床版防水は約50橋で実施
横締定着部の浮き・剥離は約30橋で確認
――床版防水の施工はどのように進めていますか
喜安 設置、未設置は正確に把握できていません。点検および詳細設計において橋面からの雨水の浸透が原因と思われる漏水・遊離石灰が主桁・横桁・床版にあれば、その対策もしくは予防保全対策として橋面防水を行っていきます。平成25年度は約50橋程度で実施しています(新設・打ち替え含む)。
――床版防水工はどのようなグレードの材料を使っていますか
喜安 塗膜系防水工法やシート系防水工法による施工を実施しております。
――PC定着部とりわけ上縁定着部の損傷については
喜安 PCの定着部における異常は、26年度の点検状況について確認しますと、特に横締めの定着部に多くみられています。横締め定着部の浮き・剥離は約30橋で確認されており、今後対策を実施する予定です。
弁天橋 PC定着部の剥離・鉄筋露出
耐震補強は昨年度38橋で対策
――耐震補強の進捗状況は
喜安 南海トラフ地震防災対策推進地域内にある大分県と宮崎県内の海岸沿いの橋梁耐震補強を優先的に対策しています。
また平成24年道示改訂に基づいた設計の修正を宮崎県北部地域(B1地域の延岡~日向~門川~児湯郡の一部)で図っています。
26年度当初でフルスペックの対策が必要な橋梁(橋長15㍍以上、2径間以上の橋梁)は301橋あり、このうち26年度は北九州6橋、大分7橋、熊本1橋、宮崎9橋、延岡8橋、鹿児島7橋の計38橋で対策しました。(※落橋防止装置が主、橋脚補強、変位制限装置の設置などもあり)。
なお、26年度に国道202号二丈浜玉道路が佐賀県道路公社、福岡県道路公社から九州地方整備局に移管されました。その中で耐震対応が終わっていない橋梁が4箇所あり、それを優先的に対応する予定です。河川内にある橋梁もあるため、河川協議等が必要となります。
本線橋における対応率は26年度末で83.3%(全体1,585橋中1,322橋完了)に達しています。
大峯高架橋(左)、鐙橋(右)
――平成27年度の予定は
喜安 北九州国道管内で2橋、佐賀国道管内で2橋、宮崎河川国道管内で2橋、鹿児島国道管内で2橋の落橋防止装置や、下部工の補強工事を予定しております。
境橋の床版を打ち替え
――特殊橋や長大橋の補修補強について
喜安 昭和48年に供用した境橋(国道210号、橋長226.8㍍、単純鋼合成鈑桁橋+3径間連続鋼非合成箱桁)について、床版の打ち替えを行う予定です。
境橋の床版の損傷
――損傷状況はどのようなものですか。
喜安 コンクリートの骨材に海砂を使用していたことから鉄筋が腐食し、アルカリ骨材反応との複合要因によってコンクリートが土砂化し、劣化した床版下面のコンクリートが剥落、落下したものと推察されています。床版の打ち替え方法はプレキャストや現場打ちなどの工法を比較し決定します。
――鋼橋の今年度塗替え予定面積とPCB含有塗膜の有無は
喜安 平成26年度は28橋で塗り替えを行いました。鉛などを含有している橋梁は11橋ありました。桁端部については1種ケレンし適切に処理を行い増塗りを施しています。
――平成27年度の塗り替え計画は
喜安 平成27年度は、約10橋4,000平方㍍を予定しております。
B判定は97個所、S判定も28個所
トンネル点検の結果
――トンネルの維持管理状況は
喜安 平成26年6月に示された点検要領により、今後は5年に1回(新規トンネルについては完成後から2年以内)の頻度で点検を行っております。(平成26年度については現在、集計中のため)平成25年度(26年4月1日現在)までの点検結果においては、対象132トンネルのうち、A判定が6個所、B判定が97個所でS判定が28個所でした。
トンネルの健全度判定
――保全におけるコスト縮減の具体例やNETIS登録工法の活用は
喜安 例えば、コンクリート構造物などの劣化を防止・抑制する無溶剤タイプジェル状シラン系表面含浸剤(No. KT-070047-V)や鉄筋腐食抑制工法 「プロテクトシル CIT」(No. HR-060004-V)などを採用しています。
また、目視に変わるというところまでいきませんが、福岡国道事務所ではUAV(遠隔操作ヘリ)を所有して、災害などに対応したり橋梁等の点検を補完する手段として活用しています。
――近年多発する風水害について
喜安 九州は台風が多く、九州北部豪雨のようなゲリラ豪雨も増加傾向にあります。自然斜面や法面などで危険な個所を見つければ補修するようにしています。また、雨量による通行規制などソフト面でも迅速に対応し被害をできるだけ出さないよう努めていきます。
象徴的な個所としては前述の滝室坂があります。将来的にはバイパスに切り替えますが、現道にはロックシェッドを設け安全性を高めています。
滝室坂のロックシェッド
国道201号の八木山BPなど、山間地では降雪により車が立ち往生してしまうケースが起きています。昨年、災害対策基本法が一部改正されて車が止まって動けなくなった時に強制的に移動できるような形になりましたので、迅速な救急活動がし易くなるように取り組んでいきます。
また、宮崎沿岸部を襲うとみられる南海トラフ地震(津波)へのソフト・ハード面での対応も課題です。東九州道は想定津波高よりも高い位置に構造物が位置しているため、いざという時には避難路および緊急輸送路として使えるのではないかと考えています。また津波来襲時には速やかに避難できるように情報板等を整備するとともに国道10号をできるだけ早く止めることが必要です。また、各所に避難用の階段も整備しており、逃げやすい環境も整えています。
――ありがとうございました