道路構造物ジャーナルNET

有明海沿岸道路が進捗、架替え3橋など事業目白押し

福岡国道事務所 いよいよ筑後川橋、早津江川橋に着手

国土交通省 
九州地方整備局
福岡国道事務所長

横峯 正二

公開日:2015.08.01

 福岡国道事務所は有明海沿岸道路事業や3橋の架替え事業など6路線の改築・保全を担当している。なかでも有明海沿岸道路は順調に進捗し、開通済みの路線では、想定を上回る利用が進み、無くてはならない道路インフラとして親しまれている。その延伸部である筑後川橋、早津江川橋にも着手した。保全分野の話題も含め、横峯正二所長に詳細を聞いた。(井手迫瑞樹)

6路線の改築・保全を担当

 ――福岡国道事務所管内の地勢的特徴と道路の整備方針および構造物の整備の考え方について
 横峯所長 福岡国道事務所は、福岡県の西部および南部の重要都市を結ぶ国道3号、201号、202号、208号、209号、210号の6路線に関する改築、電線共同溝整備、沿道環境改善、交通安全対策、維持管理などの事業を行い、管内各市町村の地域計画を支援しています。
 管内には県庁所在地であり、政令指定都市である福岡市(人口約150万人)を中心とする福岡都市圏や筑後地域をはじめ周辺の17市12町1村(人口約170万人)の地方自治体があります。
 これらの地域の安全安心な地域社会の実現や地域間の連携強化による地域活性化、国際交流都市としての成長力の強化を図り、生活や産業、社会・文化活動などを支えるため、また、九州・アジアの交流・物流拠点として、その基盤となる直轄国道の安全・円滑・快適な交通を確保するという重要な使命を担い、交流・物流のさらなる飛躍に貢献していきます。
 ――具体的には
 横峯 安全安心な地域社会の実現のために、日常的な道路の維持管理はもとより、構造物の着実なメンテナンスを実施するための定期点検や長寿命化対策、防災・震災対策として、国道202号春吉橋架替え事業や周船寺橋架替え事業に着手しており、平成26年度に工事着手した国道208号浦島橋架替え事業は平成30年度を完成目標に事業を推進しています。
 交通事故・交通安全対策としては、国道202号御供所町交差点改良、国道209号野町交差点改良など30箇所の整備を進めており、なかでも国道3号新産業団地入口交差点改良、国道202号二丈福井歩道整備、国道210号保木歩道整備は、平成27年度から新たに事業着手しています。また、今年度内に7箇所が完了する見込みです。基本的に右折レーンの増設や歩道の拡幅・新設などにより道路交通の安全を確保する事業です。加えて電線共同溝の整備に伴い、車両の視認性の確保や歩行者・自転車の安全で快適な空間の確保のため植栽帯を撤去し、一部区間で自転車通行空間の確保に取り組みます。
 また、地域間の連携強化や国際交流都市としての成長力強化を目的に、国道3号博多バイパス、鳥栖久留米道路、国道208号有明海沿岸道路(大牟田~大川)、大川佐賀道路、国道202号・497号今宿道路、国道210号浮羽バイパス、国道322号八丁峠道路の整備を進めており、なかでも博多バイパスおよび有明海沿岸道路(徳益IC~柳川西IC)は、平成29年度を開通目標として、また、今宿道路は平成30年度を開通目標としてそれぞれ事業を推進していきます。
 このような道路整備の中で構造物の整備については、通過する地域の地形、地質、気象、環境及び交通状況などを勘案した上で構造形式を選定しますが、例えば、現道拡幅などの平面道路構造では、周辺地域からの出入りやほかの道路との接続が容易であるため、隣接地の開発による接続も容易となります。また、自動車専用道路などの整備においては、周りの土地より一段高くした構造とし、道路への接続をインターチェンジ形式にすることで、アクセスコントロールされた道路となり、高速走行性の向上が図られます。さらに、道路整備の目的のみならず、山間部などの土地の起伏が激しい地域や土地の地盤高が低く頻繁に浸水する地域を通過する際などの地理的、地質的な制約がある際には、盛土や切土構造、橋梁・高架橋、掘削、トンネルなどの様々な構造物を組み合わせて整備をしています。
 このように道路整備においては、その目的のみならず、地形や地質などのその地域特有の課題などを解決するため、多種多様な構造から選定し組み合わせて一本の道路として整備をしていますが、中には既存の技術では解決できない問題もあり、そのような場合には、民間会社などの努力で日々進化し続ける新技術や新材料などを活用して課題の解決を図っています。

改築事業は8%予算増
 3橋架替えを実施

  ――改築事業について詳細を
 横峯 改築関係は平成26年度予算が106億9,000万円に対し、平成27年度予算は115億3,200万円と約8%ですが増加しています。
 ――各事業の進捗状況は
 横峯 まず国道202号春吉橋の架替え事業から説明します。春吉橋の現橋は昭和36年に架設された50年以上経過した橋梁で、下部工の損傷が著しく、感潮区域にあるため(河口から約1.5㌔)塩害も進行しています。基礎は木杭を使用しており、耐震的にも耐力が不足しています。また、同橋が渡河している那珂川は、平成21年7月の九州北部豪雨の際、甚大な浸水被害が発生した箇所であり、春吉橋現橋は橋脚が多く河積阻害を招くことから福岡県による那珂川の河川改修と一体となって架替えを行うものです。
 平成27年度より迂回路橋(橋長66㍍、2径間連続鋼床版鈑桁橋)の下部工に着手する予定です。


春吉橋の現況

春吉橋の架替ステップ

 ――迂回路橋ですか? 普通は仮桟橋などを作りますが
 横峯 迂回路橋については、将来同部分を福岡市が管理する橋上の賑わい広場(歩道専用橋)にする方針であり、そのため、この事業では迂回路橋を永久橋として建設し、架替え後も存置することとしています。なお、一時期は車道として用いるため、橋梁の規格は車道に準じております。本橋(65㍍、2径間連続鋼床版鈑桁橋)については、迂回路橋が完成し、そこに交通を切り回した後、現橋を撤去し、同じ箇所に建設する予定です。
 国道202号ではもう一つ周船寺橋の架替えを予定しています。現橋は昭和12年に架設されたコンクリート橋で78年が経過しており耐震性能の向上が必要です。これに加えて平成22年7月の豪雨では同橋が架かる周船寺川で甚大な浸水被害が発生しました。そのため河川管理者である福岡市では河川改修事業を進めています。周船寺橋は橋梁部が狭く治水上のネックになっていることから、今回架替えるものです。平成27年度は用地買収に着手します。橋梁は橋長20.5㍍のPC単純プレテンホロー桁です。
 架替え関連ではもう一つ浦島橋があります。同橋は一級河川矢部川のみやま市・柳川市境に架かる橋で、平成26年度に架替え工事に着手しており、平成30年度に架替えを完了する予定で事業を進めています。同橋は昭和31年に供用した橋梁で、主桁やゲルバー継手部の損傷が激しく、老朽化が進んでいます。また、橋梁の耐震性の向上、右折レーンの確保による渋滞解消、歩道設置による歩行者の安全確保が急務です。これらの課題に対処するため架替えを行うものです。


(左)現在の浦島橋を下流部から見る/(右)主桁部の損傷

 今年度は構造物詳細設計、用地買収などのほか、下部工工事を推進する予定です。橋梁は橋長160㍍の3径間連続鋼床版箱桁橋です。

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