県独自の点検要領で1巡目は完了
今年度は鋼橋塗り替え26橋、桁補修27橋など対策
――橋梁の長寿命化修繕計画の進捗状況は
山ノ内 道路ネットワークの信頼性と安全性を確保し続けることを目的に、平成19~21年にかけて維持管理計画を策定し、22~25年にかけて計画のレベルアップを目指してその見直しを実施しました。橋梁の点検自体は昭和60年から行っており、平成19年には新たな視点で県独自の点検要領を策定しています。これは近接目視を原則としながら、15㍍以上はより詳細に、15㍍未満はより簡易な点検方法・項目を定めるなどメリハリをつけた点検内容にしていました。また、これまでの損傷状況から桁端部については重点的に近接目視および打音を行うようにしています。また、できるだけ近接目視を原則としていましたが、谷間などにある長大橋の桁支間中央部などについては遠望目視もやむを得ないとしておりました。
その手法で20~25年度で3,809橋の1巡目点検は完了しています。
平成26年の道路法改正に伴い、点検要領を改訂し30年度までの5カ年で2巡目の点検を実施する予定です。
橋梁の補修補強対策
――PC橋の上縁定着部の点検など特にセンシティブな個所の点検については
山ノ内 PC橋はひび割れを許容しない構造物でありますから、もしひび割れが生じていた場合は必ず「S」(要詳細調査)区分に判定し、詳細調査を行います。
――経年劣化や疲労などによる補修補強の実績と今年度予定は
山ノ内 過去3年で申し上げますと、鋼橋の塗装塗り替えは76橋、桁補強が13橋、桁補修が35橋、床版補強が1橋、床版補修が33橋、支承交換・防錆が25橋、高欄が53橋、橋面舗装・防水工が85橋、伸縮装置取り換えが95橋となっています。
今年度当初予算では、塗装が26橋、桁補強が1橋、桁補修が27橋、床版補強が1橋、床版補修が3橋、支承交換・防錆が9橋、高欄が9橋、橋面舗装・防水工が12橋、伸縮装置取り換えが15橋を予定しています。
――各自損傷の具体的な損傷原因および部位と補修補強方法は。また橋梁のうちどの供用年次のものが損傷が多いのか(供用年次が古い橋梁がやられるとは限らないが)
山ノ内 主な部材毎の傾向は、鋼橋では塗装の塗り替えや当て板による補強を行っているが、これは防食機能の低下や腐食によるものです。
コンクリート橋では、剥落やうきが発生している箇所での断面修復や耐力低下に伴う補強を実施している。これは、塩害や漏水に起因しているものがほとんどです。
床版は防水層の未設置箇所でのコンクリートの土砂化や、交通量の多い箇所での疲労による亀甲状のクラックによるものです。
供用年次と損傷の相関ですが、過去5年に実施した点検の結果、E判定とされた橋梁の内、約8割が1950年代~70年代に建設されたものでした。一方で、塩害を受けた橋梁では供用から30年程度で架け替えをおこなっている橋梁もあります。
コンクリート橋の桁端部の損傷状況
床版防水は維持管理計画の要点
フェールセーフとしての排水樋や止水材も設置
――床版防水についてはいつ頃から施工していましたか
山ノ内 先ほど申しましたように当県では昭和60年から継続的に橋梁点検を行っており、桁間からの漏水が非常に多く見受けられたため、積極的に橋面防水を施工していくことを維持管理計画の要点の1つにしています。水関係で申しますと、もう1つ伸縮装置の非排水化を行っています。以前のジョイントは雪荷重の関係でフィンガーの雨樋が外れたりすることがあったためです。合わせて新設橋も床版防水を平成元年からマニュアルにて県の標準仕様としています。
(写真右)鋼橋のRC床版の損傷/(写真左)コンクリート桁(おそらくPC)で縦目地に沿って漏水による損傷が生じている
――ジョイントについては仰る通り(ゴムジョイントなどで)雪荷重で外れるというケースが出ています。そうした個所にフェールセーフとしての排水樋や新しいタイプの止水材を設置する例が増加していますが、新潟県は
山ノ内 桁遊間がある程度確保できる一部の個所で施工しています。
アル骨は特定地域で限定的に発生
塩害は糸魚川、村上、佐渡で特に飛来塩分量多し
――塩害やアルカリ骨材反応による損傷はどのように出ていますか
山ノ内 アルカリ骨材反応による損傷は特定地域に限定されて見られます。特定地域とは糸魚川、上越、新津、柏崎などです。損傷部位は主に橋梁の橋脚や橋台等でみられております。暫定的な対策として橋脚についてはひび割れ部への目地注入、コンクリート塗装を行い外部からの水の浸入を防止します。橋台についてはひび割れ部への目地注入の身を行い、密に経過観察していきます。幸いにして鉄筋の破断を伴うような激しい損傷は起きていません。
塩害は季節風、海岸の地形によって飛来塩分量に差があります。土木学会新潟会が塩分調査した結果、糸魚川、村上、佐渡で特に多いと測定されています。
対策としては、断面補修(マクロセルで再劣化しないよう)+電気防食(ガルバシールド)、鉄筋腐食抑制タイプのシラン系含浸材などにより補修しています。
また、著しい塩害に冒された橋梁は架け替えをにらみながら延命化のための補修・補強を行っています。
一方、凍結防止剤散布の影響による塩害は最近になって見られることが多くなっていますが、桁端部に限定されるため、桁端部の補修を行った上で伸縮装置を非排水化して対策しています。
塗膜除去方法に悩む
作業安全性と塗替え塗装品質確保の両立
――鋼橋塗り替えの際、ケレンはどのようなレベルを採用していますか。また採用している工法は
山ノ内 基本的にRc-Ⅰを採用しています。ケレンにはブラスト工法を用いています。
――鉛などを含んだ塗膜除去はどのように行っていますか
山ノ内 悩んでいます。塗膜剥離剤が他の都道府県で使われているのは知っていますが、塗膜剥離剤だけでは塗膜を剥がすことはできるが、ケレンは別の手法――ブラストや電動工具――で行わないとRc-Ⅰ相当の下地にできません。そのため現在は従来のブラスト工法を使用しています。作業員の人体への影響という面からは防塵マスクなど必要なものは装備していますし、環境面を考慮して足場を全面防護して作業しています。