道路構造物ジャーナルNET

緩衝材を挟むことで性能を向上

HiPer CF工法 シート量を減らすことでコストを約3割削減

清水建設株式会社
土木技術本部 基盤技術部 コンクリートグループ 
副部長 グループ長

前田 敏也

公開日:2015.10.20

 橋梁の長寿命化修繕計画の進展に伴い、補修補強工事の需要は再び増加傾向にある。コンクリート床版補強向けなどに開発されたHiPer CF(High Performance Carbon Fiber)工法は母材コンクリートとシートの間に緩衝材を挟むことでシートを剥がれにくくし、性能を十分発揮させることで従来の炭素繊維シート補強工法に比べて「コストを約3割縮減できる」としている。平成12年に開発以降、40件約6万平方㍍の実績を有しており、さらに清水建設、東邦アーステック、東レACE、コニシの4社により「プロジェクト」を組み、営業活動を強化していく方針だ。清水建設の前田敏也氏を中心に、東邦アーステックの高山国弘氏、東レACEの清水慎司氏、コニシの堀之内崇氏に話を聞いた。


HiPer CF工法

 ――HiPer CF工法の概要から
 前田副部長 基本的に道路橋や桟橋の床版裏面を下面から炭素繊維シートを貼り付けて補強する工法です(NETIS登録番号:KK-030029-V)。ただ、単に炭素繊維シートを貼っただけでは、剥がれという問題がありまして、炭素繊維シートは鉄の10倍の強度を有すると言われていますが、その高い強度が十分発揮する前に剥がれてしまうため、せっかくの能力を生かせません。HiPer CF工法はシートとコンクリートとの間に緩衝材(柔らかいエポキシ樹脂層)を一層挟むことにより、シートが剥がれにくくなることで、炭素繊維シートの性能を十分発揮させることができるようにしたものです。
 ――従来より繊維シート量を少なくできると聞きますが
 前田 従来工法ですと、シートが先に剥離してしまいますので、効果はそこ(剥離時点)までしか発揮できません。HiPer CF工法は従来工法では剥がれる荷重を超えてもさらにはがれずに性能が高くなるわけです。同じ量のシートを貼れば従来工法より性能が高くなりますし、従来工法と同じ性能で良ければシートの量を減らすことができます。コストの大部分はシートが占めますから、シートの使用量を減らすことで材工コストを約3割縮減できます。即ち鋼板接着と同等のコストを実現できます。標準的には炭素繊維シートは高強度タイプの400㌘目付(東レ製「トレカクロス」)とし、橋軸方向と橋軸直角方向へそれぞれ1層ずつ貼り付けます。

塩害などで損傷したコンクリート構造物にも
 はつり面積を大きく減らせる

 ――塩害、ASR、中性化によるコンクリート剥落防止工にも有効と聞きますが
 前田 塩害はコンクリートの中の鉄筋が錆び、その膨張圧でコンクリートがひび割れや剥離を起こすわけです。ASRも反応性骨材の膨張による圧力で同様のひび割れや剥離を起こします。HiPer CF工法で炭素繊維シートを貼り付けることで、コンクリートの剥落を抑えることができます。
 ――普通は補修だとビニロンやポリプロピレン、ガラス繊維シートという比較的安価な繊維シートを使うと思いますが。炭素繊維シートだと高価でオーバースペックなのでは
 前田 塩害の場合は、錆びた鉄筋を取り換えなければいけません。取り替えるためにはコンクリートをある程度広い範囲ではつる必要があります。そこに新しい鉄筋を挿しこみます。しかし、後から炭素繊維シートを貼るのであれば、必要以上にはつらなくてもいいわけです。従来であれば鉄筋の継手長(鉄筋径の30倍)分を余分にはつる必要があります(例えば鉄筋径が32㍉の場合、32㍉×30倍=960㍉(約1㍍)となる)。しかしHiPer CF工法の場合、鉄筋の代わりに炭素繊維シートを接着するため、鉄筋の継手長分を余分にはつる必要がありません。シートも(通常の補修用シートに比べ)強度が高いため、鉄筋がやせ細っていてもシートでその分を補強できます。


はつり量を削減できる

 ――補強も加味した補修ということですね。ということはひび割れが少し生じている部分も炭素繊維の強度と拘束効果によりはつり量を減らせるということですね
 前田 そうです。
 ――可使時間および可使温度は
 高山氏(東邦アーステック) 可使時間は20℃程度で1時間半ほど、樹脂硬化養生時間は20℃で15時間ほどです。最低可使温度は5℃です。基本的に使用するエポキシ樹脂の性能に拠ります。

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