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「第3次あいち地震対策アクションプラン」で耐震補強も進める

愛知県 4373橋、60本を管理 長寿命化修繕着々

愛知県
建設部 道路維持課長

山田 哲夫

公開日:2015.11.20

40橋を対象に耐震補強を進める
 通行不能になることを防ぐため、踏掛版設置

 ――耐震補強の進捗状況は
 山田 本県では、第二次あいち地震対策アクションプランに基づいて、大規模地震時に落橋や崩壊の危険性が高いとされる昭和55年よりも古い基準による複数径間の橋梁の対策を3プロ基準で進めてきましたが、同対策は昨年度でおおむね完了しました。
 今後は、昨年度に策定した「第3次あいち地震対策アクションプラン」に基づいて橋梁の耐震対策を進めていきます。


表4 耐震補強の進展状況

写真1 耐震補強の実施例(3プロ対策)

写真2 耐震補強の実施例(フルスペック)

 ――具体的な内容は
 山田 平成23年3月11日に起きた東日本大震災の教訓を踏まえ国土強靭化や南海トラフ巨大地震対策においては、最悪の事態を想定し、ハード及びソフトが一体となった防災・減災対策が求められています。当県は濃尾平野南部、矢作川、豊川等の河口部を中心に広大な海抜ゼロメートル地帯を有しているため、平成26年5月に被害想定を公表、26年12月には第3次あいち地震対策アクションプランを策定しています。また、名古屋市と連携・共同検討し、平成27年8月に地域強靭化計画をの策定しました。前述の被害想定では死者のうちかなりの割合が初期浸水(津波の前の水面上昇による浸水)によって逃げ遅れてしまうという被害想定結果になっています。
 対策の主役は河川堤防や海岸堤防であるわけですが、構造物とりわけ橋梁についても、耐震性能を「従来の落橋や崩壊などの重大な被害の防止」(耐震性能3)から「レベル2地震動に対しても橋梁の被害を限定的に留め、橋梁としての機能を速やかに回復させる対策」(耐震性能2)に引き上げます。
 具体的には、「緊急輸送道路に位置する橋梁」や「社会活動に大きな影響を与える跨線・跨道橋」の対策を進めます(対象は40橋)。対策もせん断破壊のみを対象にしたものからせん断破壊+曲げ破壊を防止するようグレードアップするため、1橋あたりのコストは上がりますが被害の拡大を防ぐためには必要です。濃尾平野南部や、矢作川、豊川などの河口部は特に防災対策を強化する必要があります。
 また、海抜ゼロメートル地帯で液状化が生じる可能性が大きくかつ重要度も高い橋梁では、通行不能になることを未然に防ぐため、土工部との分離を防止する段差対策を実施します。具体的には東日本大震災では踏掛版を設置していた大半の橋梁は、地震後、速やかな通行機能の回復が可能であったことから、踏掛版などの設置(工法は現在検討中)を行っていく予定です。また、橋梁に取り付く盛土部の抜本的な液状化対策として、現道交通の規制を伴わず、背後地に自在ボーリング機械を設置して盛土部直下の地盤改良を行う工法もありますので、このような工法などを念頭に置きながら、液状化対策に取り組んで行きたいと考えています。こうした対策がどの箇所で必要かという判断は、当県だけで行わず、中部版くしの歯作戦で連携する国などと一体となって検討していく方針です。
 ――津波や洪水では橋脚や橋台が洗掘や橋台内部の土砂の吸い出しなどにより損傷するケースもありますがそうした補強は
 山田 そうした水害は一次的には堤防や護岸で防ぐものと考えています。道路事業としてはあくまで液状化対策のみを考えています。
 ――橋梁長寿命化計画に基づく対策の進捗状況は
 山田 平成24年度までの定期点検で緊急対応が必要と判明した758橋のうち、26年度までに200橋の修繕を終えています。

今年度は69橋を対策予定
 上部工の補修補強、過去3年で186橋の実績

 ――上部工補修・補強の過去3年の実績と今年度の計画は
 山田 過去3年の上部工補修・補強は平成24年度が54橋、25年度が53橋、26年度が79橋の合計186橋となっています。今年度は69橋を実施する予定です。過去の補修で最も多い工種は再塗装(26%)で、次いで伸縮装置取替(24%)、床版・PC桁の断面修復・ひび割れ注入(17%)、舗装・橋面防水工(13%)という順になっています。基本的には床版や桁の端部からの漏水などを主因とした損傷が多いように思えます。

 今年度は、再塗装16橋、伸縮装置取替21橋、床版・PC桁の断面修復・ひび割れ注入10橋などを補修予定です。

写真3 国道151号東栄橋(瀬戸市)

写真4 東栄橋の張り出し床版部 活荷重による疲労によりコンクリートはく離、鉄筋露出といった損傷が生じている

写真5 鉄筋を防錆処理し、ポリマーセメントモルタルで断面修復して補修

写真6 一般県道 定光寺山脇線 大洞橋(左)/写真7 鋼桁端部および支承の損傷が生じている

写真8 桁端部、支承を当て板、取り替えて補修、上部の伸縮装置も止水型に取り替えた

写真9 一般県道 白鳥豊橋線 高橋(豊川市)

写真10 支承が損傷している

写真11 支承を交換した

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