椿山トンネルは宮崎層群の土質
滝室坂は4㌔の長大トンネル
――同様にトンネルは
喜安 特徴的な個所としては先ほど申し上げた椿山トンネルがあります。建設地は風化が激しく土砂化もし易い、砂岩と頁岩の互層である宮崎層群の土質であるため、AGF工法などを採用し、先行吹き付けなどで対応できない場合は鏡ボルトやパイプルーフの活用なども考慮し、慎重に施工していく必要があります。
また、滝室坂事業はトンネルだけで約4㌔に達する予定です。
――阿蘇ということもあり温泉地特有の硫黄対策や湧水が懸念されますが
喜安 pHはさほど影響はないようです。それよりも外輪山を登るようなきつい縦断勾配のため、工事中の湧水に対する配慮が課題になってくると考えています。
滝室坂付近の遠景
橋梁は66%、トンネルも43%が30年以上経過
市町村も含めると1年に2万橋以上の点検が必要
――平成27年4月1日現在の管内橋梁の橋種別内訳は
喜安 九州地方整備局管内には、3318橋あり、構造的には、鋼橋が819橋、RC橋が719橋、PC橋が1,671橋、石橋が10橋、混合橋が99橋です。
――橋梁、トンネルの経年状況は
喜安 橋梁は50年以上経過している橋梁が1056橋、40年以上50年未満が590橋、30年以上40年未満が544橋と30年以上経過した橋梁は管内の約66%を占めます。トンネルは50年以上経過した個所が29箇所、40年以上50年未満が20箇所、30年以上40年未満が13箇所と全体の約43%を占めています。
管内の自治体が所管する構造物(橋梁は約10万橋、トンネルは1700個所に達する)も同様の傾向を示しています。こうした老朽化に対応していくためには、自治体を入れると管内では実に1年に約2万橋の点検が必要となりますが、しっかりと5年に一回の点検をこなすとともにしっかりと記録するとともに損傷箇所は速やかに補修していくことが必要です。
――膨大な構造物の点検をこなすためにどのような技術的底上げを図っていますか
喜安 国土交通省では平成25年度をメンテナンス元年と位置付け、平成26年度には都道府県ごとに道路メンテナンス会議を設置して、自治体に対して点検の一括発注や直轄診断などの支援に取り組んでおります。今後もメンテナンス会議を中心に自治体との連携を図り、自治体職員の技術力向上のため、メンテナンス研修の開催や施設の重要度、健全度を考慮した支援や複数年にわたる大規模修繕・更新に対する支援の実施を行い、地方自治体の施設も含めた道路構造物のメンテナンスも図っていきます。
九州地方整備局管内の自治体の中には技術職が少ない市町村もあり、技術的支援の一環として、橋梁点検などに関する基礎知識習得を目的に研修を実施しています。平成26年度からは新たに橋梁、トンネルにかかわる点検・診断技術の習得、損傷などの維持管理にかかわる専門知識の習得を目的とした道路構造物管理実務者研修(点検エキスパート研修)を開催しています。また、発注者としての知識、技能の習得を目的としたメンテナンス研修(橋梁・トンネル)を各県ごとに開催し、多くの方からわかりやすく参考になったとの回答をいただいております。今後も引き続き技術的アドバイスをさせていただき、道路構造物を管理する責任と権限を持つ市町村の技術的支援を実施していきます。
九州管内の構造物について、5カ年の点検計画を策定しており、今後は、この計画を基に計画的に点検を実施し、実施状況について、公表していくことを考えております。
C判定は1,087橋
内訳は主桁が700、床版が354
――橋梁定期点検要領に基づく点検の判定結果と対策状況は
喜安 (平成26年度については現在、集計中のため)平成25年度までの点検結果においては、管内3,252橋の内、A判定77橋(2%)、B判定1,265橋(39%)、C判定1087橋(33%)、E(要緊急対応)が1橋、M(要維持工事対応)が623橋(19%)、S判定(要詳細調査)が117橋(4%)です。(平成16年橋梁定期点検要領(案)による判定区分)。
点検すると対象数のうち3割程度は補修が必要な部位と診断される傾向にあります。より早期に損傷を発見することにより軽微なうちに補修を行うことが肝要であると考えます。
点検結果
――主な損傷部位は
喜安 塩害や中性化による劣化、端部からの漏水などによる桁や床版の端部、支承や橋台・橋脚の損傷が目立っています。
C判定の内訳は、主桁が700個所、床版354個所、支承307個所、下部工490個所、橋面工(舗装や防水工)432個所となっています。基本的にクラックへの樹脂注入や断面修復、表面被覆や含浸工などで対応しています。
床版の損傷状況