20年後は50年以上経過橋梁が3/4超え
計画的な維持管理が必要
――次に保全についてですが、管内の構造物の内訳からお願いします
黒田 橋梁は全体で5,888橋(岡山市に次いで2位)を管理しています。RC橋が特に多く4,586橋と全体の3/4を超えています。次いで鋼橋が630橋、PC橋が606橋となっています。山間部の吊橋が41橋あるのも特徴です。延長別では15㍍未満が全体の9割弱を占めますが、100㍍以上の長大橋も72橋を管理しています。供用年次別では50年以上経過橋梁は789橋と全体の13%程ですが、40年以上50年未満が1,703橋、30年以上40年未満が2,005橋と20年後には50年以上経過橋梁が3/4を超えます。計画的な維持管理を行うことが必須となっています。
浜松市の橋梁種別一覧
トンネルは全体で46本管理しています。トンネルの約85%は(山深い)天竜区に集中しています。工法別では素掘りが1、次いで矢板工法が31、NATMが9、その他が5となっています。延長別では100㍍以上500㍍未満が31と全体の2/3超を占めます。1,000㍍以上の長大トンネルも3箇所有しています。供用年次別では50年以上が24箇所と過半数を占めている状況です。
浜松市のトンネル種別一覧
――政令指定都市化された当初は急激な構造物の増加に戸惑われたことと思います
黒田 政令市に移行後、県に募って、何人かに浜松市に転籍していただいています。その後、新卒や中途採用も入れていますが、団塊の世代の退職による職員減に追い付いていないのが現状です。
――そのような状況に対応するためにスペシャリストの育成を図っている自治体もありますが浜松市は
黒田 現状ではそのような試みは行っていません。但し、本市ではだいたい1つの職場に5年ほどいるため期間は少し長めになっており、技術的習得という意味では長いスパンですし、そうした人間が一度別の職場に移って、再び以前と同じ職場に上の立場で戻り、後輩を指導する――というローリングに期待しています。
区分Ⅲが56橋、Ⅳも2橋
吊橋の点検が課題
――点検を進めてみて劣化状況をどのようにとらえていますか。まずは橋梁から教えてください
黒田 鋼橋は塗装の劣化、鋼材の腐食、防食機能の低下、PC橋はコンクリートの経年劣化により、床版の漏水、遊離石灰、RC橋もコンクリートの経年劣化により、床版の剥離、鉄筋露出などが多く見受けられます。部位別では主桁とりわけ端部で鋼材の腐食、防食機能劣化、RC床版で漏水、遊離石灰、コンクリート剥離、鉄筋露出、橋脚で躯体コンクリートの剥離、鉄筋露出、地覆でコンクリートの剥離、鉄筋露出、高欄で(鋼製高欄の)腐食、防食機能劣化、(コンクリート高欄で)コンクリートの剥離、鉄筋露出、支承で雨水などの排水処理に起因する鋼製支承の腐食、沓座部の破損、路面で伸縮装置の破損、排水装置の土砂詰り、などが生じています。
平成26年度に新しい制度のもと行われた点検では対象404橋のうち、区分Ⅲが56橋、区分Ⅳも2橋ありました。区分Ⅳの2橋についてはいずれも単径間の木製床版橋です。現在は通行止め措置を行っており、架け替えないし撤去を地元協議中です。
――先ほど吊橋が41橋あると仰っていましたが。吊橋は点検が非常に難しいと思います。具体的にはどのような点検を行っていますか
黒田 主要部材やケーブルの破断の有無、加えて手すりなどの安全性の確認をできるだけ近接して点検しています。ただし、場所によってはアクセスの問題から近接目視や打音などの点検が困難な個所もあり、今後の課題です。
――特殊高所技術のような点検手法を取り入れることはしないのですか
黒田 車道吊橋のような、ある程度しっかりした構造物であればいけると思いますが、幅1㍍ぐらいの人道吊橋の点検では、ロープアクセス自体の安全性という課題も出ますので、少し対応に苦慮しているというのが実情です。
――トンネルは
黒田 工法ごとに申します。矢板工法で建設されたトンネルは、建設後の年数が経っていることや地山の状態もあり、工法に起因する覆工背面空洞、覆工コンクリートのクラック・浮き・剥離、漏水などが顕著です。ただ軸方向のクラックのような致命的損傷は今のところありません。NATMでも覆工コンクリート打継目の損傷や覆工コンクリートのクラック、浮き・剥離、漏水が生じています。また、トンネル照明設備の鋼材腐食も散見されており、対策する必要があります。
平成27年度(今年度)には、トンネルを適切に維持管理していくためのガイドライン、点検マニュアルを策定しました。既に同ガイドラインに沿って定期点検に着手しており、今後修繕計画についても策定していく方針です。