道路構造物ジャーナルNET

NEXCO東日本高崎管理事務所 

片品川橋の耐震補強が進捗、20~30億円投じてコンクリート部補修も

東日本高速道路
関東支社
高崎管理事務所長

能登谷 英樹

公開日:2015.09.01

桁端部の再塗装やコンクリート防食も施工
 上面からの漏水を止めることが大前提 

 ――片品川橋はRC橋脚の補強の際、上部からの凍結防止剤を含んだ漏水による影響で、多量の塩化物イオンを含んだ状態にあり、補強はその部分をWJではつり、断面修復することから始めねばなりませんでした。今回の総合的な補修補強発注はジョイントの取り換えに触れていますが、高性能床版防水工法も含まれるのですか
 能登谷 下部工だけを補修しても、上部工の防水層や排水機能が劣化していいては再補修を免れることはできません。そのため、今年度からの舗装工事では、凍結防止散布量の多い関越道北側区間から床版防水を順次実施していく予定です。今年度は舗装補修を35,000平方㍍(内床版防水28,000平方㍍)施工する予定です。また、関越道南側区間の一部で損傷が進んでいる箇所もあることから追加施工を検討しています。ちなみに、今年度末で高機能舗装の敷設率は管内全体の85%に達する見込みです。なお、高性能床版防水工については、理想としては全ての橋梁で施工されるべきできすが、今後支社とも協議をしながら進めていきたいと思います。
 こうして先ずは床版上から漏水の原因をシャットアウトします。合わせてジョイント交換ができる箇所は先行して施工します。構造の関係で直ぐに交換できないところは、下からもしくは横から非排水構造を作り、漏水による構造物への影響をなくそうと考えています。ジョイント交換をしなくても非排水構造が実現できれば、それに越したことはありませんから。(腐食劣化した)鋼桁端部の再塗装、コンクリート桁の塗装や、(孔食などを生じた)鋼桁端部の補強、剥落や鉄筋露出を生じたコンクリート桁端部の断面修復および被覆、アバットやピアの梁上面、沓座のはつりや断面修復などは、上面からの漏水を止めた後に行っていくよう努めていきます。


ジョイントからの漏水

舗装上に見える補修跡(剥がしてみると床版上面が損傷しているケースも)

 ――損傷原因は塩害によるものがほとんどと理解していいですか
 能登谷 そうです。アルカリシリカ反応による骨材の膨張(ASR)が主因による損傷はほとんど見たことがありません。中性化による損傷もほとんどありません。ほか初期欠陥による損傷は少しではありますが存在します。
 塩害は内在塩分に由来するものはほとんどなく、散布した凍結防止剤を含有した漏水が表面のクラックから浸透して劣化を引き起こしたものがほとんどを占めます。
 ――クラックが生じた理由は
 能登谷 旧JHでは10数年前に、建設時のコンクリート脱型後の出来栄え確認検査が追加されました。確認時にクラックが生じていれば、酷いものであれば補修しますし、許容できるものであればクラック調書を策定して、管理していこうという検査です。しかし、30年前の構造物についてはこうした検査はありませんでした。初期クラックというものは必ず出るものですが、30年前の構造物はそれがある程度大きくてもそのままになっていたか、軽く手を入れて直していた程度であったため、クラックに沿った塩分浸透、鉄筋膨張、クラックの拡大、剥落といった損傷サイクルを惹起し、局部的ですが深刻な損傷を招いているものと思われます。

排水枡と床版境界部コンクリートから漏水するケースも
 排水管を伝っていく塩分を含んだ水が損傷を拡大

 ――水周りと言えば、横引き、縦引きしている排水管の損傷により、桁の下フランジ上面やその付近のウエブが損傷しているケースもあります。高崎管理事務所管内は山岳地帯ということもあり、長大橋も多く、長大な排水管も多いと思われますが、そうした損傷は生じていませんか。また、床版防水の際、弱点になりやすいのが排水枡付近ですが、そうした部位には損傷は生じていませんか
 能登谷 床版の排水枡付近のコンクリートが密実に打設できていないケースが散見されます。また、古い建設年時の排水枡は床版より高い位置にセットされている箇所も少なくありません。そのような排水枡は水をきちんと排水することができず、滞留した水は境界部のコンクリートが密実でない場合、そこからクラックを伝って漏水してしまっています。そうした部分から出た漏水は床版裏面を冒すケースもありますが、横引きの排水管の外側を伝っていくものもあります。そうした場合、凍結防止剤を含んだ漏水が排水管の下の桁(下フランジ上面)におち、排水管を設置している全面にわたって局部的な塗膜劣化や腐食、甚だしきは孔食を招くという事態に至ることもあります。
 旧JHでは40年を超えた山岳区間の橋梁で下フランジやウエブの一部が孔食をするというケースを生じており、私もその現場で損傷状況を見ています。当事務所に赴任するにあたって、大きな損傷が生じていることも覚悟していましたが、30年程度ではそうした損傷はありませんでした。しかし、後10年の間に手を施さなければ、同様の損傷が起こることは想像に難くありません。ですので、こうした排水枡周り、排水管の補修も合わせて水周りをできる範囲で改善しようと考えています。
 ――それは排水枡の交換や床版との境界部のコンクリートの補修なども伴うのですか
 能登谷 排水枡の交換を既設道路の通常補修工事で行うことは難しく、大規模更新と合わせた床版の取替時に一挙に行う必要があります。当面は排水機能が働くよう構造細部を改善し、これ以上漏水しないよう補修するなどの対応を行います。床版防水については、通常、境界面のコンクリートおよび排水枡の入口までを含む形で施工し、継ぎ目が生じることを防ぎますが、ここでは排水枡の一部が高い位置にあるため、(防水性能を確保するため)何らかの工夫が必要です。
 また、古い橋で使用している鋳鉄製の管は、所々に孔食を生じ、凍結防止剤を含んだ漏水を撒き散らし、上部工だけでなく、下部工にも劣化を生じさせています。そのため、VP管に交換していく方針です。
 ――床版防水工はどのような規制をして行うのですか
 能登谷 床版防水を含む舗装の打ち替えは、必要に応じ昼夜連続車線規制も考慮して行う予定です。2車線道路は半割にして1車線ずつ施工します。3車線道路の場合は路肩に余裕があればそれを使って2車線確保した上で2車線分施工し、その後にもう1車線を施工するフローでできないか検討しています。
 ――現場では舗装を剥いでみて初めて大きな損傷が見つかるケースもあります。そうした事態にはどのように対応しますか
 能登谷 古い橋梁の路面勾配は、現在のように縦断方向なら2%、横断方向なら2.5%必ず取っているわけではなく、ほぼ平坦に近い状況に造っていることもあります。こうした個所では高性能床版防水を行って終わりでは駄目で、勾配もきちんと造ってやる必要があります。不陸についても同様です。そうした事態に対処するため、施工前にできる調査は行い、あらゆる状況を想定し、体制を構築する必要があります。

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