今川橋で架替えを検討
PC鋼線の腐食が進む
――塩害対策の実施例は
水口 近年では、平成25年度に一般国道304号の新打尾橋(南砺市大鋸屋地内)で、凍結防止剤を含む水によって床版の鉄筋腐食が進み、ひび割れの助長に至ったため、床版の打ち替えを実施した例があります。
(左)新打尾橋/(右)同橋では床版の打替えを行った
また、県道富山魚津線の常願寺川下流に架かる今川橋(富山市横越~水橋辻ヶ堂地内、橋長342㍍のポステン単純T桁×8連、海岸からの離隔は50㍍程度)において、元々のグラウト充填不良と、飛来塩分による主桁の鉄筋および鋼線などの腐食が進んでいます。
(左)今川橋の位置/(右)同橋の橋梁概要
(左)今川橋の現況/(右)今川橋の劣化状況
――鋼線は一部破断もありますか
水口 破断までは至っていませんが、コンクリートの主桁軸方向へのひび割れや浮き、剥離が助長され、放置しておくと橋自体の耐荷力の低下も懸念されるため、来年度以降の架け替えを検討しています。
――今までに補修は施していたのですか
水口 複数回行っています。平成15年度には主桁へひび割れ注入および保護塗装、23年度には新たに劣化した個所および平成15年度に補修した個所が再劣化したため断面修復しました。それでも26年度の点検で新たにひび割れが発見されたため、架け替えを検討するにいたったものです。
――グラウトの充填不良といったケースは今川橋の他にもありますか
水口 数は把握していませんが散見されます。横締も同様に充填されておらず劣化している橋梁があります。
――近年は、断面修復に伴う鉄筋防錆だけでなく、防錆材入り含浸材、塩分吸着剤を混ぜたポリマーセメントモルタルによる補修など状況に応じて様々な工法が各地で採用されています。特に塩害の場合、残留塩分による腐食電流の発生により再劣化するケースもありますが、富山県ではどのような断面修復工を行っていますか
水口 富山県では、劣化や剥離したコンクリート部分を除去して、鉄筋の防錆処理を施した後、ポリマーセメントモルタルによる断面修復を行っているものがほとんどです。
――鋼橋塗替の昨年度および今年度実績は
水口 昨年度は9橋19,590平方㍍、今年度は12橋26,000平方㍍(いずれも高欄再塗装は含まず)で施工しています。基本的に3種ケレン、重防食塗装ですが、常温金属溶射を県東部の入会橋(県道虎谷大榎線、魚津市鹿熊~滑川市上大浦地内)の支承に実施する予定です。
(左)入会橋遠景/(右)支承の損傷状況
PCB対策は5橋で完了
鉛含有塗膜対策は他県の状況を踏まえて検討
――PCBおよび鉛を含有している塗料について
水口 PCBを含む塗料により塗装された橋梁の再塗装については、これまでもPCB特別措置法に基づき、適切に処置しています。今後、再塗装する際には、周辺環境及び従事する作業員に悪影響を与えないよう配慮する必要があると考えており、塗膜の除去時における粉塵化の少ない工法(剥離剤工法等)を選択するともに、適切に剥離塗膜を処理したいと考えています。鉛を含む塗料により塗装された橋梁の再塗装については、昨年5月に厚生労働省から「鉛等有害物を含有する塗料の剥離やかき落とし作業における労働者の健康障害防止について」が通知されていることから、担当者に周知徹底するとともに、作業員の健康障害防止対策については、国や他県の状況も聞きながら検討していきます。
――具体的にPCB該当橋梁の対策は
水口 県管理橋梁のうちPCBを含む塗料を使用した橋梁は5橋(156号、南砺市、S46完)あり、5橋とも再塗装時(H3,H4,H16)にPCBを含まない塗料で再塗装済みです。
PCB含有塗膜については全て落として保管しております。
――耐候性鋼材を採用した橋梁の劣化・損傷事例はありますか
水口 県管理橋梁で耐候性鋼材を採用した鋼橋は14橋ありますが、これまでの点検で劣化は確認されていません。但し遠望目視しかしていない橋梁もありますので、今後の近接目視点検では注意して観察していきたいと考えています。
776箇所中226箇所で対策を完了
――全国的に異常気象などによる土砂災害が相次いでいますが、富山県として道路に面する斜面や、古い法面などをどのように補修・補強して道路を守っていきますか
水口 平成19年度から21年度にかけて実施した道路防災総点検等の結果、落石崩壊などの要対策箇所は776箇所あり、26年度末までに約30%の226箇所の対策を完了しています。今後も引き続き、孤立集落の解消や緊急通行確保路線、バス路線などを優先して、安全確保に向け、災害の未然防止対策を実施していく予定です。
アウトプレート+eプレートで補強
大谷橋の補修補強
――新技術やコスト縮減策または県独自の新技術・新材料について
水口 橋梁補修における新技術の活用事例として、大谷橋(橋長23㍍、RC単純中空床版橋)で主桁補強にアウトプレートおよびeプレートによる補強を行いました。同時に床版上面には30~70㍉の均しコンクリートを打設した上で、防水工および舗装打ち替えを行いました。
(左)大谷橋の遠景/(右)アウトプレート工法およびeプレート工法で主桁を補強
補強概要図
――同橋の損傷状況は
水口 主桁下面に横断方向のひび割れが多数発生している状態でした。通常は炭素繊維シートなどで補強するところですが、この損傷状況では(通常のシート補強では)補強量が莫大になることが予想されました。この損傷状況に対応するため、両端に定着帯を有する炭素繊維プレートを緊張して既設構造物に固定定着するアウトプレート工法((CFRPプレート)75×3㍉)を6箇所に2層ずつ、薄層ながら補強シート数層分の効果を有するeプレート(HM1440)140×4㍉を15箇所に設置しています。当該橋梁は中空床版橋でありますが、中空部の下側の部分は、コンクリート厚さが薄く、アウトプレートの定着体のアンカー長がとれないため、アンカーが打ち込める箇所にアウトプレートを最大限配置したうえで、不足分をeプレートの配置により、所定の耐荷力を確保したものです。
大谷橋の損傷状況
――今後構造物の老朽化が進んでいく中で、保全費用は想定を超えて上がっていく可能性もあります。全てを同じ物差しで測るのではなくて、今までの使われ方や重要度などに応じて点検頻度や橋梁の重量制限などを行っていき、投資対象や投資額を適正化していくということは考えていきますか
水口 理には適っていると思います。市町村ではそうしたことがやりやすいかと思います。ただし県管理道路は幹線的度合いが高い道路が多いのも事実です。その中で大河に架かる橋梁と山間地の道路など、交通量や重要度に応じて、管理レベルを考慮するということは1橋、1橋を把握した上でのことですが、やっていくことは必要であると考えますし、今後を考えればそうならざるを得ないのではないでしょうか。
――ありがとうございました