道路構造物ジャーナルNET

政令指定都市化して10年余 保全も着実に進める

静岡市 南北交通強化、大河内橋など架け替え

静岡市
建設局 道路部長

柴 吉寬

公開日:2016.03.16

2,648橋、35トンネルを管理
 最大は新日本坂トンネル

 ――次に保全について政令指定都市になって10年余がたちますが、市内は河川や山間地が多く、県からの道路事業移管当初は非常に苦労されたと聞いています
 柴 そうですね。大分落ち着きましたが、当初は苦労しました。県からも出向という形で残っていただき、スムーズに引き継ぐことができました。課題であったのは新日本坂トンネルでした。3,000㍍を超える同トンネルの移管は5年猶予をいただき、管理の移行を慎重に行いました。


新日本坂トンネルの点検(左)、坑口状況(中)、土木施設監視センター(右)

 ――橋梁の内訳から
 柴 本市の管理する橋梁は2,648橋あり、橋種別内訳は鋼橋324橋、PC橋367橋、その他RC橋など1,957橋となっています。供用年次別では51年以上の割合が40.6%(1,076橋)に達しており。今後は高度成長期に造られた多くの橋梁が順次高齢化することで、10年後には998橋が新たに橋齢50年を迎えることになり、78%が供用50年以上のいわゆる高齢橋(下円グラフ)になります。しっかりとした計画と保全が必要です。

 橋長別は2㍍以上100㍍未満が2,587橋、100㍍以上200㍍未満が28橋、200㍍以上300㍍未満が13橋、300㍍以上が20橋となっています。最大は静岡大橋の905.1㍍(PC2径間単純T桁+11径間連続PC箱桁+PC2径間連結T桁)です。

 ――トンネルは
 柴 本市では35トンネル(総延長12,494㍍)を管理しています。
 市域の約80%を山間地が占めているため、管理数は20政令市の中でも4番目に多くなっています。特に延長の長い国道150号新日本坂トンネル(2003年に2車線化、片側2車線の無料トンネルとしては国内最長)は、焼津市と本市を結ぶ延長3,104㍍の重要なトンネルで、交通量も多くAA等級に区分されています。トンネルが集中しているのは、中山間部で、特に南アルプスの玄関口である井川地区に多くなっています。同トンネル群は、リニア中央新幹線の資材運搬経路に活用が見込まれていますが、内空断面が狭く、劣化が進行しており、補修が必要なトンネルが多いことが課題です。
 工種別は在来矢板工法が22(5,961㍍)、NATMが10(6,310㍍)、素掘りが1(203㍍)、カルバートが2(20㍍)となっています。
 延長別は100㍍未満が11、100㍍以上200㍍未満が9、200㍍以上300㍍未満が4、300㍍以上400㍍未満が4、400㍍以上1,000㍍未満が5、1,000㍍以上が2となっています。平成17年度に政令指定都市への移行に伴い、静岡県から国道5トンネル(3トンネルは準備期間を経て平成22年に移管)、県道19トンネルの移管を受けました。なお緊急輸送道路上に位置するトンネルは11トンネルとなっています。
 供用年次別内訳は供用後50年を経過しているものが35%に達しています。1950年代に大井川上流のダム建設(上記の井川地区)に伴い、トンネル建設のピークがあったためです。また、高度成長期後半の70年代にも再びピークを有しています。今後の変状対策、設備更新を計画的に実施していく予算の確保が課題です。
 ――笹子トンネル型の天井板を有するトンネルは
 柴 新日本坂トンネルの焼津側坑口に65㍍ほどありましたが、昨年度にすべて撤去しています。

橋梁 鋼橋で判定区分Ⅲの割合多し
 経年劣化による損傷が顕著、疲労による損傷はなし

 ――点検を進めてみて、劣化の傾向を橋梁から
 柴 平成26年度より近接目視による点検を行っており、これまでに1,193橋(45.1%)の点検を完了しました。各年度の点検数は26年度に412橋(鋼橋25橋、PC橋48橋、RC橋など339橋)実施し、27年度は781橋を実施しました。
 26年度に実施した点検結果は、判定区分Ⅰが65橋、Ⅱが283橋、Ⅲが64橋、Ⅳが0橋となっています。比較的判定区分Ⅲが多かったものは鋼橋であり、点検した25橋のうち9橋が該当しました。同様にPC橋は5橋が該当する結果となりました。
 部材別では、RC床版やRC主桁にうき、剥離、鉄筋露出、断面欠損などが多く確認され、鋼製部材では腐食が多く見られています。特にRC床版部分は経年劣化による損傷が顕著に見られます。高度成長期にかけた橋の中では、調査してみるとコンクリート中から丸鋼が出るケースもありました。施工精度という点からみれば古い橋梁の中には問題があるものもあるかもしれません。また、山間地などでは凍結防止剤中の塩化カルシウムが伸縮装置から橋の下面にまわり鋼製桁を腐食させたケースが出ています。


平成26年度の橋梁点検結果①

平成26年度橋梁点検結果②

損傷状況例:中村橋におけるRC床版の鉄筋露出(左)、寿橋における鋼桁の腐食(右) 

 ――疲労による損傷などはありませんか
 柴 国道150号、(主)山脇大谷線などでは1日交通量25,000台を超えますが、疲労による損傷はみられていません。ただ、今後は供用後50年を迎える橋梁が多くなっていくことから、疲労による損傷は徐々に生まれてくると考えています。

トンネル 覆工コンクリートのうき・剥離が多し

 ――同様にトンネルは
 柴 本市では、静岡県道路トンネル点検要領を参考に、平成22、23、25年度の3カ年に近接目視による点検を34箇所で実施しました。点検結果は判定区分5(次回点検を待たず対策を実施)が4箇所、同4(早い段階で対策を実施)が9箇所、同3(計画的に対策を実施)が14箇所、同2(継続的に点検を実施)が7箇所となりました。
 最も多い変状は、材料劣化による覆工のうきや剥離、また初期劣化・施工方法に起因する劣化などによって生じた目地部のブロック化(コールドジョイント化)、豆板も確認されています。落下する恐れがあるものは点検時に除去し、今後の進行により落下が予見されるものは、剥落防止工により対策を実施しています。軸方向へのひび割れという重大な損傷が予見される点検結果は出ていません。
 次いで、防水工の未設置や染み出しによる漏水が多く、路面に直接影響を及ぼすものは止水注入工や導水工により集束して排水工へ導くことにしています。在来工法のトンネルでは天端周辺へのコンクリート充填不足や緩みなどによる背面空洞も確認されており、モルタルなどの注入により対策を実施しております。
 なお、判定5、4と評価した13箇所のうち6箇所については、応急修繕(局部的な覆工目地周辺のひび割れによるコンクリートのブロック化や鉄筋の発錆による浮きなどに対して簡易な剥落防止ネットなどにより短時間で処置が可能な修繕)にて対応し、7箇所については、補修工事によって本対策を行う必要があると判断しています。同3と評価した14箇所は、次回定期点検の結果に基づいて今後の事業計画に取り込んでいきます。

ご広告掲載についてはこちら

お問い合わせ
当サイト・弊社に関するお問い合わせ、
また更新メール登録会員のお申し込みも下記フォームよりお願い致します
お問い合わせフォーム