名古屋高速道路は、このほど15年間で1,250億円に上る大規模修繕計画を発表した。その内訳は床版の補修補強工事が7割と大部分を占め、次いで桁端部補修が2割、床版防水工が1割を占めるという。その具体的内容について、昨年度まで保全施設部長を務め、今年度から理事に就いた志水公敏氏に詳細を聞いた。(井手迫瑞樹)
大規模修繕計画および対象箇所
――大規模修繕では1250億円という額を明示しました。これをいつ、どのように投資していくかタイムスケジュールを教えてください
志水理事 内部ではいつどこでどのような構造物を修繕していきたいかという具体的な実施プログラムを作成しています。しかし予算的な制約もありますし、発注計画との兼ね合いがありますから、具体的にお話しすることはできません。ただ、旧仕様で床版厚が薄く、損傷が激しい大高線と万場線の床版については、至急対応していかなくてはならないということで、今年度から着手していきます。
当分の間は、大高線と万場線の補修を重点的に施工しまして、それ以降については予算や発注見込み等で明確にしていきたいと考えています。
大高線と万場線の床版損傷
桁端部補修が2割、床版防水工が1割
損傷の進行は織り込み済み
――1250億円の部位別シェアは
志水 当初想定では床版補修・補強(主に下面からの施工)が約7割、次いでジョイントや橋脚の補修(即ち桁端部付近)が約2割、床版上面の複合防水が約1割となっています。ただ、運用するにしたがって、この割合は増減していくと考えております。あくまで目安です。これらを今年度から15年で手当てしていきます。
桁端部漏水が原因の可能性がある損傷事例
――15年間で計画を進めていくとのお話ですが、5年に1回の点検の現場では前回より損傷が進行するということもままあります。そうした事態を想定しての額なのでしょうか
志水 名古屋高速の損傷度グレードについて申しますと、Aは早急に要補修、Bは5年をめどとして要補修、Cは要観察となっています。1250億円という金額は既にAとBの要補修損傷が多く顕在化している区間を基本として、同様の設計基準で建設された区間を算定したものですので、劣化の進行を考慮した算定額と言えます。今後、CがB、BがAに転移することは十分考えられますので、点検の都度、そうした変化は全体のプログラムに組み込んでいきたいと考えています。
予防保全は大規模修繕外で対応
――費用が一番変化するのはBがAに転移し、補修面積や点数が拡大するケースと見られます。今回の大規模修繕計画では予防保全はあえて外されましたが、長期間、大きな面積に足場をかけるのであれば、予防保全的な工事も合わせて行うということはないのでしょうか
志水 基本的には昭和48年道路橋示方書に基づいた設計で建設された区間や、平成6年の車両大型化に対応した設計がされていない区間の床版の補修・補強が最優先課題となりますので、まずはそうした個所を中心に補修・補強を進めていきます。予防保全は大規模修繕事業とは別に通常の維持修繕予算を投入して実施していきたいと考えています。