極小口径の削孔で床版内部を調査可能な
コンクリート微破壊検査研究会(仮称Triple I研究会)を設立
一般社団法人 日本建設機械施工協会
施工技術総合研究所
研究第二部 部長
谷倉 泉 氏
(一社)施工技術総合研究所(施工総研)とティ・エス・プランニング、トクヤマエムテックは、共同で小径微破壊コンクリート内部調査手法「Single i工法」(NETIS HK-150004-A)を開発した。従来の小口径コアドリルよりもさらに小さい削孔径(φ5㍉)で開けた孔に浸透性の高い特殊な樹脂を注入し、同じ位置でφ9mmの再削孔を行って樹脂が浸透して変色したひび割れ箇所を高解像度の内視鏡で撮影することにより損傷状況を確認できるものである。小型の軽量機器でコンクリート内部の健全性が調査できるため、母材に対する損傷を最小限に抑えつつ確実に損傷箇所を視認できることが特徴だ。調査深さの範囲は250㍉までとしているが、φ9、φ15.5㍉ではマスコンクリートを対象とした15㍍程度も可能だ。調査対象は主に床版で、内部の凍結融解やアルカリシリカ反応による0.01㍉程度の微細なひび割れ、もしくは増厚部の層間剥離などを簡易かつ低コストで調査できる。新年には同技術の普及を目指し「Triple I協会」を設立する予定である。その狙いについて事務局長を務める予定の施工総研研究第二部の谷倉泉部長に聞いた。(井手迫瑞樹)
上向き施工も可能、鋼板もまとめて孔明け可能
現場で孔壁内部をプリントアウト
――技術概要と協会設立の目的から
谷倉部長(会設立後に事務局長就任予定) 床版内部を確実かつ精度よく、その場で調査できる唯一の工法であると自負しています。そうは言っても実際の現場で、安く、早く、確実に調査できるかどうかを発注者が認めてくれなくては、組織化しても意味はないと考えていました。試みに新工法のプレゼン資料を作成、配布し、興味を示してくれた北海道開発局や阪神高速、NEXCOさんなどが所管する合計30橋で調査を実施しました(施工例:左写真)。その多くは舗装の上から床版に削孔を行い、床版内部を内視鏡でモニタリングしながら撮影し、撮影後2、3分でひずみ差の極めて小さな内面の写真を現場でプリントアウトできる技術です。
それを目の当たりにして頂いた方々には、これは便利で良いという評価が得られ、調査事例が増加しています。実況調査での大きな課題は、桁下から調査できるかどうか、舗装や防水層、滞水部があったり、ひび割れも垂直方向だけでなく水平方向に層状の多数の水平ひび割れがあった際に本当に調査できるのか、というような点があります。本工法は、舗装上からも削孔およびひび割れ視認のための樹脂注入の容易さが出来ますし、軽量な調査治具の真空固定による鋼板下面からの上向き削孔および樹脂注入も可能であるため、床版下面に鋼板補強が多い都市高速でも喜んで頂きました。こうした経緯から組織化する意義があると判断し、Triple I研究会を立ち上げる予定です。会の名称イメージは、「Study group for Innovative and Intelligent Investigation system」の「3つのI」に掛けています。「イノベーション(INNOVATION:技術革新)、インテリジェンス(INTELLIGENCE:知性)、インベスティゲーション(INVESTIGATION:調査)」がそれです。会長には施工総研の見波潔所長が就く予定です。