技術者の配置、分野の偏在を解消し、フレキシブルな組織へ
横河ブリッジ 合併の狙いを名取新社長に聞く
株式会社横河ブリッジ
代表取締役社長
名取 暢 氏
横河ブリッジと横河工事は、10月1日に合併して新「横河ブリッジ」となり社長には名取暢氏が就任した。売上は横河ブリッジの410億円に対し、横河工事は290億円と非常に「親孝行」な子会社だった。それをあえて横河ブリッジにとり込んだのはなぜか、合併の狙いについて名取社長に聞いた(井手迫瑞樹)
3つのシナジーを強調
――親孝行の横河工事と鋼橋ファブ最大手の横河ブリッジ、今回の合併に業界は驚きました。合併によって得るシナジー、失うシナジーがあると思うのですが
名取社長 1つは橋梁の新設案件において現場配置技術者の不足から少なからず入札機会を逸していたという事実です。横河ブリッジだけでは、どうしてもそういうことが起きていました。無論、横河工事からの出向によってそれを補うということもしていましたが、横河工事も単体の会社として動いていましたから必ずしもスムーズにはできませんでした。今後は1つの会社になることで、人の配置がより最適化され、生産性も向上すると思います。
架設準備が進む新天門橋の現場
第2に、技術者の分野の偏りという事実が顕在化しつつあったことの是正です。横河ブリッジの保全分野は旧横河メンテックを継いで横河工事が担ってきました。当初は横河ブリッジで新設事業に携わってきた技術者がスライドして保全を担当したため、構造の全体系を「経験的に」分かった上で各種補修補強工事に対することができました。しかし分立後年月がたち、プロパー化していくと、そうした全体的な構造を知識では分かっていても経験はしていない技術者が補修補強工事を担うというケースが増えてきました。
部分最適、全体不適格の芽を育つ前に摘む
――部分最適、全体不適格の芽が見える、と
名取 今はそこまで至りませんが、放置していればそうした事態に至るでしょう。逆に横河ブリッジの新設を担う技術者は保全的な現場経験、構造物がどのように劣化しているか、メンテナンスしやすい構造物とはどのように作ればいいのかという引き出しに欠けていることは否めません。当社の競争力を高めるためにも技術者のフレキシブル性を高めることは喫緊の課題です。そのためには新設系と保全系の会社がグループ内で分立していては抜本的な是正はできず、合併による組織の統一は必要でした。
第3は保全事業の拡充です。第1の理由と対を成しますが、技術者のマスを広げ適格な人員配置ができるということは、保全事業での受注拡大機会の増大にもつながります。これも合併により期待できるシナジーといえます。
保全事業のさらなる拡充を狙う(阪和道の特殊橋耐震補強、井手迫瑞樹撮影)
さらなるリスク回避が必要
――では失うものは何でしょうか
名取 売上的に失うものはないと考えています。横河工事において現在、同業の鋼橋ファブの仕事をJVあるいは下請としていただいているケースはほとんどなく、元請かゼネコンなどからの下請工事がほとんどです。
強いてあげるとすればリスク対応力でしょう。あってはならないことですが、当社が何らかの事故を起こし(指名停止され)た場合でも横河工事があった時代は、同社が仕事を受注することができました。しかし今後はそうしたリスク分散ができません。今まで以上に安全性やコンプライアンス遵守によりリスク回避に努めることが重要と考えています。