すぎるとPC定着部をはつってしまう危険性があります。そうした時に、非常に浅い角度ではつることも可能な削孔技術のノウハウは重要で、これがないと50㍉~100㍉幅の遊間での作業は非常に難しくなることが分かっています。こうした技術はピーエス三菱さんのNERV工法などで活用されています。
適用はこうした分野が対象になります。
下部からの削孔
ジョイントの撤去および狭い遊間部のはつりや表面処理にも削孔技術のノウハウは重要だ
スムーズな削孔と現場の水・ガラ飛散防止を両立
研究会設立で広く適用を図る
――そうした技術的アドバンテージを有しているにも関わらず研究会を設立した理由は
久野 まず前段階から申し上げますと、当社(久野製作所)は、エヌエスエンジニアリングが有していた削孔技術の特許を先年に買収しました。これに加えて、当社はWJによる削孔作業の際をより効率的に行うことができるようにノズルヘッドを改良(複数のノズルが装着でき、削孔の際には各ノズルが異なる方向を向く(1つは中心、1つはその周辺という風にすることで圧が集中することを防ぎかつスムーズに削孔できる。これを援用すれば、削孔はもちろん、先述した端部のはつり過ぎも防ぐことができる)する技術および削孔作業の際に水・はつり片の飛散を防止し、周囲を汚さず、作業終了後の回収・清掃の手間を大幅に減らすことのできる機構などを実用新案登録しています。本研究会の設立はそうした技術の普及・発展を目的としたものです。
さて、こうした技術は1社が有していただけでは、広がる力に欠けています。いくら良い工法でも広がって使わなければ意味をなさず、コストも下がりませんし、技術向上のスピードも上がりません。またWJを取り巻く環境として、その使用頻度、規模は大幅に拡大しており、1社だけでは対応できない現場がほとんどです。そうした中で技術を共有し、スムーズに助け合うことのできる環境をつくることは必須であり、その中に削孔技術を入れることは、アライアンスを組んでいる各社がさらに競争力を強化する意味でも重要であると考え、呼びかけた結果、当社以外の4社が応じてくれました。