道路構造物ジャーナルNET

技術者の配置、分野の偏在を解消し、フレキシブルな組織へ

横河ブリッジ 合併の狙いを名取新社長に聞く

株式会社横河ブリッジ
代表取締役社長

名取 暢

公開日:2015.11.16

鋼橋だけでなくコンクリート橋にも

 ――保全分野に少し触れましたが、新会社では、鋼橋のみではなくコンクリート橋でも補修補強に携わっていかれるのですか
 名取 保全は橋種にこだわらず携わっていきたいと考えています。ただし構造物は橋梁に特化します。内容は当社が得意とする鋼部材の疲労対策、先ほどお話しました床版取替、耐震補強、コンクリート桁、橋脚の補修補強など多岐に渡ります。
 ――橋梁の保全事業は塩害、中性化、ASRなどによるコンクリート部材の損傷が目立ってきています。こうした事態への対応は構造的なものだけでは不十分で化学的な引き出しも求められます。また、御社が耐震デバイスの技術・生産を自社で有していることが受注の際のアドバンテージになっているように、補修補強材料を自社生産できる会社が保全工事においては大きな競争力を有しています。そうした方面への対応力向上の施策は
 名取 当社も(コンクリート診断士など)コンクリート関係の資格を有する技術者は旧横河工事を中心に在籍しており、今後そうした資格取得者を増やす方針です。また、材料についても個別の案件ごとにメーカーと共同開発しています。例を挙げますと、鋼橋の疲労亀裂についてですが、従来溶接や添接で直していたものを、樹脂接着によって補修補強する技術をコニシと共同開発しました。既に九年橋(北上市)などで、接着剤とボルトの併用による補強当板接合を試験的に使っています(接着剤とボルトの併用)。これにより疲労による再損傷(溶接補修で見られる)も防げますし、ボルト接合による母材の孔明けなどを最小限に抑制(樹脂接着時の仮止めは必要。但し小径で済む)できます。こうした開発はコンクリート分野でも応用できると考えています。


接着剤を使用した当板補強

ミャンマーを中心に東南アジアを狙う
 MECと技術協力関係を構築

 ――最後に、国内市場が縮小していく中で、リスクもあるが成長性も高い海外事業への展開をどのように考えていますか。個人的には横河の海外橋といえばストーンカッターズ橋(香港)などが印象に残っていますが
 名取 仰せのとおり海外事業はリスクと隣り合わせであり、それを意識せざるを得ません。資金も含めても大プロジェクトは当社の規模を考えると単独での取り組みは現実的ではありません。そのため他の会社との連携が必然となります。


香港 ストーンカッターズ橋の製作・架設

ミャンマー ティージャイ橋の架設

 横河単独として確実に海外展開していきたいという考えももちろんあります。当社は既にベトナム(ハノイ)、インドネシア(ジャカルタ)などに海外拠点を置いていますが、最近ミャンマーも同国の鋼構造ファブリケーターであるMEC(ミャンマー・エコノミック・コーポレーション)と技術協力関係を構築し、拠点を築いています。当社が設計や架設などのエンジニアリングを担当し、同社で製作するという関係でミャンマーひいては東南アジア市場全体のハブ工場として位置づけていければと考えています。鋼材も将来は日本からも入れていきたいですね。
 課題はミャンマーの土木標準がAASHTO(米国全州道路交通運輸行政官協会)であるということです。これは日本が海外で展開する上で共通の課題でありますが、できれば道路橋示方書を標準にしていただけるよう働きかけていきます。そうでないとどうしても競争力の点で不利です。道示を標準にできれば材料もJIS規格を準用できるわけで、当社だけでなく日本の産業全体として有利になります。これは当社だけでなせることではありませんが、国土交通省などと一体となって導入を働きかけていきます。
 ――ありがとうございました

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