道路構造物ジャーナルNET

平成3年以来施工件数は数千件

久野製作所 土木分野におけるWJのパイオニア

株式会社久野製作所
代表取締役

久野 浩二

公開日:2015.08.14

 久野製作所は、土木分野におけるコンクリート構造物の表面処理、はつり、削孔を行うウォータージェット(WJ)施工会社としては日本屈指の企業である。その活動範囲は北海道から沖縄まで全ての地域におよび、平成3年の初施工依頼、現在までに「数千件」(久野浩二社長)の実績を有している。また、「製作所」という名称に見られるように元々機械製作会社であり、施工によって得た知見を自前の製作技術でWJの各種部品・ツールにフィードバックできるという他社にないアドバンテージを有している。同社の成り立ちと技術的特徴について同社の久野浩二社長に詳細を聞いた。(井手迫瑞樹)

売上は過去最高を計上
 RC床版の全断面はつり業務が牽引 

 ――今期の業績はどうですか
 久野社長 おかげさまで今期は過去最高の15億超の売り上げを達成しました。当社は橋梁のコンクリート部材全般のWJ工を生業としており、現在の従業員数(全員正社員)は35人に達しており、ポンプは30台を有しています。最近の特徴としては床版の全断面はつりの業務がけん引しています。当社が他のWJ会社と異なる点は、WJ工だけでなく、床版下の水止めなど、養生設備も全て用意する点です。当初見積もりを元請に見せると他社に比して20~50%ほど高くなるため、門前払いされそうになりますが、当社が養生も自前で行うことを話すと、手間暇を軽減できた上、コストも抑えられると判断し、納得されます。床版の浅ばつりが競合もあり比率的に減少している状況ですが、それを補って余りあります。


全断面はつり

桁端部のはつりも好調

 加えて、凍結防止剤を含む塩害で損傷したPC桁端部のはつりに用いる「ジェットマスターXYZ-3000型」も好調です。総じて端部の遊間幅は狭小で、はつり・表面処理、断面修復共に従来の手法・材料では難しく、さらに補修後も依然として凍結防止剤や残留塩分による再劣化の可能性もあります。同機はそうした個所を確実にはつることができます。鉛直面に設置でき、水平方向に移動を行いながら作業を進めるため、時間の短縮やはつり面の平坦性の確保が可能で、はつり状況の確認をしながら施工できるためです。吐出ノズルはコンクリート削孔に用いるノズルを使っており、ノズルヘッドに2つのノズルを装着、はつり過ぎを防ぐためのアタック角をあらかじめ設定することができるため、PC定着部を傷めないようにしつつ、確実に脆弱部をはつれます。幅方向に最大5㍍、高さ方向に20~100㍉ピッチでWJのノズルヘッドを動かすことができ、細やかな施工が可能です。


ジェットマスターXYZ-3000型(左)/同機を使った桁端部の施工状況(右)

はつり後のはつり面拡大図(左)/ジェットマスターXYZ-3000型の概要(右)

 ――桁端部のWJはつりでは久野製作所はパイオニアの1社であると思います。社長に初めて会ったのも日光宇都宮道路の清滝高架橋の塩分が浸透した定着部付近のはつり工事の取材でしたね
 久野 清滝高架橋では、桁端部を下面からはつれないか? と当初は要求されましたが、これは無理で、ジョイントを撤去し、遊間から鉛直にWJの架台を差し込み、慎重に水圧や水量を調整しながら定着部を傷めないようにはつりました。思えば、清滝高架橋などの経験が今、「ジェットマスターXYZ-3000型」に結実し、事前調査やWJによるはつり、断面修復、塩分吸着材を用いた塩害対策と合わさったNSRV工法として発展しているのだと考えています。

平成3年までは物造り
 力不足を痛感し、現場に参入

 ――そもそも久野製作所は最初からWJ専業の会社だったのですか
 久野 違います。当社は様々な機械を製作する会社でした。昭和63年にWJ施工会社から機械部品の製作を依頼されたことがきっかけです。最初は小さな部品の製造でしたが、ハンドガン、ノズルのヘッド部、心臓部など徐々に重要な部品の製造を任されて行きました。平成3年までは物造りに徹していました。
 ――部品製作会社がどういった経緯で施工も行う会社になったのですか
 久野 WJはご存じのとおり過酷な状況下で使用されます。水圧も高く、作業水やガラが機械にリバウンドすることもある――機械が故障しているのを見て、さらに現場の過酷な状況を見て、このままでは機械の信頼性・耐久性を維持できないと考えました。そこでWJ施工会社に、機械に性能をフィードバックすることを目的として現場施工にも携わらせてほしいと頼みこみました。
 現場に入ってまず感じたことは、その現場に応じた専用ノズル、さらには施工目的に応じた機械が必要だということです。ハンドガンは汎用性がありますが、特に機械はつり用の部品は、現場の状況に応じて一品一様で、より良く現場にマッチングできる部品を作ることができるよう試行錯誤を重ねました。


部品作りは試行錯誤の連続だ

「製作所」としての特徴を生かして現場に応じた部品を自社製作し(左)/社内に設置している供試体で試す(右)

 ――現在のような業態になったのはいつごろですか
 久野 平成8年ごろからです。WJ施工会社の社長に現場施工に積極的に取り組まないかと誘われたためです。当時はゼネコンの皆さんもWJを熟知されていた方はあまりおらず、比較的自由に施工させていただけたように思います。その自由な雰囲気の中で施工能力を高めていくことができました。
 ただ、平成11年にお世話になっていた会社が倒産し、一挙に数千万の借金を抱えてしまいました。
 ――それはきついですね
 久野 取引の8割を占めていたのできついなんてもんじゃなくて。しかし当時いた6人の社員は誰も辞めることなく付いてきてくれました。そこで奇跡的にゼネコンさんから駅ビルの地中連壁のはつり工事をいただいて、首がつながりました。当時の自社のホームページを見ていただけて声をかけていただいたようで。数千万の売り上げを得て最大の危機を脱しました。それからは、おかげさまで順調にきています。

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