愛知県は全国でも4番目の人口を誇る巨大自治体であり、自動車産業を中心に工業が盛んな地域でありながら、三河地域を中心に農業が盛んな地域でもある。今年度末には新東名高速道路が開通予定で、ますます便利になる愛知県の道路事業について小川秀史道路建設課長に聞いた。(井手迫瑞樹)
――愛知県の地勢と道路整備の考え方について
小川 愛知県は、日本のほぼ中央に位置し、古来の尾張と三河の2国を合わせた地域で、南は太平洋に面し、西は三重県、北は岐阜県、北東は長野県、東は静岡県とそれぞれ接しています。人口は全国4番目である744万人を擁し、日本一の工業県であると同時に中部地区最大の農業県でもあります。人口277万人の大都市名古屋から、自然豊かな三河山間部、三河に浮かぶ島々、そして農業地帯と、日本のありとあらゆる面が集まっている多様で活力のある地域です。
今年度末には新東名高速道路の浜松いなさJCT~豊田東JCTの開通が予定されており、静岡方面との結びつきが一層強化されるものと期待しています。
県が管理する道路延長は、一般国道829㌔、主要地方道1,333㌔、一般県道2,485㌔です。その合計は4,647㌔に達します。道路改良率は77.5%で、全国平均73%と比べて4.5%ほど高い状況です。
――道路整備の考え方は
小川 プロジェクト関連を含む事業効果の高い事業や、早期に効果が発現する事業を優先して整備を図ることにしています。高規格幹線道路および主要港湾、中部国際空港へのアクセス強化をはじめとする道路や、都市間ネットワークの整備とスムーズな移動空間の提供に寄与する道路、山間の暮らしを支える道路、防災・減災に寄与する道路などの整備を優先しています。
事業中の構造物一覧(詳細設計中の橋梁形式は予備設計段階のもの)
473号BP事業は概成、残る0.7㌔も新東名開通に合わせ供用
本宿高架橋の一部で溶射を採用 後方工事桁送り出し工法で架設
――高規格道路へのアクセス整備から
小川 国道1号から今年度末の開通が予定されている新東名高速道路の岡崎東ICへのアクセス強化と岡崎東部工業団地への企業進出に伴う交通量増加に対応することを目的とした、一般国道473号バイパス事業があります。同バイパスのうち、岡崎市本宿町から同市樫山町までの東名高速道路や河川をまたぐ約3.6㌔区間については、昨年度末に供用開始しました。また、バイパスから料金所に向かうインターアクセス区間0.7㌔に関しては、新東名高速道路の事業に合わせて供用を開始する予定です。
国道473号大幡工区(左)/樫山工区(右)
同本宿工区(左)/上衣文工区(右)
――事業で建設した主な構造物は
小川 本宿高架橋、上衣文(かみそぶみ)高架橋、大幡(おおばた)高架橋、本宿トンネルがあります。
本宿高架橋は鉢地川渡河部として長さ136㍍の4径間連続鋼床版少数鈑桁、東名高速道路跨道部として95㍍の3径間連続鋼箱桁橋(床版は合成床版を採用)からなります。防食に関しては鉢地川渡河部で耐候性鋼材、東名道跨道部で亜鉛・アルミニウム合金溶射(JIS H 8300「亜鉛・アルミニウム及びそれらの合金溶射」)を採用しています。同橋の東名道跨道部については。上部工の架設を行う際に「後方工事桁式送り出し」工法を採用しました(施工は川田工業)。通常の送り出し架設は、送り出す際の前方に手延べ機と呼ばれる仮材を取り付ける「手延べ式送り出し工法」が採用されますが、今回は東名高速の通行止め規制時間に制約があったため、手延べ機の解体を行うことができません。そのため本桁を(従来工法の)手延べ桁のように使い、後ろに架設桁をつけ、手延べ機と連結部のみを切り離せばすぐに桁降下作業が行わる「後方工事桁送り出し」工法を採用しました。本桁が手延べ桁のようにすることで、非常に重くなるため、架設桁後方にカウンターウエイトを置くことで均衡が取れるよう配慮しました。
本宿高架橋の架設状況
上衣文高架橋は長さ187㍍の5径間連続鋼床版鈑桁、大幡高架橋は91㍍のPC3径間連結コンポ桁+268㍍の7径間連続鋼床版少数鈑桁からなります。防食については両橋とも耐候性鋼材を使用しました。