トンネル 花崗閃緑岩がほとんど
AGFを採用するケースも
――橋梁、トンネルについて事務所ならではの課題は
永井 トンネルの岩質は地質的に花崗閃緑岩のところがほとんどで田老に一部安山岩があるのみです。基本的に岩質は堅いのですが、一部に風化している箇所もあります。トンネルによって険しい山岳を抜けるケースと、土被りが薄い箇所を抜くケースがあります。まずは坑口部から花崗閃緑岩の新鮮な部分を掘進する場合、もしくは土被りが薄くなる箇所については、補助工法(AGF)を採用するケースもあります。涌水の問題はありません。
橋梁はハイピアになる箇所が部分的に出てきます。桁下クリアランスの最高は新思惟大橋で100㍍以上、ピア高最高は青野滝橋(50㍍超)となっています。また、摂待大橋の下部工については、P2橋脚の高さが50㍍に達するため、スピードアップを図るべく鉄筋を1ロット分予め組んで、タワークレーンを用いて架設することを繰り返す方法を採用しています。
――三陸国道事務所は急ピッチで復興道路事業を進めなくてはなりませんが、品質確保のためにどのようなことを行っていますか
永井 三陸国道事務所ではトンネル及び橋梁工事を多数発注し、施工を行っていることから、完成時期が集中するため将来的な維持管理の観点から、コンクリート構造物の高耐久性・高品質化が求められています。そこで、コンクリートの品質確保に向けた取り組みを中心に行っています。
山口方式を採用
トンネル覆工バージョンの施工状況チェックシート、目視評価シート
――コンクリートの品質確保に向けた取り組みとは
永井 東北地方整備局では橋梁下部工などコンクリート構造物の表層品質の確保対策として、山口県のひび割れ抑制システムで開発されて効果をあげている「施工状況把握チェックシート」と、横浜国立大学の細田准教授らか開発した「目視評価法」を導入することとし、昨年度から「コンクリート施工状況把握チェックシート」と「表層目視評価」の試行を開始しました。三陸国道事務所では田老第6トンネル工事において、これをトンネル覆工コンクリートの表層品質の確保対策として取り入れて、トンネル覆工バージョンの施工状況チェックシート、目視評価シートを横浜国立大学の細田准教授及び施工者の西松建設らと共同で作成しました。
施工状況チェックシート(田老第6トンネル版)
――具体的にはどのような項目をチェックするのですか
永井 施工状況チェックシートでチェックする項目は、例えば、①生コン打ち継ぎ時間は1.5時間以内か、②打設高さは50㌢以内か、③バイブレーター挿入間隔は50㌢以内か、④バイブレーターの挿入は全層10㌢以上挿入しているかなどです。このほか、橋梁下部工バージョンにない項目として、充填管理、セントル養生に関する項目があります。これらの項目が確実に実施されているか、目で見て確認出来るか、例えば、「バイブレーター挿入間隔50㌢以内」という項目に対しては、事前に型枠や鉄筋に50㌢ピッチで目印を付けておき、その目印位置にバイブレーターを挿入しているかをチェックするなどの工夫を行いながら、より丁寧な施工を目指しました。
目視評価シート
目視評価シートでチェックする項目は、①剥離、②気泡、③水はしり・砂すじ、④打設しま、⑤施工目地不良、⑥窓枠段差です。橋梁下部工バージョンとの主な違いは、ひび割れに関する項目が無く、剥離に関する項目があるところです。これらの項目について、打設ブロック毎に1項目4点満点、合計24点満点で評価を行います。この評価点をもとに次回施工ブロックに改善策を施し、PDCAサイクルを実践することで効果的に施工のレベルアップを図ります。
SWAT用いて表層の緻密性を測定
田老第6トンネルから試験的に実施
――これらの対策の取り組みの効果は
永井 効果の検証として、表面吸水試験SWATによりコンクリート表層の緻密性を測定し、目視評価点との相関を調べています。SWATの計測値は値が小さいほど吸水速度が遅く緻密で良質なことを示しますが、比較結果から、目視評価点の上昇とともに吸水速度が減少していることが分かります(図-3)。目視評価によりPDCAサイクルを実践した結果、出来栄えが向上したコンクリートは、コンクリートの表層品質も向上しているという結果が得られました。
なお、田老第6トンネル工事での覆工コンクリート品質確保の取り組みを経て、東北地方整備局において、トンネル覆工コンクリート構造物品質確保対策の試行が始まりました。
目視評価点と吸水速度の相関
――そのほかコンクリートの品質確保に向けた取り組みは
永井 トンネル覆工コンクリートの品質確保の取り組みとしては、施工業者の技術提案により、セントル加温システム、バルーン養生、浸水養生(アクアカーテン)等の養生を実施しています。橋梁下部工においては、新技術を積極的に活用し、保湿効果の高い養生マット、透明樹脂型枠の使用、温度応力解析による施工の改善、凍害抑制のためコンクリート空気量を4.5%から6%に変更、などの取り組みを行っています。
天端部をきれいに締め固めする手法
透水シート使用しあばたを抑制
――小山田トンネルではさらに先進的な取り組みを用いていますね
永井 天端部の覆工コンクリートを施工する時に引き抜きバイブレーターを予め型枠の中にセットしておいて、生コンを打設し、打設完了後バイブレーターを引き抜く手法を採用しています。それによって仕上げの締め固めができるので、非常に天端の方もきれいに施工できます。通常バイブレーターがついていないセントルの場合は、最後に生コンがずれたような跡が天端に残ります。それを改良する手法です。また覆工背面の方の施工法ですが、アバノンという透水シートを型枠に付けておくことで、アバタが残りやすいトンネル過半部のあばたを抑制する方法も用いています。
天端もきれいに施工できた小山田トンネル