神奈川県は全国2位の約910万人の人口を抱えており、高速道路を中心にまだまだ道路整備や、鉄道など公共交通機関の整備を進めていく必要がある。一方で道路の保全は財政的に厳しい時期も含めて平均150億円の予算を確保しており、それが奏功して目立った損傷は起きていない。そうした話題を中心に神奈川県県土整備局長の浅羽義里氏に聞いた。(井手迫瑞樹)
旅行速度はワースト3位
死傷事故件数はワースト6位
――まず神奈川県内の地勢的特徴と道路網の状況について
浅羽局長 県東部は横浜・川崎の政令指定都市を中心とした市街化地域、県西部は箱根や丹沢など自然に富む地域、中央部は相模川が縦貫しており、湘南と三浦半島には今日では少なくなった砂浜の残る海岸線が形成されています。面積は約2400平方㌔㍍で国内42番目の狭い県土となっていますが、一方で人口は全国第2位の約910万人に達しています。
さて、道路事業から申し上げますと、昭和40年代には東名高速道路、首都高速道路横羽線、昭和50年代に横浜横須賀道路、昭和60年代に新湘南バイパス、平成に首都高速湾岸線がそれぞれ供用されてきました。最近では圏央道の一部をなすさがみ縦貫道路が都県境から新湘南バイパスとの接続部まで全線開通しました。県内の自動車専用道路はこれまで360㌔開通・供用しています。これが県内の骨格道路といえます。
県では道路整備計画と道路維持管理計画を、総合的なみちづくり計画「かながわのみちづくり計画」(計画期間平成19年度~平成28年度)としてとりまとめ、実施しています。県としては自動車専用道路のICへの接続道路、あるいは自動車専用道路を補完する幹線道路網の整備を進めています。国道・県道の改良率は87%(2014年道路統計年報による)に達しています。しかしながら県内は幹線道路の整備が不十分です。それは最も混雑する時間帯に移動に要する時間(=旅行速度)が全都道府県中ワースト3位という順位に表れています。一方、死傷事故件数はワースト6位(神奈川県警察本部発表)という課題を抱えています。南北の骨格となるさがみ縦貫道路ができまして、今後は新東名高速道路(海老名~御殿場間)の平成32年度の全線開通を目指し、整備が進んでいます。
また、圏央道の一部である横浜湘南道路と横浜環状南道路も事業が進んでいます。両路線が整備されれば、さがみ縦貫道路から横浜横須賀道路の釜利谷JCTまで結ばれるものであり、これも平成32年度の開通を目指しています。
さらには首都高速道路が施工している横浜環状北線、また、首都高速道路と横浜市が共同施工している、北西線も事業が進捗しており、平成33年度までには両路線が開通する予定で、関東全域・日本海側に神奈川県の生産した商品が迅速に展開できるようになります。
また、新東名は、平成27年度に、愛知県の区間が開通予定であり、これにより、御殿場まで開通しますが、引き続き、御殿場から海老名までの区間について、東京五輪までの開通を強く働きかけていきます。
今後5~10年ほどで高速道路系が一定程度出来上がるため、この10年ぐらいが県の道路行政において正念場であると考えています。
県央湘南都市圏雄飛のチャンス
――さがみ縦貫道路の開通はどのような効果を神奈川県にもたらしていますか
浅羽 既存の産業や先端産業の研究所工場群が集中する県央湘南都市圏の交通の軸となります。神奈川県には3つの政令市があります。工業生産は横浜・川崎の京浜臨海部に集積してきましたが、さがみ縦貫道路の開通はその軸足を県央湘南都市圏に広げるチャンスになります。とりわけ、先だってさがみ産業ロボット特区の指定を国から受けまして、同地域ではロボット産業の集積を図っていきます。