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乾式吹付工法を応用した手法で施工するPCM舗装

RC床版上面増厚の新工法と新材料を開発

首都高速道路株式会社
技術部 技術推進課 課長代理

蔵治 賢太郎

公開日:2015.06.16

 首都高速道路は技術部技術推進課が主体となり、首都高グループ5社(首都高速道路、首都高速道路技術センター、首都高メンテナンス東東京、首都高メンテナンス西東京、首都高メンテナンス神奈川)、NIPPO、住友大阪セメントと共同で繊維入り超速硬ポリマーセメントモルタル(PCM)舗装を使ったRC床版上面増厚工法を開発し、現場適用を目指している。PCM舗装を使うのは、上面にひび割れが生じず緻密で不透水なセメント系材料による増厚層を形成すること、既設床版のひずみに追従し、層間剥離しない低弾性の材料であること、既存の施工法よりも施工が容易であること――といった目標性能を達成するため。首都高速道路技術部技術推進課の蔵治賢太郎氏に詳細を聞いた。(井手迫瑞樹)

170㍉の床版厚が140㍉までに低下
 移動式プラントの台数確保と重労働を担う作業員の確保は
     困難になると予想

 ――開発の背景は
 蔵治 首都高速道路では鋼床版上面に接着剤を全面塗布し、鋼繊維補強コンクリート(SFRC)舗装を舗設する上面補強法を開発し、輪荷重によって生じるデッキプレートの局部ひずみを抑制し、疲労亀裂の発生を防いでいます。一方、RC床版については下面に縦桁を増設したり、炭素繊維シートを格子状に貼りつけたりして輪荷重によるひずみ量を抑制しています。しかし、舗装を打ち換える際にアスファルトや防水材を除去する為に使う舗装切削機によってRC床版の上面が削られ、床版上面コンクリートの被りが無くなって鉄筋が全面的に露出してしまっている床版や、切削機によって鉄筋が引きちぎられてしまっている床版が確認されています。実際に八重洲付近高架橋の架け替え(2014年度施工)時に撤去後の床版を調査したところ、厚さ170㍉(昭和39年道路橋示方書基準)のはずのRC床版が140㍉以下になっている個所もありました。


床版上鉄筋の露出(左)/主筋の消失(右)

170㍉厚の床版が140㍉厚以下に

 首都高速道路では比較的凍結防止剤を散布する量は少ないですが、それでも被り厚が無くなってしまえば内部鉄筋は塩害で腐食しやすくなるほか、厚さが薄くなったことにより活荷重たわみ量が増加し、疲労耐久性が低下してしまいます。
 一方、SFRC舗装によるRC床版の上面増厚工法は、SFRC舗装が床版から剝がれる事象が報告されています。剥がれは既設床版面に接着剤を塗布していなかったことによる接着力不足が主原因と考えられますが、それに加え、既設床版よりもSFRC舗装の弾性係数が高いことから、圧縮力が大きくなる床版上面で既設床版の変形に増厚層が追随せず、突っ張ることで、層間に負荷がかかり、はがれが生じるのではないかと考えました。
 また、SFRC舗装は施工の際に昼夜連続規制で移動式プラントを使って施工するケースが多いのですが、この場合、1車線の交通規制帯の中で移動式プラントに安全に材料を供給することが難しいことから、仮に1工事3パーティー入る場合には材料を積んだ移動式プラント12台を回送させて材料を供給しています。現在、鋼床版上面のSFRC舗装は交通量の少ない日曜日に1車線を交通規制して施工していますが、今後コンクリート床版をSFRC舗装で増厚するとなると、こちらも移動式プラントが必要になります。
 しかしSFRC舗装による鋼床版の補強が一般的となり全国に拡大したこと、東北地方の復旧工事で移動式プラントの需要が高まっていることなどから、日曜日に使うためだけに多くの移動式プラントを東京に確保しておくということが今後困難になってくると予測しています。加えて移動式プラントからSFRC舗設位置までの材料運搬に一輪車による人力輸送が用いられる場合がありますが、この作業は多くの作業者に長時間重労働を強いています。建設需要の高まりにより、このような重労働を担う作業者の確保も難しくなってきています。
 こうした課題に対応するため、乾式吹付工法を応用することで移動式プラントを使わず、さらに人力に頼らず材料を資材置き場から舗設位置に供給するRC床版増厚工法と、既設床版の変形に追従し、ひび割れが入らず剥がれないRC床版上面増厚材料を開発しました。

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