新潟県は、今後10年間で50年経過する橋梁の割合が現在の26%から55%に倍増する見込みで、長寿命化対策が急務になっている。一方で、長い海岸線や豪雪地帯を抱えることから塩害による影響を強く受ける特徴があり、地域的にはASRの影響が顕著な橋梁もある。そうした橋梁を中心とした構造物をどのように長寿命化あるいは架け替えていくのか、山ノ内久道路管理課長に聞いた。(井手迫瑞樹)
69~73年度の5年間で600橋供用
今後急速に橋齢の高齢化が進む
――現在の管内の橋梁内訳は
山ノ内 PC橋が998橋、RC橋が1,831橋、鋼橋が891橋、その他89橋の合計3,809橋となっています。供用年次別では昭和30~49年度の高度経済成長期に約半数の1,800橋を供用しています。実に年間平均で90橋を建設している計算になります。特に日本列島改造論が華やかりし1969~73年度の5年間で600橋供用しており、この時期が大きなピークを形成しています。2014年時には供用後50年経過橋梁は26%と全体の4分の1程度ですが、24年にはこれが55%と過半に達し、34年度には7割弱に達します。全国平均と比較しても橋梁の高齢化は急速と言えます。
延長別では15㍍未満が2,351橋と全体の62%に達します。一方で信濃川、阿賀野川など国内有数の大河が流れていることもあり、河口に近づくほど川幅が広くなる関係から100㍍以上の長大橋も215橋に達します。
橋梁の橋種別内訳
建設年次別の橋梁数の推移
橋梁の延長別内訳
(左円グラフ)新潟県の建設後50年以上経過する橋梁割合の推移と/(右円グラフ)全国平均
E判定は113橋
塩害やアルカリシリカ反応による劣化が発生
――橋梁の健全度状況は
山ノ内 補修を要する橋梁の割合はC1が1,259橋、C2が229橋、C3が148、Eが113橋となっています。いわゆる三大損傷の中では、疲労によるものは、あまり発生しておらず、塩害とアルカリシリカ反応によるものが見受けられます。
塩害による損傷状況
ASRによる損傷状況
なお、新潟県の橋梁の健全度区分はAが「損傷がなく、建設当時の性能を保持している」状態、B1が「損傷があるが、性能の低下はほとんどない」状態、B2が「損傷があり、軽微な性能の低下がある」状態、C1が「損傷があり、性能の低下が懸念される」状態、C2が、「損傷が著しく、性能の低下が顕著」な状態、C3が「性能の低下が著しく、早期の劣化進行が危惧される」状態、Eが「落橋の危険が想定される、又は安全性の観点から緊急的に対策が必要」な状態、Sが「詳細調査を要する」状態と区別しています。また、2014年の点検では、9橋がS判定となっています。
補修を要する橋梁の割合
中でも第3者被害などを考慮した安全性の観点から、緊急的に対策が必要と判定された橋梁の主な損傷としてコンクリートの浮き剥離・鉄筋露出、鋼材の腐食・破断などが報告されています。新潟県は634㌔に達する長い海岸線を有しています。これは新潟-東京間の新幹線の往復とほぼ同じ距離で飛来塩分の影響を受けていることとなります。特に冬季には波浪の影響により飛来塩分量が増加します。また長岡や越後湯沢等の山間部では凍結防止剤を散布します。こうした地域で見られる塩害に加えて、上越など一部の地域ではアルカリシリカ反応による劣化も生じています。
(右写真)沿岸部の冬季波浪/(左写真)凍結防止剤の散布
E判定橋のほとんどは断面修復や防錆処理などの軽微な対策で補修できるのですが、一方、海洋性の飛来塩分による塩害のため、重大な損傷が生じている橋梁もあります。そのため補修のほか、架け替えも少なくとも4橋で実施する予定です。橋種はいずれもコンクリート橋です。
① 与板 PCポステン単純T桁橋 L=30.8㍍(1980年架設(橋齢34才)
② 佐渡 RC単純T桁橋 L=14.5㍍(1962年架設(橋齢52才)
③ 佐渡 2径間RC単純T桁橋 L=25.6㍍(1963年架設(橋齢51才)
④ 佐渡 2径間RC単純T桁橋 L=31.8㍍(1967年架設(橋齢47才)
――鋼橋については
山ノ内 鋼橋の塗膜劣化や腐食、さらにはごく稀に孔食に至っているケースもあります。しかし、全般的にはそれほど大きな損傷は見つかっていません。孔食については、桁端部の腐食環境の強い個所で発生しており、当て板処理等で対応しています。
桁端部の腐食