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政令指定都市化して10年余 保全も着実に進める

静岡市 南北交通強化、大河内橋など架け替え

静岡市
建設局 道路部長

柴 吉寬

公開日:2016.03.16

耐震補強 対象197橋中105橋が完了
 28年度は6橋で対策予定

 ――橋梁など耐震補強の進捗状況および落橋防止装置の設置状況、今年度の設置予定についてお答えください
 柴 耐震化対策は、平成23年度に策定した静岡市橋梁耐震化計画に基づき、平成34年度をめどに平成8年道示以前に架設された複数の径間を有する197橋を対象に平成24年道示を満たす耐震対策を実施しています。平成26年度末までに105橋の耐震化が完了しています。また27年度末までに新たに9橋が完了する見込みです。
 28年度は継続工事を含めて10橋で耐震補強、8橋で耐震設計を行う予定です。
 一方で過去10年間において、落橋防止装置を設置した橋梁は112橋あります。現在、橋梁点検時に落橋防止装置の状態を確認しており、点検は5年で1巡するため、1巡時には10年以前に設置されたものも含め、落橋防止装置の全数が把握できます。
 今年度、落橋防止装置は新たに3橋(市道清水日本平線見晴橋、(主)梅ヶ島温泉昭和線内牧橋、(主)井川湖御幸線曙橋)で設置しました。


平成27年度に新たに落橋防止装置を設置した3橋

パイルベント橋脚は架け替えへ

 ――特殊橋の耐震補強はありますか
 柴 パイルベント橋脚を有する橋があります。これについては補強の仕方が定まらないことや河積阻害を考慮し、架け替えの方向で検討していきたいと考えています。

損傷度Ⅲの橋が想定上に多かった
 27年度末までに24橋が健全化

 ――橋梁長寿命化修繕計画の策定状況は
 柴 高度成長期に作られた多くの橋梁が高齢化(架設後50年)することで、健全性の低下、更新費や修繕費の増大が課題となります。維持管理手法をこれまでの「対処療法的」なものから、「予防保全型」に移行することで、健全性の確保、増大する架替えや修繕に架かる費用の縮減と平準化を図っています。
 具体的には平成24年3月に策定した「静岡市土木構造物健全化計画(橋梁編)」に基づき、平成25年度からから34年度までの10年間で144橋を対象に実施しております。27年度末までに58橋の健全化が完了する見込みです。平成26年度に412橋を点検した結果、損傷度Ⅳの橋梁はありませんでしたが、損傷度Ⅲの橋が想定以上に多かったため、同区分とされた橋梁から順次対策を進めていきます。ちなみに損傷度Ⅲ64橋中修繕対応で対応可能な10橋を今年度発注しました。残りの橋梁についてもできるだけ修繕対応で行きたいのですが、10橋程度は工事対応になる可能性があります。
 ――同様にトンネルの長寿命化は
 柴 過去の点検状況につきましては先述の通りです。現在の点検状況につきましては、国土交通省より示された「道路トンネル定期点検要領」に従って、平成30年度までに全トンネルで実施する計画となっており、現在13トンネルを実施中です。
 トンネルの長寿命化修繕計画としましては、平成25年度に「静岡市道路構造物維持管理計画(トンネル編)」を策定しました。その後、24年12月に発生した中央道笹子トンネル天井板崩落事故を受け、従来の維持管理計画を修正しました。補修計画については先ほどあげました7トンネルでの補修工事を平成30年度までに完了する計画で、既に2トンネルが完了し、1トンネル(宇津ノ谷隧道、昭和5年供用、232㍍、損傷度Ⅴ)が施工中です。また平成30年度までに実施する2順目の定期点検によって新たに補修が必要となるトンネルが確認された場合は、優先度に応じて補修計画を見直し順次対策を実施していきます。
 ――経年劣化や疲労などによる上部工補強はありますか。また、各地の自治体で問題になっている補強した床版の再補修事例があればお答えください。それに付随しますが、市全体で各橋梁の床版防水の有無と実数は
 柴 上部工補修補強は24年度からの3年間で24橋実施しています。今年度は11橋の補修補強を実施しています。
 床版防水については「静岡市道路橋補修・補強要領(案)」(平成23年3月)に基づき実施しています。それ以前については、静岡県のマニュアルに基づき施工しています。
 現在は既設橋の漏水状況など床版の劣化状況に応じて施工しています。車道部はシート系防水、歩道部は塗膜系防水を標準としています。
 ――支承や、ジョイントの取り替えおよびノージョイント化について今年度施工予定個所数と取替える際の工法・種類は
 柴 支承は損傷に応じて取替、またはケレンや塗装による補修などにより対応しています。ジョイントについては交換の際に非排水型を使用するなど、漏水、滞水対策には注意するようにしています。

石部海上橋が塩害により損傷
 犠牲防食や塩化物イオン吸着工法により対応を検討

 ――塩害、アルカリ骨材反応などによる劣化の有無。劣化があればどのような形ですか
 柴 駿河区の海沿いにある石部(せきべ)海上橋(単純PCポステンT桁×9連、360㍍、昭和47年供用)は、がけ崩れによる影響で大きく海側に湾曲する線形を有している橋ですが、そこが塩害の影響を受けており、特に桁端部や橋脚においては鋼材の腐食が進行している可能性が高いとされ、現在、委託業務にて対策工法を検討中です。


石部海上橋(背後に見えるのは富士山)

波浪時の石部海上橋

猛烈な波飛沫を受ける橋脚(左)/桁も4~5㌔/立方㍍の含有塩分量を確認(右)

いずれも石部海上橋の損傷状況

 平成26年3月に含有塩分量を測定したところ、コンクリート表層の塩化物イオン濃度は基準となる2.5㌔/立方㍍を超える4~5㌔/立方㍍と高いことが確認されました。この結果PC鋼材の破断に至る可能性が否定できないため、桁への塩化物の供給を抑える対策が必要であると考えています。 橋脚部についても確認したところ同様に表層の塩化物イオン濃度は14~17㌔/立方㍍と非常に高濃度であり鋼材の腐食が進行している可能性が高いことが判明しました。鉄筋近傍の数値についても今後計測していく予定ですが、相当程度の数値に達しているものと思われ、このままでは20年もたないと想定されることから補修を行うものです。
 塩害対策の断面修復工法としては、マクロセル腐食対策の犠牲防食工法や塩化物を固定化し、無害化する吹き付けモルタル工法の採用により、これ以上の進行を抑えるべく検討しています。
 また、今後の架け替えも念頭に置いており、ルートの選定を考えていますが、海側に造る場合は落石の影響(跳躍距離)を考えると40㍍の離隔は必要です。もしくは崖側に擁壁を立ち上げて、落石の跳躍そのものを防ぎ、離隔を抑えるかなど、今後も検討を進めていく必要があります。

16年度は7橋10,448平方㍍で塗り替え実施予定
 耐候性鋼材を用いた橋梁が縦継ぎ目に沿って損傷

 ――今年度の鋼橋塗り替え予定、また耐候製鋼材を使用した橋梁の劣化について
 柴 2015年度は5橋4,571平方㍍実施しており、16年度は7橋10,448平方㍍実施する予定です。溶射などの新しい重防食は行っておりません。
 鉛など有害物を含有する既存塗膜の処理については、本市でも課題ですが、平成27年度に、内牧橋など2橋でNETIS登録の循環式ハイブリッドブラストシステム工法を採用しました。
 耐候製鋼材を採用した橋梁においては、一部で冬場に散布する塩化カルシウムがジョイント部などから橋梁下面に回り、耐候性鋼材に錆が発生する事例も生じています(南アルプス公園線細ノ尾橋)。この桁の腐食により著しく劣化・損傷しているため、現在、補修工事を実施しています。同橋は当初RC橋で4㍍の幅員しかありませんでしたが途中で耐候性鋼材の桁を用いて8㍍に広げています。即ち縦継ぎ目があるわけ(右上写真の縦継ぎ目)ですが、そこに凍結防止剤を撒くと……。

 ――最悪のパターンですね
 柴 そこから垂れてしまうわけですよ。しかも昭和42年架設のため、水切りなども設けていない。そのため耐候性鋼材の桁のうちジョイントよりの接続部の補助桁に悪性錆が集中して発生しています。メインの桁にはいかずに済んでいますが、今後のことを考えて修繕が必要であると感じています。


拡幅部の上部構造(左)/耐候性鋼材の損傷状況(右)

腐食状況の拡大写真

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