道路構造物ジャーナルNET

7年後に売上300億円目指す

富士ピー・エス 伸び代は保全と建築

株式会社富士ピー・エス
代表取締役社長

菅野 昇孝

公開日:2016.01.16

 富士ピーエスは、昨年度までの3期連続で増収増益を達成し、今期も計画に比べて上振れで推移している。その理由としては橋梁を中心とした土木の好調の一方で、堅実な建築PC製品の貢献もある。今後は、土木についてはNEXCO3社の大規模更新におけるプレキャストPC床版需要の取り込みなど更新・保全事業、建築はPC造のシェアアップでさらなる売上増を目指し、7年後には売上高300億円達成を目指す。その内容について菅野昇孝社長に聞いた。(井手迫瑞樹)

実は……建築床材用ハーフスラブの生みの親
 卒論で研究、長谷工から引き合い、7年間研究

 ――比較的技術開発畑が長いですね
 菅野社長 当社に入社したのは1978年度ですが、九州工業大学の卒論は当社委託研究を題材にしたものでした。その内容は、後に当社を支えることになるハーフスラブで、当初は土木分野で普及させるためのものでした。その流れで入社したのですが、入ってから1年経った時に長谷川工務店から引き合いがあり、曰く「建築の床材として使いたい」。当時同社はプレキャスト部材を用いた工業化工法を推進していましたが、スラブは配管やダクトなどが入ってくるのでフルプレキャストはそぐわない。しかしスパンも飛ばしたい、ハーフプレキャストのPC床材はちょうど良いということで採用されました。
 ――社長は建築が専門だったのですか
 菅野 生粋の土木です。でも6年ほどその研究に勤しみました。後でも話しますが今でも愛着があります。
 その後、現場、設計を交互に繰り返し、当社初の本格的PC斜張橋である合角(かっかく)さざなみ大橋を最後に手掛けて後、技術本部長や施工本部長を務めて、3年前に58歳で社長に就任しました。

売上は243億円、土木が12.6%、建築が22.2%増
 1年前倒しで次期計画策定へ

 ――今期の見通し、中期的な経営目標について
 菅野 今年度は現5ヶ年中期計画の4年目にあたりますが、売上、利益とも計画に比べて上振れています。ここ3年も増収増益を達成しており、2014年度(14年4月~15年3月)の売上および利益は連結で243億円、土木が前期比12.6%増の売上155億7700万円(63.9%)、セグメント利益17億8900万円(前期比48.7%増)、建築が前期比22.2%増の売上85億7600万円(35.1%)、セグメント利益13億8900万円(14.7%増)、その他(不動産賃貸事業など)が1%となっています。
 土木の内訳は新設橋梁:補修補強:マクラギ:その他で80:7:7:6という比率になっています。建築はマンションなど集合住宅のPC床板(ハーフスラブ、FR板)が45億円と耐震補強(パラレル工法)が30億円とこの2つで大半を占めます。なかでもPC床板のシェアは業界トップです。残り10億円程度はフルプレキャストの梁、柱などです。


施工例:伊万里湾大橋(現在は供用、国土交通省九州地方整備局)

 中期計画は4年前に作成したわけですが、環境は作成時と比べて良い方に変化していると感じています。新政権の発足、復興需要の進捗、東京五輪の決定など外部環境もそうですし、同業他社の合併、連携などで過当競争の解消がなされ、業界自信の努力も功を奏していると思います。以上の状況から、次期中期計画は前倒しで作成し、来季から新しい中期計画に基づいて経営していくことを考えています。
 ――次期計画の目玉は
 菅野 今年の株主総会で就任3年目を迎えます。社長就任当時の売上は170億円でしたが、当時から体力的には200億円程度あると考えていました。これを10年で300億円まで持っていくことを目標としました。単利で毎年5%(約10億円)ずつ売上高を上げていくことで達成でき、決して無理ではないと考えています。基本はそれをイメージして作成することになると思います。

保全・更新分野で売上の35%目指す

 ――どのようなやり方でそれを達成しますか
 菅野 今までと同じ手法では無理だと思います。公共投資が毎年5%ずつ上がっていくわけではありません。新設予算は東京五輪までは1~2%程度増加し、その後は減少に転ずるか良くて横ばいでしょう。
 一方で保全予算は間違いなく増えていくと思います。そこを狙うのは当然で、とりわけNEXCO3社の大規模更新・修繕事業はPC専業にインセンティブがあります。床版取替は総予算3兆円強のうち1兆6,000億円強を占めており。これからは基本的には、プレキャストPC床版が使用されます。年平均に換算しても1,000億円の需要があるわけで、現在のPC業界の土木関連売上(2,500億円)を考慮すると非常に大きな市場と言えます。ここで売上げをコンスタントに確保するとともに利益が出せる技術力をつけなければいけません。そのために社内で専門のプロジェクトを立ち上げています。この分野でのアドバンテージとしては業界トップクラスである全国6工場を有しています。現場に近いため技術的に対応し易く、運搬費も安くなるためコストパフォーマンスも良くなります。
 また保全分野における独自技術も有しており、これを推進することでシェア、売上ともに増やしていきたいと考えています。具体的には売上300億円達成時に保全・更新事業を全体の35%程度に成長させたいと考えています。
 ――最近は自治体においても30㍍前後の小規模橋梁の架け替え事例が出てきています。こうした市場への対応は
 菅野 大切だと考えています。そうした市場に本格参入するためには橋梁の撤去から再設置をコンパクトに施工できる体制を整えなくてはいけません。市場が今以上に拡大すればそうしたパッケージを作り、営業していく必要があるとは考えています。

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