右岸の斜面崩壊によって被災した原田橋旧橋と建設中の新橋
200㍍下流に新たな架橋を計画
――原田橋について詳しくお願いします
黒田 約1年前(2015年1月31日)に、右岸の斜面崩壊に伴い、旧橋の吊橋およびその下流側にかけていた新橋が被災しました。そのため昨年7月に新たに架け替えの方針を打ち出し、既設橋の位置から約200㍍下流に新たな架橋をするものです。今年度このルートで詳細設計を進めており、可能な限り早く工事に着工するよう取り組んでいます。概略設計の段階では、橋長約300㍍程度の3径間の鋼箱桁構造を考えています。
崩落した旧橋と建設中の新橋の一部
撤去後の現場
ダムの放流が大きな課題
岩質や地形、凍結融解による経年劣化が崩壊招く
――同地は渓谷だったと記憶していますが、桁下クリアランス高はどのくらいになりますか
黒田 40㍍程度にはなると思います。ただ一発で通す(単径間の斜張橋など)構造は考えていません。
――下部工を建てるとなると漁協との兼ね合いから完全締切化での施工になりますね
黒田 基礎は基本的にニューマチックケーソンの採用を考えています。ここが難しいのは、約2㌔上流に佐久間ダムがあることです。今年度既設橋の撤去作業を進めていたのと、現在は橋梁が不通状態であるため河川内に仮設道路を通して、それで国道473号の交通処理をしている状態ですが、ひとたびダムが放流となると撤去作業は止まりますし、仮設道路も通行止めになってしまいます。新橋の工事に当たってもダムの放流が大きな課題になると考えています。
――そもそも右岸の斜面崩壊が起きた理由は
黒田 原田橋の復旧にあたって技術検討会を開催し、さまざまな有識者に入っていただき議論していただきました。まず地質状況ですが、この付近は中央構造線が通っているような地勢・地質的環境にありまして、地山は花崗岩と片麻岩の互層になっており、市でも詳細なボーリング調査や踏査を行った結果、花崗岩が冷却していく過程で、岩にクラックが生じていることが分かりました。そういう亀裂に雨水が浸透すると、(山間地にあるため)凍結融解が繰り返されていく中で、クラックが経年劣化とともに拡大し、地山が緩んできた。今回の斜面で言いますと、地表から10㍍ほどの層でその状況が生じていました。それが昨年1月当たりで――。
――限界値を超えた、と
黒田 そうですね。また当地は地盤が緩んでくると、そのまま崩落し易い地形条件であったことも原因の一つとして考えられます。新設橋工事との因果関係については分かりませんが、地山の形成される過程に由来する岩の性質および経年劣化が原因ではないかと委員会では結論付けられています。